提案『発想力の要素 No.1視点を変える』
発想力には4つの要素の『視点を変える力』『組み合わせる力』『広げる力』『疑う力』があります。今回は『視点を変える力』ことについてより具体的に「どういうことなのか」「何が重要なのか」そして「子どもにどう現れるか」を説明していきます。
1、視点を変える力(違う立場や角度から見る)
同じ物事でも、「誰の立場で見るか」「どこから見るか」を変える力のことですが、主に以下の4つを切り替えて行います。
① 立場を変える(誰の視点か)
同じ出来事でも、見る人が変わると意味が変わります。
例えば、「友達に注意された」とすると
自分視点に立てば、「どうしてそんなこと言うの」となり、
相手視点に立てば、「危ないから止めたかったのかも」と考えることができ、
第三者視点に立てば、「どっちにも理由がありそうだ」
視点を変えそれぞれの立場で物事を考えられる人はかなり多くの面で得(徳を積む)をします。「優しさ」だけではなく判断力や人間関係、遊びや仕事の質まで変わってくるので私も常日頃から自分自身の意見、相手の立場的意見、俯瞰視した3視点から考えを巡らし、最終的に何が有効なのかを判断して指導にあたります。時にその指導がかなり厳しいことを伝える時もありますが、その考えを受け取ることができない歩み寄ることができない場合には双方にとってご縁が無いと判断することもあります。つまり最低でも3つの視点で物事を検証すれば大きな間違いはないですし、自分自身を路頭に迷わせることもありません。
《 なぜこの力が重要なのか 》
「相手はなぜそう言ったのか」を想像できる人は 無駄な衝突があまりありませんし、あったとしても衝突は軽減され、その後衝突自体が減ります。また自分の考えの穴に気づけるので判断ミスも減り、複数の選択肢を見つけやすく問題解決が上手くなり、感情だけで反応せず冷静さを保ち、「この人は話を理解してくれる」と感じてもらえ、人から信頼されやすくなります。しかしこの視点を変えるということがなく1つの視点だけで考えると、「自分は正しい、相手が間違いだ」となりやすく、かなり視野が狭くなります。つまり立場を変えて考える力は「相手に負ける力」ではなく、「状況を広く見る力」なのです。
もし子供が「ママから見たらどうなの?」と言えるようになったならこの力が働き始めています。この立場を変えてみることは、心や思考への働き掛けでもあるのでかなり精神性の高い子供へと成長することができます。それを行うには日常生活や絵本から学びとらせる必要がありますが、それを沖縄では「ムンナラシー」と言い、世間を知ること、常識を身につけること、人付き合いや社会経験を積むことという教えを親から子へ、子から孫へと伝承する文化がありました。現代はそれがどこまで継承されているのか疑問視することもありますが、琉球にはそのような文化が確実にあった時代があります。子育ての中には必ずそのような伝承を残すべきであると考え、それを行うのは親の責任とまで私は考えています。
一方子供には視点を変えるというトレーニングが遊びや学びで実践する必要もあります。視覚認知が優先している子供には、確実に目の前のことが見方や捉え方を変えると、全く異なる風景が目の前に出現するということを経験させる必要があります。遊びの中で四方八方から対象物を見ることや鏡映像的なことをたくさん行うこともお勧めします。
② 距離を変える(近距離・遠距離)
「発想力での距離を変える」というのは、物事を「どれくらい近く見るか、遠く見るか」を意識的に切り替えることを指します。これはいわゆる考え方のズーム機能みたいな働きをさします。
近距離の発想とは、物事の細部や現実を見て具体的ことに注目する力のことです。例えば、今から子供たちが学校周辺の街を探索学習に行くとしましょう。教室に集まり子供たちは今すぐ何をするかを考え、ペアを組んだ友達(相手)の表情はどうか、行動の手順を細かく理解し実行すること、現場で起きている問題は何かをを見る状態の一連の流れがこの近距離の発想です。この近くを見ることが得意になると、実行力や修正する力、現実的に対応することができ、さまざまな面での力を磨くことができます。ただ近すぎると目先ばかりになったり、全体像を見失うことや不安が増えることがあります。よってもう1つの遠くで見る=遠距離の発想が必要不可欠になるです。
遠距離の発想とは、全体把握することやなぜこのようなことを行うのか意味考える、未来を見据えて長期的な見方を行う、さまざまな構造を見て考える方法です。先述の子供たちが学校周辺の街を探索学習を遠距離の発想に切り替えると、ワイワイガヤガヤしながら街の探索をするのは楽しいと遠距離発想で感じつつも、「なぜ今僕たちはこの取り組みをしているのだろうか?遠足じゃないぞ、これは社会科の単元学習だ」とと考えに行き着けば、遠距離の発想に結びついたとなります。
もう少し具体的に説明をするとすれば、「なぜこれをするのか」「長期的に行うとどうなるか」「これを継続することは社会全体ではどうか」「この取り組みを別分野に応用できないか」「人類の歴史で見るとどうか」という考え方に着地することを指し、この遠距離の発想が得意になると「別世界との共通構造」を探すことが得意になります。
