遺言書が何通も出てきたときの優先順位
遺言書は、何度でも書くことができます。
例えば「土地を長男に相続させる」という遺言書を作ったあとに、その土地を売ってしまって長男に遺してやれないなんてこともありますし、遺言書を書いたあとに人間関係が変わって、不仲や復縁を理由に「やっぱりあの遺言を取り消したい」「あの人への遺贈を考えたい」と思うこともありえます。
ということで、新しい遺言を書くことはなんの問題もない……のですが、そうなると古い遺言書はどうなるのでしょうか。
今回は「同じ人の書いた、複数の遺言書があった場合」について簡単解説したいと思います。
例として、以下のような内容の遺言書が2つ出てきたとしましょう。
*今回は遺言書の前後関係についての話なので、各人の相続分の法定比率などは気にしないでください。
【パパ之介さんの遺言書その1】
・日付…2020年10月10日
・土地を長男へ。
・すべての預貯金を長女へ。
・持っている株を妻へ。
【パパ之介さんの遺言書その2】
・日付…2025年10月10日
・土地を売ってしまったので、長男に土地はやれない。
・だからすべての預貯金のうち、二分の一ずつを、長男と長女へ。
・長年介護をしてくれた、長男の嫁に私の所有する車を。
例えは以上。
まず、複数の遺言書がある場合、一番大事なのは「日付」です。
民法では「新しい日付の遺言書の内容をもって、古い遺言書の内容を訂正したものとみなす」とされており、常に新しい日付の遺言書が「効力のある遺言書」として認められます。
つまり今回の例だと「土地をあげる予定だったが、あげられなくなったよ」「預貯金をすべて長女にあげるつもりだったけど、やっぱり長男と半分こしてね」という「訂正」を新しい遺言書でしたということになるんです。
新しい遺言書で、古い遺言書の内容を否定された以上、古い遺言書の内容はなんの力も持ちません。
ここまでが基本的な考え方です。
さて次に「特に言及されなかった、古い遺言書の内容」はどうなるのでしょうか。
例の「遺言書その1」には「株は妻へ」とありますが、新しい「遺言書その2」には、これについての記載がありません。
長男や長女のように、最初の遺言書の内容がはっきり否定されておらず、かといって再度「株は妻へ」と書いているわけでもない。
結論から言うと、こういった場合は「遺言書その1の「株は妻へ」という項目は有効」となります。
新しい遺言書が力を持つのは、あくまでも「その内容で、古い遺言書を訂正しているとみなす」からであって、新しい遺言書で特に何も指摘されていない項目については、古い遺言書であってもまだ効果を持つんです。
ただし、新しい「遺言書その2」に「この遺言書より前に書いた遺言書の内容は、すべて撤回する」など、これまでの遺言書のすべてを否定する文言が入っていた場合は、文字通り古い遺言書の内容はすべてなかった話になってしまうので、ご注意ください。
最後に、新しい「遺言書その2」で追加された「嫁に車を」という項目。
これに関しては、もはや古い遺言書にはない内容で、ただの「新しく追加された遺言」となり、もちろん有効です。
以上のように、遺言書は新たに書いてもかまいませんし、その結果たくさん遺言書が出てきたとしても、どの内容が有効で、どの内容が無効か調べるルールはちゃんと決まっています。
一回で完璧な遺言書を書かなければならない! なんてことはありませんから、せっかくの自分の財産のこと、気軽に書いて、ときどき読み返したりして、納得のいく遺言書を時間をかけて完成させてもいいかもしれませんね。
とはいえ、例にあるシンプルな遺言書であっても、二通以上出てきてしまうと、何が有効で何が無効か精査していく必要があります。
古い遺言書はこまめに捨てる。かぶっている内容や、気づかずに無駄になってしまう内容がないか点検する。
そういったことも大事になってきます。
ご不安でしたら、行政書士をはじめ、相続相談や遺言書添削サービスなどを利用してみてください。