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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

University College London(UCL)留学記:脳卒中のリハに関する講義

2019.03.14 23:36

おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。 


先日、神経系理学療法の修士コースの先生が講義をしてくれました。個人的に非常に興味深かったので振り返りも兼ねて、記事を書くことにしました。 


講義の前半で「正常動作」とは?という話、後半で「脳卒中の歩行リハのエビデンスのオーバービュー」という構成でした。  


正常動作に関しては、決まった正常動作があるわけではなく、環境に合わせて適切な動作に調整できる多様性であったり、速度や過剰な努力を要さないで行えるか?ということを評価することが強調されていました。この辺りは、かつて日本で習ったものと大差はないので割愛します。 


後半のエビデンスのオーバービューは、講師の先生の主張が強いというか、なんというか。。 良かったのは良かったです(^^♪


2000年代に一世を風靡した体重免荷トレッドミルトレーニングなどを解説してくれたり、課題志向型トレーニングに関して話したりしてくれました。 


結論は、 

『何か特定のリハプログラムが別のリハビリと比較して優れているというエビデンスはない。』でした。 


訓練の量を揃えた場合、何か特定のリハビリが他のリハビリと比較して優れているという質に高いデータはないとのことでした。 



ここからは私見です。

ただし、この「訓練の量を揃えた場合」というのがポイントでもあります。古くからある現在、効果が否定されているリハビリ理論は、訓練量に重きをおいておらず、リハビリ専門職の操作を重要視するため、訓練量を増やすことができないからです。そういった意味では古くからあるリハのほとんどは淘汰されるべくしてされたと言えます。

私見終わり



体重免荷トレッドミルを用いたトレーニングは、歩行が自立する割合は他のトレーニングと比較して向上しないようです。歩行が自立している患者において歩行速度を改善するというデータはあるが、訓練量をそろえた場合、この差はなくなってしまうとのことです。 


体重免荷トレッドミルを使えば、歩行リハビリを提供する側の労力は少なくて済みます(転倒することは基本的にありませんし)。ただ、機器自体の価格が高価であったり、患者さんを吊るすための道具の着脱に手間がかかるなど、デメリットを上回るだけのメリットはないのかも知れません。。。  


また、講師の先生はこんなことも言っていました。 

『そもそも現状では、病院で提供されるリハビリは、あまりにも訓練量が少なすぎて、療法士が臨床現場で経験する患者の改善はほぼ全て自然回復で説明がついてしまうのではないか?』 

というものでした。臨床経験のある私を含めた生徒は、耳が痛いというか、「それを言っちゃ~お終いよ。。。」というか。。。 


『10,000時間の法則』という話で講義が終わりました。様々な分野でエキスパートになるためには質の高い訓練を10,000時間積む必要があるというモノです。 『一日5時間毎日やったとして、5時間×30(一か月)×12(一年)で1800時間。このペースで行うと5年半かかる計算になる。それだけ、病気によって変化が起きたからだというのは新しい動作を獲得するのに時間が掛かるかも知れないよ。』 とのことでした。


脳卒中後の動作の獲得に10,000時間かかるかは明らかになっていませんが、活動量が減ることで生じる廃用性症候群(運動不足)を予防しながら、動作を再獲得するためには、私たちが感じている以上の量のリハビリは必要なのかもしれません。 



また、超早期からの離床、リハビリに触れていました。 発症から24時間以内(入院からでなく『発症』である点に注意)に開始される超早期のリハビリで、有意な差はなかったものの、超早期リハビリ群で死亡者数が多かった点などに触れて、この辺りには議論の余地があるという話もされていました。 

AVERTという超早期離床の効果を調べる臨床研究が行われていて、strokeやThe Lancetといった雑誌に論文が掲載されています。 私はこのAVERTの論文を以前読んだことがあって、結果に少し疑問があったので、議論したかったのですが、英語力が足りず、いまいち議論にならず。


結果を見ながら話せば、議論の助けになるので論文をスッとPCから探して表示出来ればよかったのですが、なかなかPDFも見つからずで、ダメダメでしたね(;’∀’) 


 引き続き精進します。 


今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。  

理学療法士 倉形裕史 






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