Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

ないとう農園

ブドウ糖の情事

2026.06.14 21:50

 トウモロコシがきれいに育ち、甘くなり、こんな甘いものが野良で育っていたら、虫やら獣やらに狙われないはずもなく、その通りまっしぐらで狙われて、対策なしではもはやこちらの油断というわけで一夜にして見るも無残なものですが、今年は先回りして電気柵で囲いこみ、今のところ一本たりともアライグマやハクビシンにやられていません。

 「甘い」というのは糖分で、糖分は何かといったら炭水化物で、炭素と水素と酸素がくっついているわけですが、くっつけている現場はどこで、何を元手にやっているかというと、つまりはこういうことです。

 そこらに無限にある二酸化炭素と、畑に降り注ぐ雨水が肝になり、舞台は葉っぱで、そこに光が当たるとなれば、葉緑体で二酸化炭素と水とが出会い、いい感じに踊りだし、抱き合って、なんだか甘い雰囲気になり、これがいわゆるブドウ糖で、もはや舞踏糖といってもいいくらいに舞い上がり、けれどもブドウ糖もいっぱい集まるとそこはある種の公共で、恥じらいが生まれ、二人きりだったころのような甘さは一時隠され、この公共性を人はデンプンと呼び、だけどあの頃の甘いひと時は消滅したわけではなく、内にはちゃんと秘めていて、ひとたび誰かが焚きつけてやれば、また燃え上がり、あの出会った時の甘く儚い一瞬のきらめきを思い出し、秘めていた時間が長ければ長いほどかえってすごく盛り上がり、つまり、長期貯蔵したサツマイモをゆっくり時間をかけて焼いて食べるとまるでスイーツのような甘さがあるのは、炭水化物のこういう情事があるわけです。

 野菜の甘さの基本はこのように、出会った頃の甘さを、デンプンという世間の中にいったん紛れ込ませ、そこからちょっとしたきっかけで、焼け木杭でとろけだす、というのがよくある流れですが、ことトウモロコシにかけては、中でもスイートコーンと呼ばれる甘い品種では、そういうイモとかカボチャとかと違ったふうに甘くなります。もはや二酸化炭素と水が出会ったときのその甘さを、デンプンにため込む暇もないほどのその情熱をダイレクトに味わえる稀有な野菜で、だから生でもこんなに甘いのです。だからトウモロコシは貯蔵なんてもってのほかで、届いたらすぐに食べてほしいのです。でもゆでた後、冷凍しとくのはいいのです。