「宇田川源流」【日本報道検証】 国民総動員法に続く中国の域外支配法「民族団結法」の危険
「宇田川源流」【日本報道検証】 国民総動員法に続く中国の域外支配法「民族団結法」の危険
毎週火曜日と木曜日は、「日本報道検証」として、まあニュース解説というか、またはそれに関連するトリビアの披露とか、報道に関する内容を言ってみたり、または、報道に関する感想や社会的な問題点、日本人の文化性から見た内容を書き込んでいる。実際に、宇田川が何を感じているかということが共有できれば良いと思っているので、よろしくお願いいたます
さて今回は、中国がこのほど施行した「民族団結法」の危険性についてみてみたいと思います。
日本では、「20社の軍民両用物品の輸出禁止」ばかりを問題にしていますが、私ン亜土は、この民族団結法の目くらましでそのような経済的な内容しかしていないと考えております。その様に見れば、この「民族団結法」の問題点がより際立って見えてくるのではないでしょうか。
とりあえずまずはどんな法律なのか見てみましょう。
中国の「民族団結進歩促進法(一般に『民族団結法』とも呼ばれます)」は、2026年3月に可決され、2026年7月1日に施行されました。この法律は、中国政府の説明では「中華民族共同体意識を強化し、民族の団結と国家統一を推進するための法律」とされています。
一見すると、多民族国家における民族融和や差別禁止を目的とした法律のように見えます。しかし、実際の条文を見ると、その目的は単なる民族差別防止ではなく、「中華民族共同体意識(中?民族共同体意?)」を国家全体に浸透させることに重点が置かれています。この概念は、現在の中国共産党が最も重視している国家理念の一つであり、「56民族は一つの中華民族であり、中国共産党の指導の下で運命共同体を形成する」という考え方です。
法律では、中国共産党による民族政策を法律上の義務として位置づけています。そのため、政府機関だけでなく、学校、大学、企業、宗教団体、インターネット事業者、家庭教育に至るまで、この理念を普及させる責任を負うことになります。
教育分野では特に踏み込んだ内容となっています。幼少期から標準中国語(普通話)の教育を徹底することが求められ、少数民族言語は使用を禁止されるわけではありませんが、公的教育では普通話が中心になります。また、中国の歴史観や国家観、中華民族共同体意識を学校教育や家庭教育で教えることが法律上求められています。
文化や宗教についても、「中華民族の共有する精神的家園」を築くことが掲げられており、宗教の「中国化」が法律上の方向性として盛り込まれています。これにより、宗教団体は共産党の指導に従うことが一層強く求められると考えられています。
インターネットについても特徴があります。ネットサービスやAI、ビッグデータなどを利用して民族団結を促進する作品や情報の発信を奨励し、「民族団結を妨げる」と判断される情報については規制対象となる可能性があります。条文上は表現が比較的広く書かれているため、実際の運用範囲は行政当局の判断に大きく委ねられる余地があります。
さらに国際的に最も注目されているのが、この法律の域外適用(国外への適用)の規定です。法律には、国外の組織や個人が民族団結を破壊し、中国の民族政策に悪影響を与えた場合には法的責任を追及できるとする条項が盛り込まれています。中国政府は「主権国家として当然の立法権であり国際慣例に沿っている」と説明していますが、欧米諸国や人権団体などからは、中国国外での言論活動に対する圧力として利用される可能性があるとの懸念が示されています。
また、この法律では台湾も対象に含まれています。台湾住民について「中華民族への帰属意識を高める」ことなどが規定されており、中国政府は台湾も中華民族共同体の一部という立場を法的に改めて明確化しました。台湾政府は、この法律が台湾社会への政治的影響力拡大の根拠として利用される可能性に警戒を示しています。
<参考記事>
日本の言論も対象 中国で7月施行の民族団結法、「域外適用」に懸念
6/27(土) 11:00配信 朝日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/4390c754d6a4954bb97ab315a163b9768e945aad
