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脳性麻痺ライター・著者 東谷瞳  |障害と生きる日々

5.「外に出よう」がこんなに難しい理由

2026.06.08 23:37

「外に出よう」

その一言は、とてもシンプルに聞こえる。

でも、その一歩の中には、想像以上にたくさんの気持ちが詰まっている。

行きたい場所がある。

会いたい人がいる。

やってみたいこともある。

それでも、動けないことがある。

「ちゃんと目的地にたどり着けるだろうか」

「困ったとき、誰かに頼れるだろうか」

「迷惑をかけてしまわないだろうか」

そんな不安が、頭の中に浮かんでは消えずに残る。

特に、これまで周りの人に支えてもらうことが多かった人ほど、最初の一歩は重くなる。

切符の買い方が分からない。

時刻の調べ方が分からない。

どう動けばいいのか分からない。

できないわけではない。

でも、「やったことがない」というだけで、世界は一気に遠く感じる。

さらに、その外側にも、もう一つの壁がある。

家族の不安だ。

「何かあったらどうするの?」

「危ないからやめておいたほうがいいんじゃない?」

本人にとっては挑戦でも、周りにとっては心配になる。

その気持ちは、とてもよく分かる。

でも、その心配が積み重なるほど、「やめておこう」という選択が増えていく。

気づけば、「行きたい」という気持ちよりも、「やめておこう」という判断のほうが強くなってしまう。

そうして、外に出る機会は少しずつ減っていく。

社会の側にも、ハードルはある。

ノンステップバスは増えてきたけれど、本数が少なかったり、時間に縛られたりする。

駅にエレベーターがあっても、すべての場所にあるわけではない。

ほんの少しの段差や、ほんの少しの不便さが、行動の大きな壁になることもある。

でも、Flowerの中で何度も出てきた言葉がある。

「外に出ることで、環境が変わっていくこともある」

実際に、何度も通ったお店の駐車場が舗装された、という話もあった。

最初から整っている場所だけを選ぶのではなく、

あえて不便な場所に行くことで、何かが変わるかもしれない。

そう考えると、「外に出る」という行動は、ただの移動ではない。

自分の世界を広げること。

そして、周りの環境を少しずつ動かしていくことでもある。

もちろん、それでも不安は消えない。

怖さがなくなるわけでもない。

だからこそ、大事なのは「完璧に準備してから動くこと」ではなく、

「少しのきっかけをつくること」なのかもしれない。

誰かと一緒に出かけてみる。

行き慣れた場所から少しだけ範囲を広げてみる。

小さな成功体験を重ねていく。

その積み重ねが、「行けるかもしれない」に変わっていく。

「外に出よう」という言葉は、簡単に言える。

でも、その一歩の重さを知ったとき、

その言葉は少し違って聞こえるようになる。

外に出ることは、ただの行動じゃない。

それは、不安と向き合いながら、それでも一歩を選ぶということなのかもしれない。