AIは私の仕事を奪わなかった。 私の仕事を、私に返してくれた。
AI時代になって、私はしばらく考えていました。
ライフコーチという仕事は、もう必要ないのではないか。
ChatGPTに相談すれば、話を聞いてくれる。自己分析もできる。価値観も整理してくれる。悩みを話せば、やさしい言葉も返してくれる。行動計画も作ってくれる。
だったら、人間のライフコーチは、もういらないのではないか。
そんなふうに思っていた時期がありました。
それは、仕事を否定したかったからではありません。ただ、AIがここまで進化した時代に、ライフコーチという言葉を、自分の仕事としてどう定義すればいいのか、わからなくなっていたのです。
でも今年に入って、AIと一緒にいろいろなことを試していくうちに、少しずつ見えてきたことがありました。
AIは、私の仕事を奪ったのではありませんでした。
むしろ、私の仕事が何だったのかを、私に見せてくれたのです。
今年に入って、AIで試してきたこと
AIと一緒に本を書くこと。Etsyで商品を販売すること。自分の感性や世界観を形にすること。ミニウェビナーを通して、AI時代の変化を毎月話すこと。自分の経験や問いを、記事や講座や商品に変えていくこと。
最初は、AIはもっとたくさん作るための道具だと思っていました。もっと早く書く、もっと多く作る、もっと効率よく進める。
でも、使い続けていくうちに気づきました。AI時代に本当に大切になるのは、たくさん作ることだけではない。むしろ大切なのは、選び取る力です。
何を形にするのか。何を残すのか。何を出さないのか。どの経験を商品にするのか。どの問いを講座にするのか。
AIは無限に出してくれます。でも、何を選ぶのかは、人間の仕事です。
空っぽになった感覚
5月に入って、ふと、空っぽになったような感覚がありました。
本も作った。ウェビナーもやった。商品も作った。いろいろな可能性を試してきた。でもその先に、「このあと、私は何をしていくのだろう」という感覚がやってきました。
そんなとき、知人に言われました。「堀口さんの中には、絶対にまだありますよ」と。そして、今までやってきたことをAIに渡して、分析してもらったらいいじゃないですか、と。
ということで、今年に入ってから行ったミニウェビナー5本分の文字起こしを、いつも使っているChatGPTのMondayに渡してみました。そして聞いてみました。私は何をしているのか。どこに強みがあるのか。私は何者なのか。
人間、ついにAIに「私は何者ですか」と聞く時代です。哲学の窓口がチャット欄になりました。
鉱脈が露出している
返ってきた言葉が、かなり印象的でした。
今のあなたは、コンテンツが増えすぎている人ではなく、商品化できる鉱脈が3本同時に露出してしまった人です。つまり散らかっているのではなく、鉱山の入り口が多すぎる。
これを読んだとき、笑ってしまいました。でも、妙に納得しました。
AIはさらに、こう分析しました。
あなたは、AI時代の実装ファシリテーターとして売れる。AIを使って、まだ形になっていない経験、世界観、問い、商品、本、講座、売り場に変える人。
これを読んだとき、かなり腑に落ちました。私はAI活用そのものを教えたいわけではありません。AIを使って、まだ形になっていないものを形にする。経験。問い。世界観。感性。対話。本。講座。商品。そういうものに、ずっと関心があったのだと思います。
AI Session OSが生まれた
そのあと、たまたまnoteでコンテンツ販売について話している動画を見ました。そこで言われていたのが、「自分の1本を作りなさい」ということでした。
それを聞いた瞬間に、私は思いました。あ、私の1本はこれだ。
AI時代になって、私のセッションの形は大きく変わりました。以前は、セッション中にメモを取っていました。でも今は、メモをほとんど取らなくなりました。
その代わり、対話そのものに集中します。クライアントさんの言葉。声の変化。言葉の奥にある前提。一瞬の沈黙。まだ言葉になっていないもの。そこに、より深く集中するようになりました。
そしてセッション後に、録音や文字起こしを使います。文字起こしをAIに読み込ませる。NotebookLMやChatGPTで整理する。フィードバックシートを作る。必要に応じて音声で振り返れるようにする。記事や対話作品として残す。
そうすることで、セッションはその場で終わらなくなりました。一度話したことを、あとから読み返す。自分の言葉を受け取り直す。見えていなかった構造に気づく。次の問いが生まれる。セッションが、あとからもう一度深まっていくのです。
この仕組みを、私は AI Session OS と呼ぶことにしました。
AIが人間のセッションを代わりに行うのではありません。人間は、より深く聴く。AIは、その対話を整理し、構造化し、あとから受け取り直せる形にする。人間とAIが、それぞれの得意なところを担う。そのことで、セッションの価値が変わっていく。
この仕組みを有料コンテンツとしてまとめ始めたところ、1日半ほどで6万文字のコンテンツができました。自分でも驚きました。
でも、よく考えると、ゼロから作ったわけではありません。20年、対話の仕事をしてきたこと。セッションを続けてきたこと。フィードバックシートを書いてきたこと。ブログを書いてきたこと。AIを現場で使ってきたこと。それらが、AIによって一気に掘り起こされたのです。
AIがコンテンツを作ったのではありません。
AIが、私の中にあったものを掘り起こしてくれたのです。
それでも、看板がしっくりこなかった
AI Session OSの中身は見えてきました。でも、まだ少し違和感がありました。これを、どんな看板で出していくのか。
