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つねに多くのことを学びつつ年をとる―勝又泰洋の学問日記―

ギリシア神話との出会い

2019.03.15 12:57

今日は、NHK文化センター神戸教室で、「春の星座とギリシア神話」と題した一日講座を開かせてもらった。嬉しかったのは、小学生の女の子が一人、お母さんと一緒に参加してくれたことだ。カルチャーセンターの講師の仕事を始めてかれこれ5年ほどが経つが、僕の講座(テーマはもっぱらギリシア神話)に参加してくださるのはシニアの方が大半なので、今回のことはとても印象深い出来事だった。

 講座終了後、そのお二人と簡単にお話をさせてもらったが、女の子のほうが、ギリシア神話と星座にかんする絵本を一冊持参してきていて、お母さんによれば、その本は彼女の大のお気に入りということだった。その女の子は、今日僕が話した内容についても、その絵本で一部「予習済み」で、楽しそうに絵本の中身のことを教えてくれた。そのときの彼女の笑顔を忘れることは、この先絶対ないだろうと思う。

 思えば、僕も小学生の頃、家にあった(おそらく小学校低学年向けの)星座の図鑑を何度も読んだ―図版が多かったので、正確には「眺めた」―ものだった。けっして本好きの子供ではなかったが、その図鑑に載っていたオリオン座やさそり座にかんする物語のことは、いまでもはっきりと覚えている。僕が人生で初めてギリシア神話に触れたのは、この読書体験をとおしてというわけだが、あのときは、まさか自分が将来ギリシア神話について書いたり話したりするのを仕事とするなどということは、思ってもいなかった。つくづく、人生では何が起きるかわからないと思う。

 今日女の子が見せてくれた絵本は、今度書店で手に入れて、読んでみるつもりだ。「初心に返る」ではないが、ひょっとすると子供時代のあの高揚感をもう一度味わえるかもしれない。これでまたひとつ、楽しみが増えた。