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技術と知見を活かして、自分たちの手でより良い組織をつくる――「スペシャリスト」として歩むエンジニアキャリア事例

2026.07.01 08:00

 アプリボットには、スペシャリストとして活躍しながらも自分で組織を立ち上げたエンジニアがいます。複数プロジェクトを横断する基盤組織「LDX」(Lead Developer Experience/各タイトルのUnityクライアントに関する効率化や基盤整理、CI/CDなどを担う横断組織)を自ら提案・立ち上げ、いまもそのリーダーを務めている技術統括本部の向井に、専門性を磨く先にどんなキャリアが広がっているのかーーその歩みを聞きました。

前編では、執行役員CDOの大洞にマネジメントから見える景色や、スペシャリストへの期待を聞いています。


<プロフィール>

向井 祐一郎(Yuichiro Mukai)

2015年サイバーエージェントに新卒入社。アプリボットに配属後、1年目はサーバーサイドエンジニアとして実装を担当。2年目にクライアントエンジニアへ転向し、「NieR Re[in]carnation(© 2021-2023 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.Developed by Applibot,Inc.)(※)」のキャラクター制御などを担当。その後、各タイトルのUnityクライアントに関する効率化・基盤整理・CI/CDを担う社内横断組織「Lead Developer Experience(LDX)」を自ら提案・立ち上げ、現在はリーダーとして開発体験の向上と基盤構築をリードしている。Twitter:@yucchiy_

※開発:アプリボット、企画・制作:スクウェア・エニックスによるスマートフォン用ゲームアプリ。現在はサービス終了。


横断するスペシャリストが組織を支える

———LDXは、アプリボットの中でどのような役割を担う組織なのでしょうか。

 LDX※は「Lead Developer Experience」の略で、複数のプロジェクトを横断してUnityクライアントに関わる開発体験を支える組織です。通信や課金システム、iOS/Androidのプラットフォーム対応、セキュリティ対策、アプリやアセットビルドのパイプライン、CI/CDなど、各タイトルの開発の体験向上を担っています。

 アプリボットはカンパニー制を採用し、各プロジェクトごとにに大きな裁量があります。その分、共通で必要になる仕組みを各プロジェクトが個別につくっており、同じような悩みを抱え込んでいる場面が見えてきました。車輪の再開発を防ぐべく、横断で共通基盤を見るスペシャリストがいたほうが、組織全体のクオリティラインを高く保てるのではないかと考えました。

※アプリボットのエンジニア横断組織 LDX(Lead Developer Experience)について


———LDXは、どのような経緯で立ち上げたのですか。

 担当タイトルが一段落したタイミングで、上長に「こういう組織があったらいいですよね」と話してみたら、「いいんじゃない、好きにやってみて」と返ってきて、そのまま動き出した、という感じでした。最初に着手したのは、需要が高いが手が回っていない領域、通信・課金・ビルドまわりなどのサポートです。

 横断組織として動くからこそ、まず各プロジェクトの開発メンバーに信頼してもらうことが大事だと考えました。システム領域や非ゲーム領域の相談を積極的に引き受けるところから始めて、資金や工数が回りづらい部分こそ伴走する姿勢を示し、相談してもらえる関係を一つずつ積み上げていく。信頼が育っていくにつれて、自分たちが本当にやりたい横断的な基盤づくりができていきました。

技術を、事業と組織に届ける

———向井さんご自身が、スペシャリストとして基盤組織を立ち上げる道を選ばれた決め手は何でしょうか。

  組織を立ち上げる経験は、なかなか得られるものではありません。前編に登場する大洞も「エンジニア主体で考え推進していく文化がある」と話していますが、アプリボットはトップダウンではなく、現場のエンジニアたち自らが組織をつくっていくカルチャーが根付いています。一緒に働いてくれているメンバーには、組織の状況や中長期のロードマップを意識的に伝えるようにしています。スペシャリストが生き生きと働くことが組織の活性化にもつながると信じているので、続けていきたいです。

 また、自分のようなスペシャリストがさらに増え、 LDX に限らず各技術分野に強みを持つメンバーや組織が増えていくことで、技術統括本部としてより多様な挑戦を支えられる状態につなげていければと考えています。