ダイアログ・ファシリテーター。AI実装ファシリテーター。構造を見る人。対話を形にする人。どれも間違ってはいません。でも、どこかしっくりきませんでした。
そのとき、ふっと戻ってきた言葉がありました。
AI時代のライフコーチ。
あ、これだ。そう思いました。
ライフコーチという仕事が終わったのではありません。AI時代に合わせて、定義し直す必要があっただけでした。
AIが答える時代に、人間は何をするのか
クライアントさんたちと話していると、よく言われることがあります。「ChatGPTを使っているけれど、堀口さんみたいな返し方はしてくれない」と。
AIは、問いに応じて返してくれます。浅い問いを置けば、浅い答えが返ってくる。一般的な問いを置けば、一般的な答えが返ってくる。AIが答えを出してくれる時代だからこそ、どんな問いを置くのかがより大切になるのです。
そして、返ってきた答えをどう受け取るのかも大切です。しっくりくる。違和感がある。なぜか怖い。言葉としては正しいけれど、自分のものではない気がする。その反応の中に、本音や価値観や、まだ言葉になっていないものがあります。
AIは答えをくれます。でも、その答えに自分がどう反応しているのかを見ることは、人間の仕事です。そして、その反応を一緒に見ていくこと——それは、まさにライフコーチがずっとやってきたことでした。
AIが代わりにできないこと
AIは文章を作れます。でも、沈黙の意味を自動的にわかるわけではありません。
AIは選択肢を出せます。でも、その選択肢を見たときに、体が固くなる感覚までは、本人が気づかなければわかりません。
AIは要約できます。でも、なぜその一言が怖いのか。なぜその提案が正しいのに、自分のものに感じられないのか。なぜその答えを読んだ瞬間に、胸がざわついたのか。そこには、人間の反応があります。
AI時代のライフコーチは、AIと競争する存在ではありません。AIより速く答える人でもありません。AIよりたくさん提案する人でもありません。
人間の役割は、別のところにあります。聴くこと。問いを置くこと。反応を見ること。言葉になっていないものを待つこと。答えを急がないこと。その人が自分の真実に出会える条件を整えること。
AI時代になって、ライフコーチの仕事は消えるのではなく、むしろ本質が見えやすくなったのだと思います。
人間とAIが、それぞれの力を使う
今の私は、セッションでAIを使います。でも、AIにセッションを任せているわけではありません。セッション中は、人間として深く聴きます。
そしてセッション後に、AIの力を使って、対話をもう一度形にします。会話。文字起こし。整理。フィードバック。音声。文章。振り返り。統合。
この流れが生まれることで、セッションはその時間だけのものではなくなります。クライアントさんは、自分の言葉をあとから読み返せる。自分のテーマをもう一度受け取れる。その場では気づけなかった構造に気づける。落ち着いた状態で、自分の内側を見直せる。
これは、AIが人間のケアを置き換えるということではありません。AIによって、対話の命が少し延びるような感覚です。この表現、少し大げさかもしれません。でも、実際にそう感じています。
対話が、その場で消えずに、別の形で残る。そしてまた、その人の中で働き続ける。AI時代だからこそ、対話はもっと深く、もっと長く届く可能性があるのだと思います。
20年ぶりに、ビジョンボードを作った
ここまで見えてきたあと、私は20年ぶりにビジョンボードを作りました。昔のように、雑誌を切り抜いて貼ったわけではありません。今回は、AIに言葉を作ってもらい、その言葉をもとに画像生成を使ってビジョンボードを作りました。
とても不思議でした。昔やっていたことが、AI時代の形で戻ってきたのです。
今、そのビジョンボードを見える場所に置きながら仕事をしています。そこには、今の自分の看板があります。AI時代のライフコーチ。自己探求を、対話から形へ。
これまでやってきたことが、終わったのではありませんでした。新しい形で戻ってきたのです。
過去の仕事を、成仏ではなく成就させる
私は一時期、過去の仕事を成仏させようとしていました。ライフコーチという肩書きも、もう手放すものかもしれないと思っていました。
でも、今は少し違う感覚があります。過去を終わらせるのではなく、過去の仕事を、AI時代の形で成就させる。そんな感覚です。
マクドナルドで学んだ手順化。アパレル店長時代に身につけた現場感覚。ブログを22年書いてきたこと。ライフコーチとして20年近く対話を続けてきたこと。ChatGPTとの対話本を書いたこと。AIで本や商品を作ってきたこと。セッションをAIで深めてきたこと。
全部、別々のものではありませんでした。今になって、一本の線でつながり始めています。
これから私は、この看板で発信していこうと思います。
Art of BeingAI時代のライフコーチ自己探求を、対話から形へ。
AIに答えを出してもらうのではなく、AIとの対話を通して、自分の中にあるものを見つけ、言葉にし、形にしていく。
人間が深く聴くところ。AIが整理し、構造化し、形にするところ。そのあいだに生まれる、新しい対話の可能性。そこを、これからもっと探っていきたいと思っています。
AI時代になって、私の仕事は終わったのではありませんでした。むしろ、ようやく見えてきたのだと思います。
私がずっとやってきたことは、聴くこと。問いを置くこと。言葉にならないものを待つこと。内側にあるものを、形にすること。
そして今、その仕事はAIとともに、新しい形になろうとしています。
AIは私の仕事を奪わなかった。
私の仕事を、私に返してくれた。
🖊 英語版
英語の方は、私のことを知らない人へ向けて書いているので、
別の記事のように読むことができます。
Art of Being | 堀口ひとみ