筒石
十歳の当人が戯れに振りし古クラブ。振れども当たらず、微動だにせぬこと五回。性懲りもなく振りし六回目、快音とともに空に吸い込まれ。それこそが人生を変えし転機。「虫に噛まれた」とは文豪ハーバート・ウォーレン・ウィンドの述懐にて。
始めた経緯こそ聞かなんだけれども都心から移り住むにゴルフこそが関係を繋いでくれた、と語るK子さんとのラウンド。御子息や私と同い年と聞かば年齢や推して知るべしも、そのスイングや若く、飛距離とて。一打目とあらば尚更に。その距離を移動するに乗用カートに手招けど、徒歩で結構、と。
高齢者は甘やかさぬに限る、と知るも当人曰く、歩くことで身体を整える、芝生の上を歩くに足裏から様々なことを学ぶ、とりわけ、最初のホール、一日の打ち始めは、と聞いて。足裏こそ身体の縮図、とすると靴底は薄く、足指は自由に、やはりワラーチこそ。いや、ゴルフはさすがにシューズを履いて。
招かれし食事会にて隣席に知人ピアニスト。ソロにしてあの大ホールを満席にする位だから人気は折り紙付き。いや、技量と人気は別物。何せ容姿イケメンにて。来年はデビュー二十周年を迎える本人の悩みや老化、と申しても指の動きにあらず。肝心な顔の一部にあってそれなりの面積を占めるがゆえにその状況が相手に与える印象や小さからず。こちらの頭髪をまじまじと見ながら聞かれし染髪の有無。見れば分かるでしょうに。
髪こそ無事も忍び寄る老化の足音。過日、歯科衛生士による歯のクリーニングにて、虫歯なくも歯の一部に欠損が、と聞いて。はて、硬い煎餅に歯が欠けるほどの老化など。いや、食事にあらずとも食いしばる中にそうなるケースも。が、ランとてのんびりがモットー。いや、睡眠中とて無意識のうちに、と衛生士。とするによもや見えぬストレスが身体を。いや、それは、と返され。
閑話休題。会員数の減少に悩むは当団体のみにあらず。全市を見渡すに軒並み減少。区支部の脱退も後を絶たず。人材が枯渇する中、新たな理事長の選出を迫られるに他薦というか自ら名乗り上げしNさん。勿論、対抗馬なきままに。わが道いくに生まれし「もつれ」もどこ吹く風と。不肖私が会長であり、寄せられる不満。皆様には私ばかりか新理事長まで何かと御迷惑をおかけするが、平に御容赦を願う、と。
総会を無事に終えて打診受けるはそちらであり。きっと、御礼とばかりメシでも馳走してくれるに違いない、と後日に地元の居酒屋にて。話が私の郷里に及ぶにすすめられし一冊の本。作者の名を聞くに初耳であり。見かけによらず文学青年だったんだな。銭で買えぬが知識と経験。本に目がなく、別な代表作とともに二冊を。それこそが何よりもの収穫。本の名や「越後つついし親不知」。
(令和8年6月25日/3003回)