———LDXとプロジェクトとの関係づくりで、意識されていることはありますか。

 LDXと現場のプロジェクトの距離が遠いと、受発注のような関係になりがちです。そういった関係性になることを避けるべく、自分たちのやりたいことと、プロジェクトのやりたいことをすり合わせて最大化することに尽力しています。双方の目標達成のために提案や議論を重ねてとことん向き合い、地道なコミュニケーションを積み重ねて信頼関係を構築しています。


———スペシャリストだからこそ突破できた、技術的な挑戦の例を教えてください。

 ゲームの中でアニメ本編をまるごと観られる機能を実装したことがあります。ふだんは動画配信サービスで観るような映像を、ゲームを起動した状態のままサクサクと再生できるようにする、というものです。動画を再生するだけなら難しくないものの、ゲームに組み込み快適に動かすには、iOS/AndroidなどUnity以外の知識も熟知した上でつくり込む必要があります。 

 結果、お客様からもゲームの中で違和感なくアニメを楽しめる体験として受け取っていただくことができました。妥協なく「こういうことがやれるといいよね」と思っていた体験を技術の力で実現できたことが、自分にとって大きな自信と手応えになりました。


———スペシャリストとしての成果を組織に還元するために大事にしていることはありますか?

 組織と個人がぞれぞれ向いている方向を一致させるため、自分の頑張る軸を組織目標を擦り合わせる時間と、「組織としてこういう技術が必要なんです」と理解してもらう時間の両方を、意識的に取るようにしています。

 私自身はシステム領域に身を置いているので、「ゲームが快適に遊べる」「不具合が出ない」「アプリが軽い」といった結果が評価に直結します。自分のミッションと組織でのロールに違和感がない状態で働けているのは、ありがたいことだと感じます。


———アプリボットの外にも、自分の技術が届いた手応えがあった経験はありますか。

 ゲーム開発のみならず、共著で『Unityパフォーマンスチューニングバイブル』『UniTips』といった技術資料の執筆・発信をする機会にも恵まれました。会社の中で磨いた技術が、社外にも届くかたちで残せていることは、スペシャリストとしてのキャリアを歩むうえで大きな自信になっています。


技術で事業を牽引し、「自分でつくっている」手応えが感じられる環境

———スペシャリストとして「働きやすい」と感じる場面はどんなときですか。

 「やりたいことがあるのにやれない」というストレスが少ないところは、自分にとって働きやすい環境だと感じます。 アプリボットでは「どのように成果につなげるか」のプロセスを本人に委ねている部分が大きく、自分のアイデアに対して「いいね、やってみたら?」と背中を押してくれる雰囲気があり、本人のモチベーションを起点に、主体的に手を挙げて、新しい取り組みを自分のミッションと組み合わせながら進めている人もいます。 

 アウトプットに個性や多様性があることが、スペシャリストにとって大事な働きやすさの要素なのではないかと感じています。

 

———これから活躍するスペシャリスト像を、向井さんはどのように見ていますか。

 AI活用が広がっていくなかで、専門性の高い領域で大きな成果を出せるスペシャリストの価値が上がっていくと感じます。基本的な作業はAIに任せられるようになる分、「自分だからこそできる」領域がはっきりしてくる。意見やアイデアも含めて自分で動けるスペシャリストの存在は、これから貴重になっていくはずです。


———これからアプリボットでスペシャリストとして挑戦したい方に、伝えたいことはありますか。

 自分の専門性を組織に届けるところまで丁寧にやってくれる方ですね。アプリボットは、提案を受け入れて人のやる気に投資をする会社だと感じています。事業に対して自分の技術がダイレクトに貢献できる手応えがあって、「自分でつくっている」という感覚を持って働くことができる。世界水準のクリエイティブを目指す挑戦を技術で支え、みんなで大きな成果につなげる仕事に面白さを感じる方と働きたいです。

 前編では、執行役員CDOの大洞に、マネジメント視点から見たスペシャリストへの期待を聞いています。あわせてご覧ください。


▶ 前編:組織の力で自分一人では出せない大きな成果を生み出す――「マネジメント」として歩むエンジニアキャリア事例


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