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エグゼクティブ・コーチ 和気香子

効率化しちゃいけないやつだ

2026.06.10 06:54

ある夜、聴き逃し配信でラジオを聞いていた。NHKの「尾崎世界観のとりあえず明日を生きるラジオ」。ゲストに臨床心理士の東畑開人さんが出ていた。東畑さんは好きで、「なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない」を含む著書も何冊か読んだこともある。


「個人的な話をする、自分の話をするのが友達」と東畑さんが言った。

なるほど~と感じながら、思い出したことがある。


「ともに歩む会」というNPO法人で、会報の発送作業を初めて手伝ったときのこと。紙を順番に重ねて、三つ折りにして、封筒に入れて、封をして、切手を貼る。月に一度、午後いっぱいかけて、みんなで手分けしてやる。お茶を飲みながら、お菓子をつまみながら。

なんて非効率なんだろう、と思った。作業しながら、どうにかして効率化できないか、ずっと考えていた。


私は楽をするためには、努力を惜しまないタイプだ。カーテンはタイマーで開閉するガジェットを付けている。電気は人感センサーと音声でオンオフ、掃除はもちろんルンバ。タイパ重視と言われたら、否定できない。好きでも得意でもない料理も、やらなければならない時には、麺つゆやちょっと高めのコンソメ、そして魔法の調味料であるごま油等を使い倒して、最低限で済むようにする。


でも、映画は絶対に倍速で見ない。そして、なるべく映画館へ足を運び、エンドロールまで全部見る。作品や関わった人達に対してリスペクトがあるし、映画が好きだからだ。 お笑いもライブ会場に見に行く。

人とリアルに会う機会は、なるべく積極的に作る。


前述のNPO法人での2回目の発送作業のとき、気づいた。

「あ、これ、効率化しちゃいけないやつだ!」

みんなで手を動かしながら、お喋りをする。向き合って話すんじゃなくて、同じ方向を向いて、手を動かしながら話す。だから、するっと個人的な話が出てくる。電子化してメールで送れば一瞬で済むことを、わざわざ午後いっぱいかけてやる。そのうちに、顔と名前が一致するようになった。その「わざわざ」の中で、人は仲良くなっていた。

ラジオで尾崎世界観も言っていた。製本会社でバイトをしていた頃、文庫本にチラシを投げ込む単調な作業をずっとやっていて、ヨコにいた先輩と仲良くなったと。対面じゃなくて、何か間に欲しい。単調な作業とかあると楽、と。

第三項。間にあるもの。

効率化すると、消えるのは時間の無駄じゃない。友達になるための入口のほうだ。