にゃんにゃん探偵チャーリーの冒険 ~ザ・ゲーム~・第6話『予言、愛の拒絶、あるいはカッサンドラ・シンドローム』
今週も何かとバタバタと忙しく(しかし、忙しいを言い訳にしたくないのですが)じっくりと考えをまとめるような時間がとれそうにありません。しかし、目まぐるしく動く世の中の動きを見ていると、私の心の中にはあるギリシャ神話の物語が不気味な影を落とし始めます。トロイアの予言者、カッサンドラの物語です。
カッサンドラはアポロンから破格の予言能力を授かりながらも、彼の愛を拒絶したために「その予言を誰も信じない」という残酷な呪いをかけられました。カッサンドラがどれほど熱を込めてトロイアの滅亡を予言し、木馬を受け入れるなと破滅への危機を訴えても、周囲の人々は誰一人としてその正しい言葉に耳を傾けようとはしませんでした。そしてトロイアは滅亡しました。
現政権が誕生するはるか前から、彼らの思想の危険性や言葉の虚妄について警告を発してきた人は多く存在します。しかし、その言葉が受け入れられない土壌を社会自らが作り上げてしまうという構図は、どこかトロイアの滅亡を連想させます。
どれほど論理的に危うさを指摘しても、世間は高市の不気味な笑顔や権威的な〝像〟に目を奪われ、現政権のヤバさが危機感として共有されず、高い支持率をキープし続けました。そして今、文春の音声データや週刊現代のサナエトークンの報道によって、ようやくその化けの皮が剥がれつつあります。しかし、それが証明される頃には、すでに川に毒が流された後のように、私たちの社会は深い傷を負ってしまっているのです。
心理学の分野には〝カッサンドラ・シンドローム〟という言葉があります。アスペルガー症候群などを持つパートナーとの情緒的なコミュニケーションがうまく築けず、その関係性から生じる苦しみを周囲に理解してもらえないことで、心身に深刻な不調をきたしてしまう状態を指します。
言葉の定義を自分都合で捏造し、「名刺交換をしていないから面識はない」などと言い張る傲慢な権力者と向き合うとき、私たちが覚えるあの強烈なストレスと目眩は、まさにこのカッサンドラ・シンドロームのそれと同質ではないでしょうか。どれほど正当な言葉で問いかけても、相手には人間としての基本的なルールが通じない。言葉が意味をなさず、ただ虚空で空転していく不毛な空間。そのコミュニケーション不全がもたらす孤独と疲弊が、今の日本全体をじわじわと覆っているような気がしてなりません。
幸いなことに、我が家にはそのような不毛なストレスとは完全に無縁の存在がいます。
チャーリー、君と私の間には、言葉の壁を遥かに越えた確かな生活形式が共有されていますね。君がご飯を欲しがるとき、私が晩酌の準備をはじめるとき、私たちの間にカッサンドラの呪いは存在しません。通じ合わない人間の政治にすっかり疲れてしまった私の心を、君の静かで嘘のない眼差しだけが、いつも正しく癒してくれます。
チャーリーの腹時計は、誰よりも正確に晩酌の時間を予言しています。今夜もチャーリーの鋭い瞳に見守られながら、美味いお酒を一杯やるとしましょう。あっ、どうも。岩崎(チャーリーの飼い主)です。