ガウディのごと バイオリンとオーボエのための協奏曲 バッハ 2026.06.25 22:53 生前は、前例のない様式の建築物を作り続け、奇想の建築家として常に批判にさらされてきたスペインのアントニ・ガウディですが、今はその建築物のうち7点が世界遺産に登録されています。その中で最大規模のサグラダ・ファミリア贖罪教会が今年完成したというニュースが 世界を駆け巡りました。しかし、完成したのは聖堂全体ではなくメインタワーである「イエスの塔」でした。今年没後100年を迎えた彼の命日である6月10日、塔完成を祝うミサがローマ教皇レオ14世によって当地で執り行われました。このバルセロナの大聖堂には未完成の塔がまだいくつもあり、全体の完成には、なお10年ほどを要する見込みです。サグラダ・ファミリアは今から144年前に着工されましたが、その道のりは苦難の連続でした。当時のスペインは、産業革命の波に乗り、急速に工業化が進むとともに、富裕層(雇用主)と貧困層(労働者)に社会が分断される深刻な事態に陥っていました。ある日、富裕層が 集まる劇場で、貧困層の青年が投げ込んだ爆弾により観客の多くが死傷するテロ事件が発生します。これをきっかけとした市民たちの発願と寄付から、この大聖堂の建設が始まり、ガウディが監督となりました。しかし、資金難から工事は難航を極め、さらにガウディの死後に起こったスペイン内乱によって、聖堂の大半が破壊され、ガウディの工房も焼け落ち、設計図も失われました。何度となく危機を迎えた聖堂建設ですが、「明日はもっといいものを作ろう」というガウディの遺志を継いだ弟子たちの懸命の努力と建築技術の発達により、近年急ピッチで工事が進行しています。(イエスの塔の着工は2018年。その後わずか8年で完成。)生前のガウディは、人間どうしを隔てる差別や分断に心痛めていたと言われます。死後100年を経て、融和よりも分断の方向に重心がかかっている現代、ローマ教皇がミサの中で語った「イエスを信じながら無実の人を殺すことはできない」という言葉は、大聖堂の地下に眠る彼の魂にはどう響いたことでしょう。ちなみに、サグラダ・ファミリアは近年の活動として、スペイン語が堪能でない移民や難民を対象とした観覧日を特別に設けています。これもガウディの遺志を継いでのことと思われます。さて、ガウディの死や内乱によって失われた大聖堂のプランや設計図という、頼るべき資料の大半が手元にない厳しい状況の中、弟子たちはどうやってイエスの塔のプランを復元し、塔そのものを完成させることができたのでしょうか。そのために強い味方となったのが、完成した大聖堂をイメージして生前のガウディが描いていた構想図(スケッチ)と石膏模型などのわずかな資料でした。 それを聞いて思い出すのは、オーボエをソロ楽器としたバッハの協奏曲です。彼は10曲以上のチェンバロ協奏曲を残しましたが、それらはほとんどが他の自作曲からの編曲であることが分かっています。しかし、楽譜の失われた多くの原曲は、もとはどんな曲 だったのか不明でした。ところが20世紀に入りバッハ研究が進むにつれ、次第に失われた原曲の姿が復元可能となってきました。わずかに残された原曲と編曲を比較検討することで、バッハが編曲する際のルーティンや癖やこだわりが明らかになり、現代に比べてはるかに楽器が未発達だった当時(18世紀前半)の状況から、独奏していた楽器の種類も断定できるようになりました。今回はその中からバイオリンとオーボエのための協奏曲(復元された原曲)とチェンバロ協奏曲(編曲)を並べてご紹介します。https://youtu.be/wU4fXV-ySg8?list=RDwU4fXV-ySg8 バッハ バイオリンとオーボエのための協奏曲 ニ短調 原曲(復元) https://youtu.be/jEJi-KfYqIQ?list=RDjEJi-KfYqIQ バッハ 2台のチェンバロのための協奏曲 ハ短調 編曲このバイオリンとオーボエのための協奏曲は、復元ながらバッハの作品の中でも高い人気を誇る佳曲です。