2026.06 旅心
2026.06.16 13:38
第一章|見る
電車の窓から、
山が見える。
見慣れた景色のはずなのに、
少し違って見えた。
地元にいた頃、
この路線に乗ることはなかった。
山の形は変わっていない。
川の流れも、
きっと変わっていない。
ただ、
見ている場所が違っていた。
第二章|聞く
雨が降っていた。
鳥の声がしない。
虫の声もしない。
聞こえるのは、
雨の音だけ。
静かなのではなく、
何かが
止まっているようだった。
音が増えたのではない。
音が消えていた。
その時、
雨の音よりも、
静けさの方を
聞いていた気がする。
第三章|暮らす
朝、おはようと言う。
夜、おやすみと言う。
それだけの言葉。
東京では、
ほとんど使わない。
一人で暮らしていると、
朝は始まり、夜は終わる。
言葉はなくても
過ぎていく。
久しぶりに聞くと、
言葉そのものよりも、
その間にある時間の方が
印象に残った。
第四章|気づく
地元にいる間、
景色を見ていた。
雨の音を聞いていた。
おはよう、
おやすみを聞いていた。
どれも、
昔からそこにあったものだ。
山の形も。
雨の音も。
朝と夜の流れも。
変わっていない。
ただ、
見ている場所だけが
変わっていた。
景色は変わっていない。
変わったのは、
視点だった。