例えば飛行機に置き換えて考えてみましょう。鳥を遠距離的に見ると「空気を利用して浮く」という原理が見え、そこから航空技術が生まれ、表面ではなく「仕組み」を見て考えるのが遠距離発想です。このような考え方は飛行機だけではなく、ブルドーザーとエスカレーター、いるかと魚群探知機、歯車の回転からヒントを得た遊園地のコーヒーカップなど多々あります。つまりアイディアが生まれ、想像力が形となり、物が出来上がると戦略や哲学的ことにも発展させることができます。つまり発想力が高い人は近・遠距離を自由に変えられることができ、本当に発想力がある人は近くと遠くを行き来でき発想の幅が広がるということになり、現実的で創造的な考え方が身につくのもこの力です。
《 なぜこの力が重要なのか 》
距離を変える考え方が必要なのは、人間は「近すぎても、遠すぎても」物事を正しく見て判断することができなくなるからです。これは私がお母様方と接して強く感じることですが、生徒さんに習得すべきことを伝えると、 近くの習得を完璧にさせたいとだけを目標にし、その習得が進まず苦しくなる状況が展開される場合があります。この場合には親御さんが近距離的発想で習得を考え目の前に意識が固定されているのが原因です。しかし習得を克服してくるご家庭は親御さんの遠距離の発想が繰り出されています。例えば習得だけを実現させることだけを考えずに、この習得を楽しく行うためにはどうすれば良いのか、効率的に習得させるためにはどのような工夫をすればよいか、一つの方法ではなくいくつかの方法をアイディアで準備すること、忘れないために楽しく反復する方法を取り入れてみようなど習得させるだけに目が向くのではなく、楽しく学ぶための意味を理解した働きを展開することができるのです。つまり「学ぶということの本当の意味」が見え始めるのが遠距離的発想です。
人間は「距離」で見え方が変わり、意味も変わります。つまり発想力は「視点移動」の力で発想が豊かな人は、頭が良いというよりも見る距離を変えられ柔軟な力を獲得します。また 距離を変えると自由度が増え、冷静になり、アイデアも増え、感情整理ができ判断が安定し、さらに人を理解しやすくなります。つまり距離を変えるとは、「1つの現実を複数の見方考え方で見る力」のことです。それによって感情だけでもなく、理屈だけでもない柔軟な思考ができるようになります。よってこの距離感を行き来している発想力のある子は、自然と「少し引いて見る」ことが行えています。
③ 角度を変える(切り口)
発想力の角度を変えるというのは、同じ物事を『別の切り口』から見ることです。先の距離を変える(近距離・遠距離)だったのに対して、角度は「どの方向から見るか」ということです。これは1つの対象を横から見たり、上下から見たり、左右、表裏から見たりする感覚に近いことを指します。
まず「角度」とは何かを説明しましょう。
梅雨に入り「傘」が手放せない季節になりました。そんな傘ですが普通の角度からすると「雨を防ぐ道具」です。しかし手元に日傘がない夏の日であれば雨傘を日傘代わりにすることもあり、昨今は雨傘日傘兼用という商品もあります。でも角度を変えると雨や日差しを遮るものだけではなく、時に演劇などでは道具として表現することに使用することも、手の届かない場所にある物を取る代替え道具としても使えます。また物騒ですが人を傷つける道具にも、暴力から身を守るものとして使われることもあります。モノとしては同じでも、切り口が変わると価値が変わりこれが発想の角度です。
代表的な「角度の変え方」を以下に記します。
a 用途の角度を変える
「これは何に使うものか?」ということ角度を変えて考えます。例えば輪ゴムは一般的に物を束ねるものですが、別角度でみるとドアのロック防止や指の筋トレ、工作材料、滑り止めなどさまざまな使い方があります。
b 人の立場を変える
同じ出来事でも立場で意味が大きく変わります。例えばコンビニを中心に人の立場を考えてみます。客としては便利ですが、店員は24時間細かな労働が多く激務と言われます。そして経営者は回転率や在庫管理に意識が向きます。そして商品を配送する会社は物流拠点や配送時間などについて考えることになり、子どもにとってはお菓子の宝庫、外国人においては日本のコンビニはパラダイスです。見る人でこんなにも世界が変わるということです。
c 時代の角度を変える
「時代の角度を変える」というのは、今の常識や価値観を過去の人、未来の人、別時代の社会の視点から見直すことです。人はどうしても「今の時代の空気」を当たり前だと思いやすいものですが、時代の角度を変えてみると「本当にそれは絶対なのか?」ということが見えてきます。人は時代の常識に強く縛られやすく、常識とは時代が作った見え方で、今の常識が未来では非常識に変わることが起こります。例えば女子教育が常識ではない時代から現代は子供は性別に関わらず義務教育は受けさせなければなりません。私たちの学生の頃は携帯電話もなく駅で伝言板を活用し、社会人になってはポケベルを使用し子供が生まれてからは携帯電話を使用し、今では電子決済を携帯で行う時代となり、スマホ依存に警鐘が鳴らされています。今となっては「なぜあれが普通だったの?」と思うことも日に日に増えてきます。これが時代変化=価値観の変化です。しかし長い 歴史の変遷を見ると「普遍的人間の本質」が見えるのも確かです。つまり時代角度は、「変わるもの」と「変わらないもの」を見分ける力もついてきます。
