角野栄子さん/うちの味
2026.06.10 03:21
dancyu 連載「うちの味」、今回は『魔女の宅急便』の作者で、児童文学作家の角野栄子さんです。
東京都がまだ東京府だった昭和10年の、東京市深川区生まれ。
戦前から戦後の食べものがなかった時代に少女時代を過ごした角野さんですが、「ないなりに懐かしい思い出はあるんですよ」と語ってくださった食の、なんと心豊かなことか。
お父さんが「ゆっくりね、ゆっくりね」と言いながら炭火で炙ってくれた、お醤油味の焼きおにぎり。実(具)は1種類が美学のおみおつけ。旬の白菜はまとめて樽で塩漬け、その葉で海苔巻きのようにごはんをくるんで食べさせてくれた、それも父の思い出。
現在、角野さんが自分で作る「うちの味」にも、お父さんの面影を感じます。
多くの人が「なんでもない」と見逃してしまいそうな日常の食を、好奇心旺盛で、やわらかな感性を持つ少女にはキラキラと見えていたのですね。
お話を聞かせてくださる角野さんは、現在でも少女のような方でした。