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桜楓会 Ohfukai Society

「四季」なんて書いていません「四季」より「春」

2026.04.25 17:29

すっかり春らしい気候となりました。春の定番といえば、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「四季」から「春」ですね。「最も好きなクラシック音楽」のランキングでも1位になることが多い超有名曲です。これを聞いたことのない方はいらっしゃらないのではないでしょうか。ただ、この曲にはいくつかの謎があります。今回は、そういった「謎」をご紹介してみたいと思います。
謎1 なぜこれほど人気があるのか ヴィヴァルディは今から300年ほど前に世を去ったバロック時代の作曲家です。この時代の音楽家の多くは死後ほとんど忘れ去られていました。時は1951年。イタリアはローマの音楽院の卒業生たちが、小さなオーケストラを結成しました。「音楽家たち」を意味する「イ・ムジチ」と名乗ったこの合奏団は、同郷の先輩で大指揮者、トスカニーニのお墨付きを得て順風満帆のスタートを切ります。彼らが史上初めて録音した「四季」のレコードは空前の大ベストセラーとなり、この消え失せたはずの作品を復活させたのでした。そして「四季」といえば「イ・ムジチ」と言われるほどその人気も決定的なものとなりました。現在では 多くの演奏家がこの人気曲を演奏・録音していますが、今でも「イ・ムジチ」の演奏をベストワンとして愛好する人が多いのです。その後、この合奏団は何度もメンバー交代を繰り返しながら、今も現役続行中で、「四季」のレコーディングも通算で9回を記録しています。なお「四季」の録音は他の演奏家による戦時中のものもあります。しかし、それは原曲にない楽器を加えた編曲版によるものでした。したがって、作曲どおりのオリジナルの録音としては、このイ・ムジチによるものがやはり史上初ということになります。    https://youtu.be/tqBr744bnDA  ヴィヴァルディ「四季」より「春」全3楽章  イ・ムジチ合奏団の第1回録音(1955年)
謎2 なぜ「四季」なのか 実はヴィヴァルディは「四季」と名付けた曲を書いてはいません。彼が作曲したのは全12曲から成るバイオリン協奏曲集「和声と創意への試み」で、その1番から4番にそれぞれ「春」「夏」「秋」「冬」というタイトルがつけられています。前述のイ・ムジチ合奏団がその4曲だけを限定して録音したアルバムに「四季」のタイトルをつけたことで、全12曲から独立した 作品として扱われることになり、後続の演奏家たちもそれに倣ったという次第です。なお、「和声と創意への試み」の「四季」以外の8曲は、第5番「海の嵐」を除けば、演奏される機会も録音も「四季」とは比較にならないほど少ないです。
謎3 作者不明の詩 「四季」の楽譜には、四つの季節について、それぞれ作者不明の短い詩(ソネット)が添えられています。これは、ある貴族に「和声と創意への試み」を献呈する際、ヴィヴァルディ自身が「春」~「冬」の解説として加えたもののようです。詩に目を通しながら聴いてみると、曲の表現する情景が目の前に浮かんできます。「春」では、鳥の鳴き声、小川のせせらぎ、 突然の嵐(春は天候不順が多いですね。)、陽気の中で居眠りする羊飼い、そのそばで吠えたてる犬の声などが音で活写されています。音による情景描写というのは、それまでの音楽では珍しく、画期的なことでした。彼は当時最先端の芸術家だったのです。  
https://youtu.be/-D3nIM8OWbE?list=RD-D3nIM8OWbE  ヴィヴァルディ「四季」全曲  ソネット(詩)の字幕付き 
謎4 当時の人気は? 作曲者の生前に楽譜出版された「四季」はたちまちのうちにヨーロッパを席巻する人気曲となりました。何人もの音楽家によって編曲された「四季」の楽譜が数多く残っていることが、その証拠です。特に「春」の人気は高く、たとえば18世紀フランスのミシェル・コレットという作曲家は、「春」の全3楽章をそのまま取り入れた「主をたたえよ」という合唱付きの 礼拝音楽を作りました。この曲は、初めソプラノの歌で始まりますが、しばらくすると聞きなれた「春」の音が鳴り響いてきます。 https://www.youtube.com/watch?v=5fYpD5XCI30  「主をたたえよ」 5分36秒から「春」の音楽