d 感情の角度を変える
「感情の角度を変える」とは、同じ出来事でも「感じ方・意味づけ」を変えて見ることで、人は現実そのものよりも「その出来事をどう解釈したか」によって感情が変わります。つまり出来事を見る「心の向き」です。梅雨の時期ですからまた雨を例題にあげますが、癖毛の私は幼い頃から雨が降ると「あぁ〜髪の毛が膨らんでしまう・・・嫌だなぁ」と受け取っていましたが、庭の植物を見ると恵みの雨が欲しそうだなと感じる日も増えてきましたし、雨にまつわる音楽や文学作品、絵画などの芸術作品を心から求める日もあります。同じ人間でも人生の歳月と共に感情の変化も生まれます。よって人間は感情の角度により受け取り方が変化するものなのです。
e 反対から見る
「反対から見る」とは、「固定された方向をひっくり返して、隠れていた構造を見る力」のことを指します。多くの人が同じ方向だけを見る中で、逆から見ることができる人は、盲点、本質、危険、新しい価値を見つけやすくなります。また「逆」から物事を見たり捉える力は本質を浮かび上がらせる力が働きます。つまり「どうやったら成功する?」と考えると見誤ることもありますが、「どうやったら確実に失敗する?」を考えると失敗理由が見えて危険が輪郭化します。反対から見ると新しい価値が生まれる「逆転発想」も発想力には必要なことです。
《なぜ角度変更が重要か》
人は往々にして『いつもの見方』に固定されてしまいます。これを「思考の癖」と言われ、あたり前にしか物事を思いつかないものであり、新しい発想が生まれ出ない状態や新たな問題に対しての対応が難しい状態になったりします。そして問題・悩み・発想の行き詰まりの多くは、能力不足というより『見方の固定』から起きます。しかし角度変更をするとその固定概念を壊す技術が生まれるのです。
④ 前提を変える(そもそもを疑う)
「前提を変える(そもそもを疑う)」とは、誰もが「当然だと思っている土台」そのものを見直すことを指します。多くの人は「そのルールの中でどうするか」を考えるものですが、前提を変える人は「そのルール自体、本当に必要?」なのかと疑問を投げかけます。この考え方は発想の中でも特に強力なもので、単なる見方の違いではなく発想の土台そのものを動かす力になります。
実は世の中には「絶対」ではないとされるものが多々あります。例えばコロナ禍以前は毎日通勤する必要がありましたが、コロナ禍後はリモートワーク、フレックス、地方移住などの選択肢が生まれました。現在は出社スタイルもある程度戻ってはいますが、前提を変えるということを私たちは経験しています。つまり現代人は数年前に「そもそも」がガラッと音を立てて崩れていく様子を実体験し、本質に近づき深い目的が見えてくる経験をした上で多くの選択肢があることに気づくことができました。この経験から子供達を導く選択肢を多く提示できる宝を手に入れたのかも知れません。
《 なぜこの力が重要なのか 》
「前提を変える(そもそもを疑う)」が必要なのは、人間が無意識に「見えないルール」に縛られて生きているからです。そして多くの場合、問題そのものより前提の方が問題になっています。また前提の中だけで考えると発想が狭くなり、「努力」だけでは解けない問題があり前提を根底から覆すことも必要になります。それと同時に革新は前提破壊から生まれることを歴史上人間は繰り返してきました。そのほかに自分では自由に考えているつもりでも、実は見えないルールの中だけで考え「思考の檻」の状態になることもあります。しかし前提の枠から外れ変更すれば「自由」を作ることができ、挑戦しやすくなり恐怖が減るため成長し行動・感情・人生まで変わることができます。つまり前提を見直せる人は、発想が広がり、生き方の自由度が増え問題の根本に近づき時代の変化にも強くなるのです。
《 子どもにどう現れるか 》
視点を変えられる子は以下のような発言や行動が出やすくなります。
「もし〇〇だったら?」「逆にさ…」「たとえば〜なら」「仮に・・・」「思いついたんだけど」「想像してみたら」などと仮定を表す表現が出てきたら視点を変えるタイミングに来ています。よって1つの答えにこだわらず大人が思いつかない解釈をすることができるようになります。つまり子供には前提を疑うことも少なく、用途を変え、空想を混ぜ、常識を固定しないことも多く、「なんで?」「どうして?」を止めないという形で、視点変更の力が自然に現れています。そしてそれは単なる幼さではなく、創造性の原型でもあるのでそのような発言や行動が増えてきたタイミングが発想力を大いに伸ばす黄金期です。その子供の発言を取りこぼさずに多くの経験をさせ、思考を深めつつ発想を促し表現することに繋げてほしいと考えます。