サントスの性加害疑惑について
2026.06.15 00:21
このたび、ボアヴェントゥーラ・デ・ソウザ・サントスの著書『南の認識論』が刊行されたことを喜ばしく思う。本書は脱植民地性理論の系譜において重要な位置を占める文献に違いない。
しかし、訳者あとがきを読んで、無視できない問題があることを知った。著者のサントスは、複数の女性研究者に性加害をしたとして告発されている身なのだという。関連する海外の情報も確認したところ、現在この件については係争中であるらしい。
私はこのような時、自分が支持するフェミニズムの考え方にもとづき、「被害者の声を信じる」「女性の声を信じる」という鉄則にしたがってきた。現に今日の社会では、被害を訴える人々、特に女性の声が、二次加害によって否定される傾向にあることは間違いないからである。
しかしながら、充分な事実確認のプロセスを経ずに加害者とされる人物を糾弾もしくはキャンセルすることは別の形の暴力や不正義となりうることを、私はみずからの経験を通して痛感した。したがって、今後はいかに疑惑が真実味を帯びていても、事実関係が定かでない事件をめぐり、糾弾やキャンセルに便乗・加担することは一切控える方針を固めた。
無論、これは被害の訴えを否定もしくは軽視するということではない。被害を訴える人々に寄り添い、否定も軽視もせずにその声を聞きつつ、加害者とされる人物の評価や扱いについては事実にもとづき慎重に判断するということは、両立可能であると考える。
なお、これは現時点での結論であるが、今後、人々との交流を通して見直す可能性もあることを付記しておきたい。