クック25cm製造年の謎(3)
関口鯉吉氏のイギリス留学(1)
巨大なドーム(クック社の63.5cmニューオール望遠鏡が入っている)の隣にあるのは、ケンブリッジ大学太陽物理観測所のシーロスタットハウス(Coelostat House, Cambridge Observatory)です。この施設は1906年頃建てられました。内部にはマクリーン式太陽観測装置等の観測機器が収められていました。関口氏はこの施設を使って太陽観測をしていたのです。
(写真出典)Anon. (1911). Coelostat House, Cambridge Observatory. [Image]. Institute of Astronomy Library. http://www.dspace.cam.ac.uk/handle/1810/240724
以下は、マーティン・ルン氏 MBE FRAS(元ヨークシャー博物館⦅ヨーク⦆天文学担当学芸員)のご好意で、ケンブリッジ大学図書館からいただいた資料の抜粋です。
「太陽物理観測所所長による第9回年次報告書 [1] 1922年5月27日
副学長は、太陽物理観測所に関する報告書を評議会に提出させていただく所存です。
ここに提出する報告書は、1921年4月1日から1922年3月31日までの期間に関するものです。
(以下抜粋)最近まで神戸にある日本帝国海洋気象台の副所長を務めていたR. 関口氏が、太陽研究の経験を積むため、当観測所に赴任しました」
「太陽の自転の分光学的測定。長年にわたり行われてきた分光観測により、太陽を取り巻く吸収性気体は、緯度に依存する角速度で回転しており、その角速度は太陽赤道で最大となり、緯度が高くなるにつれてある程度の規則性をもって減少することが示されている。この緯度による角速度の変動について一般に受け入れられている法則が示唆する意味について、所長は王立天文学会に提出した論文(『Monthly Notices』81巻、101頁)で検討しており、さらに別の短報(『Monthly Notices』81巻、115頁)において、太陽のいずれの半球においても太陽の自転を決定するための観測を行う新たな方法を提示している。この方法は、従来の手法に比べていくつかの利点がある。ケンブリッジでこの方法を用いるための補助装置がマクリーン式太陽観測装置に追加され、現在使用されている。関口氏は、この新手法の試行に伴う作業を支援している。
最後の3段落で示された3つの研究方針は、いずれも太陽水蒸気の循環過程について、より明確な知見を得ることを目的としている」
マクリーン式太陽観測装置は、シーロスタットハウス内の12インチ(30cm)クック対物レンズで使用されていました。関口氏がイギリスで使用したクックはここにあったのです。
(追記)
manami.shさまから「太陽物理観測所所長による第9回年次報告書」中の論文引用箇所(「Monthly Notices」81巻、101頁)はミスプリントで、正しくは(「Monthly Notices」82巻、101頁)と教えていただきました。
「太陽の自転の法則について
H. F. ニューオール
王立天文学会月刊誌、第82巻、第2号、1921年12月、101–115ページ、https://doi.org/10.1093/mnras/82.2.101」
(『Monthly Notices』81巻、115頁)もミスプリントで、正しくは(『Monthly Notices』82巻、115頁)でした。
「太陽の自転の分光観測を確保する新しい方法の提案について
H. F. ニューオール
王立天文学会月刊誌、第82巻第2号、1921年12月、115–116ページ、https://doi.org/10.1093/mnras/82.2.115」
manami.shさまに心より感謝いたします。
(参考)
[1] 太陽物理観測所長(1922)「太陽物理観測所所長による第9回年次報告書」,太陽物理観測所,ケンブリッジ大学