<以上参考記事>
では、日本にとってどのような危険性が考えられるのでしょうか。
まず重要なのは、「危険性」と「現実に起きていること」を区別して考える必要があるという点です。この法律が直ちに日本国内で法的効力を持つわけではありません。日本国内では当然ながら日本の法律が適用されます。
一方で、中国側がこの法律を外交や行政の根拠として利用する可能性については、専門家の間でも議論されています。
第一に、日本国内の中国系団体や中国企業に対し、「民族団結」を重視するよう求める圧力が強まる可能性があります。これは中国国内法に基づく行政指導や、海外中国人社会への政治的働きかけという形で現れる可能性がありますが、その具体的な範囲は今後の運用次第です。
第二に、日本人研究者やジャーナリスト、政治家などが新疆、チベット、内モンゴル、香港、台湾などについて中国政府と異なる見解を公表した場合、中国政府が「民族団結を損なう」と批判する法的根拠として利用する可能性があります。ただし、日本国内で処罰できるわけではなく、中国への渡航や中国国内での活動に影響が及ぶ可能性があるという意味です。
第三に、日本企業への影響も考えられます。中国で事業を行う企業は、社内教育や広告、出版物、インターネット上の表現などについて、中国政府が民族団結法との整合性を求める可能性があります。これは中国市場で事業を続ける企業にとって、新たなコンプライアンス上の課題となり得ます。
第四に、学術交流や教育交流にも影響する可能性があります。大学間交流や共同研究において、中国側が歴史認識や民族問題について一定の配慮を求める場面が増える可能性があります。ただし、これも今後の運用によって程度は異なります。
第五に、安全保障上の観点では、この法律は台湾を「中華民族共同体」の一部と位置づける法的根拠の一つとなっています。そのため、中国政府が台湾政策を説明する際の国内法上の根拠が一つ増えたことになります。ただし、この法律そのものが軍事行動を認めるものではありません。
総合すると、この法律の最大の特徴は、「民族団結」という理念を教育、文化、宗教、インターネット、家庭教育、企業活動、さらには国外の活動にまで及ぶ国家的な法制度として位置づけた点にあります。支持する立場からは国家統合や民族間の平等を推進する法律と説明されていますが、国際社会では、少数民族への同化政策の法制化や、広範な解釈による言論・表現への影響、さらに域外適用による海外への影響力行使を懸念する見方も少なくありません。実際にどの程度広く運用されるかについては、今後の中国政府や司法・行政当局の具体的な運用を継続的に見ていく必要があります。
この法律は、中国が、昔に戻って「世界共産主義革命」などを行い、全世界の人々に対して共産党の政治を強制するという意味合いがあるのではないでしょうか。本件の問題は、世界各国において中国の主権の及ばない範囲である他国に対して中国の政治的主張に反対する言論を封殺するというものであり、また少数民族や台湾の言論を封殺し共産主義を徹底することにつながる危険性があると思われます。もちろん、必ずしもそのようなものではないかもしれませんが、その観点で見てみましょう。
まず、歴史上の「コミンテルン」の目的は、各国の共産党を支援し、各国で革命を起こして世界共産主義革命を実現することでした。革命の主体は各国の共産党であり、国家というより国際共産主義運動そのものが中心でした。
これに対して現在の中国共産党は、「中国式現代化」「中華民族の偉大な復興」「人類運命共同体」といった理念を掲げています。現在の中国外交を見る限り、中国政府は他国で武装革命を起こして共産党政権を樹立させることを公式目標とはしていません。その意味では、冷戦期のコミンテルンや革命輸出政策とは性格が異なります。
しかし一方で、民族団結法を含む近年の中国の法制度には、「中国共産党の政治的価値観を中国国外にも一定程度及ぼそうとしているのではないか」と受け止められる要素があります。
その代表例が域外適用規定です。この法律では、中国国外であっても民族団結を損なう活動に対して責任を追及できるとしています。もちろん、日本や欧米で中国法が直接適用されるわけではありません。しかし、中国への入国禁止、企業活動への制限、中国国内の資産への措置など、中国政府が自国の権限の及ぶ範囲で圧力を加える法的根拠として利用される可能性があります。
