W杯は番狂わせの祭典。2-2が証明したオランダのアキレス腱
「先制か、支配か」——オランダは支配した。それでも勝てなかった。
2026年6月15日、ダラスのAT&Tスタジアム。FIFAワールドカップ2026グループF第1節、日本対オランダは2-2の引き分けで幕を閉じた。
英国メディアのTelegraphは引き分けを推奨していた。その通りになった。試合前、オランダ国内の著名なジャーナリストが「日本選手でオランダ代表に入れたい選手は一人もいない」と切り捨てた。その相手から、日本は2度追いついた。試合後、クーマン監督は静かにこう語った。「日本はオランダのメディアが考える以上に素晴らしいチームだ」。これは偶然ではない。
アキレス腱は、本物だった
試合前から海外アナリストたちが指摘していたオランダの三つの弱点が、90分後にそのままピッチで露呈した。前線の決定力不足、クーマンの保守的采配、そして守備陣への不安——タレント軍団のアキレス腱は本物だった。前線の決定力不足——オランダはボール保持率7割、パス本数は日本の倍以上を記録した。しかし鈴木彩艶の好セーブに何度も阻まれ、日本の5-4-1のブロックを崩しきれなかった。2得点はいずれも個人の質から生まれたものであり、組織的に日本守備を打ち破ったものではなかった。
クーマンの保守的采配——後半36分、2点目を奪ってリードした状況でクーマンはディフェンダーのネイサン・アケを投入し、4バックから5バックへ変更して逃げ切りを図った。しかしこの守備的な変更によって前線からのプレスが消え、逆に日本が敵陣深くでボールを保持する時間が増えた。「ビハインドでクーマンは大胆な采配を振るえるのか」という懸念は、リードしている状況でも現実になった。クーマン自身は試合後「自身の決断に後悔はない」と述べたが、オランダメディアからは厳しい批判が飛んだ。
「想定内」は本当だった
対して森保の采配は、苦境になるほど冴えた。久保建英の負傷退場というアクシデントに対し、小川航基・菅原由勢・冨安健洋・伊東純也を次々投入してシステムを変更し、攻撃の圧力を強め続けた。前日会見で語った「アクシデントも想定内ということで乗り切っていきたい」という言葉は、文字通りピッチで実現した。
クーマンは試合後にこう認めている。「日本は常にハイプレスをかけるチームだと分析していたが、この試合ではそれが見られなかった。多くの選手がボールの後ろに下がって待つ戦術をとり、スペースを見つけるのが非常に困難だった」。事前に「付け入る隙となるスペースを把握している」と自信をのぞかせていた指揮官が、90分後に困惑を口にした。日本は「想定外の戦術」でオランダの想定を崩したのだ。
「勝って当たり前」の重さ
W杯は番狂わせの祭典だ。2022年カタール大会では15件のupsetが発生した。今大会は48チームに拡大され、さらにその傾向が強まっている。FIFAランキング1位で大会に臨んだチームは、1990年代以降一度も優勝していない。強豪国には「勝って当たり前」というプレッシャーが重くのしかかる。
2点目を奪った後のオランダが逃げ切りに走り、自ら主導権を手放したのは、その重さに足を止められた瞬間だった。鎌田大地はこう語った。「ビハインドの状況でも焦らずに自分たちのチャンスを作れると信じていた」。プレッシャーのない者だけが持てる強さだ。
試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、オランダの選手たちは肩を落とし、うつむいた。日本の選手たちはガッツポーズを突き上げた。スコアは同じ2-2だったが、どちらが「勝った気分」だったかは明らかだった。強豪から勝ち点1をもぎ取ったアンダードッグと、勝ち点2を失った優勝候補——同じ引き分けが、全く違う景色になった瞬間だった。
答え合わせは?
「先制か、支配か」。アナリストが指摘したオランダのアキレス腱。2-2という結果が、その答え合わせをした。「オランダが初戦で日本に負けても、全く驚かない」とした海外アナリストたちは、引き分けという結果をどう見るだろうか。クーマンは最後にこう言った。「この先のワールドカップの戦いで、日本がどうなっていくかを見るべきだ」。
次はチュニジア戦。日本は勝ち点1を手に、グループリーグ突破へ向けて戦い続ける。
TEXT:Tomoyuki Nishikawa / SportsPressJP