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脳性麻痺ライター・著者 東谷瞳  |障害と生きる日々

2.「手をつなぐ」ことがくれた信頼の正体

2026.05.18 22:54

知らない人と手をつなぐ。

それは、思っている以上に勇気のいることだった。

交流会で「見つめ合ったあと、手をつないでください」と言われたとき、頭では理解していても、体が一瞬止まった。

この人はどんな人だろう。

嫌がられないだろうか。

変に思われないだろうか。

ほんの数秒の間に、いろんな考えが頭をよぎる。

でも、そっと手を伸ばしてみた。

触れた瞬間、少しだけ力が入っていた自分の手に気づく。

相手も同じように、少しぎこちない。

そのぎこちなさが、不思議と安心感に変わっていった。

——あ、この人も同じなんだ。

そう思えたからかもしれない。

言葉は交わしていない。

相手のこともほとんど知らない。

それでも、「怖くない」と感じた。

むしろ、「この人となら大丈夫かもしれない」とさえ思えた。

手をつなぐという、たったそれだけの行為が、関係の前提を変えてしまう。

疑う前提から、信じてみてもいいかもしれない、という前提へ。

普段の私たちは、相手を知ってから信頼しようとする。

どんな人か。

何を考えているか。

信用できるかどうか。

順番としては、それが自然に思える。

でも、あのときは逆だった。

先に「つながる」ことで、あとから信頼がついてきた。

考えてみれば、日常の中でこんなにシンプルに“つながる”ことは、あまりない。

特に、障害がある人とない人の間には、目に見えない距離が生まれやすい。

どう接すればいいのか分からない。

失礼にならないか不安。

手を出していいのか迷う。

そんな気持ちが、少しずつ距離を広げていく。

でも、あのときのように、言葉よりも先に「関わる」ことができたら、何かが変わるのかもしれない。

もちろん、現実はそんなに単純じゃない。

いきなり手をつなぐなんて、日常ではなかなかできない。

むしろ、戸惑わせてしまうことだってある。

だからこそ、大事なのは「何をするか」ではなく、「どう向き合うか」なのかもしれない。

相手を知ってから関わるのではなく、

関わる中で、少しずつ知っていく。

その順番でもいい。

Flowerで話していると、「理解する前に、関わってみることが大事」という声がよく出る。

でも同時に、「関わりたいけど、どうしたらいいか分からない」という声もある。

その揺れこそが、今の社会のリアルなのだと思う。

だから、完璧にできなくていい。

ぎこちなくてもいい。

少し勇気を出してみること。

あのとき感じた、あの手の温かさのように。

信頼は、どこか遠くにあるものではなく、

ほんの小さな「触れ合い」から始まるのかもしれない。