この点は、単なる国内法というより、中国政府の政治理念を国外にも反映させようとする制度の一つと見る研究者もいます。
また、この法律は少数民族政策とも密接に結び付いています。
従来の中国では、「56民族が平等に存在する」という建前が比較的強調されていました。しかし近年は、「中華民族共同体」という概念が前面に出されるようになっています。
この考え方では、民族ごとの独自性よりも、「一つの中華民族」であることが優先されます。
その結果として、新疆、チベット、内モンゴルなどでは、中国語教育の拡大、歴史教育の統一、宗教活動の管理強化などが進められており、これらを「民族統合政策」と評価する立場もあれば、「文化的同化政策」と評価する立場もあります。国際的な人権団体や一部の政府は後者の立場から懸念を表明していますが、中国政府は国家統一と民族平等のための政策であると説明しています。
台湾についても、この法律は「中華民族共同体」の一部として位置付けています。
中国政府は台湾問題を内政問題と位置付けていますが、この法律によって「台湾住民も中華民族共同体の構成員である」という理念が法律として明文化された意味は小さくありません。
これによって、中国政府は台湾に対する文化的・教育的・政治的な働きかけについて、国内法上の根拠を一つ追加したことになります。
さらに注目されるのは、インターネット空間です。
近年、中国では「国家安全法」「反スパイ法」「データ安全法」「サイバーセキュリティ法」など、安全保障と情報管理に関する法律が相次いで整備されてきました。民族団結法は、それらに民族政策という要素を加えた位置付けとも見ることができます。
そのため、中国政府と異なる民族問題に関する情報発信や研究活動が、中国政府から「民族団結を害する」と評価される可能性があるという点を懸念する専門家もいます。
このような動きを見ると、「革命を輸出する」というより、「中国共産党の政治理念や歴史認識、安全保障上の価値観を、中国国外でもできるだけ尊重させようとする試み」と理解する方が、現状にはより近い表現でしょう。
一方で、「コミンテルンの再来」という表現については慎重さも必要です。
コミンテルンは各国政府の転覆や武装革命を直接支援する組織でしたが、現在の中国政府は公式には他国政府の転覆や世界革命を掲げてはいません。現在の中国が重視しているのは、革命ではなく、中国の国益や安全保障、国家統一を守るために国際社会で自国の影響力を高めることだと説明しています。
ただし、民主主義国の側から見ると、「他国の言論空間にまで中国政府の価値観を及ぼそうとすること」自体が問題視されています。たとえば、海外の大学での講演や研究活動、企業の広告やウェブサイト、映画や出版物などが、中国政府の意向を意識して内容を変更する現象は「自己検閲(self-censorship)」として以前から指摘されており、民族団結法はそのような圧力を制度面で補強する可能性があるとの見方があります。
こうした状況を踏まえると、国際社会が取るべき対策は、中国との対立を目的とすることではなく、自国の法制度と自由な言論空間を維持することにあります。各国は、自国の憲法や法制度に基づいて表現の自由、学問の自由、企業活動の自由を保障しつつ、中国国内で事業を行う企業や研究機関には、中国法によるリスクを十分理解した上で活動できるよう支援することが重要です。また、中国との外交対話を継続しながらも、域外適用によって他国の主権や法秩序が侵害されないよう、国際法や外交ルートを通じて立場を明確に示すことが求められます。
総じて言えば、民族団結法は、冷戦時代のような「世界共産主義革命」を法的に復活させたものとまでは評価できません。しかし、中国共産党の政治理念や歴史認識を国内だけでなく国外にも一定程度反映させようとする近年の法制度の流れの一部として位置付ける見方には一定の根拠があります。このため、各国では「革命の輸出」というよりも、「法制度や経済力、情報空間を通じた影響力の拡大」として分析し、その上で、自国の法の支配、言論の自由、学問の自由を維持するための制度整備を進めることが重要だと考えられています。