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KANGE's log

映画「ROMA/ローマ」

2019.03.18 13:41

いよいよイオンシネマでも上映が始まったので、観てきましたよ。 
「楽しいか」と聞かれると、決して楽しい映画ではないと思いますが、「興味をそそられる」という意味で、面白い映画でした。 

ドラマとしては、ソフィアとクレオの2人の女性にそれぞれ起きた悲しい出来事と、それを乗り越える第1歩というところでしょうか。 歴史的・社会的な背景はありますが、それを声高に叫ぶものではありません。

アルフォンソ・キュアロンの自伝的映画だと聞いていましたが、ずっと誰がキュアロンにあたるのか、分かりませんでした。主観が排除されているんですね。個人的な映画ではあるが、自分の記憶のみに頼った作品ではない、ということでしょうか。

淡々とドラマは進んでいきます。まあ、地味です。 映画会社が手を挙げなかったのは無理もないでしょう。そういう大きな経済の流れからこぼれてしまったところに、本作が扱った物語も存在していたわけで、その構図自体に本作の存在意義があるようにも感じます。

また、絵作り、音作りにも強いこだわりを感じます。

劇伴を使わず、音楽は劇中に流れるものだけで構成されていたり、近頃流行っているASMR動画のように、ある1点の音だけを強調したかのように音響がデザインされています。先ほど、「主観は排除」と書きましたが、この音の演出だけは、キュアロンの記憶をたどっているような感覚を得ました。

カメラの動きも独特で、ロングショットが多く、ズームイン・ズームアウトはあまりなく、等速で水平方向にだけパーンするというシーンが多くありました。登場人物と距離をおき、気持ちを入り込ませないような意図があるのかと思いました。一方で、主要登場人物以外に、妙に印象に残るようなシーンが挿入されたり、画面の一部で「これは何なんだろう?」と気になるものを、わざわざ入れ込んでいたりもします。

やたらと水がからんだシーンが多かったり、家族の別れのシーンの直後に誰かがウェディングパーティを開いていたり、ピストルごっこと実際の銃撃を長い時間を挟んで重ねあわせたり、いろんなイメージの対比を試みているようですね。

そういう意味では、汚れた床をブラシで掃除し、その濡れた床面に、飛行機が空を飛んでいくところが映りこむという冒頭のシーンは、本作の全体を暗示しているようにも思えます。

ところで、この作品、PCやテレビの画面で観て、集中できるのでしょうか? スクリーンでこそ観るべき映画ではないでしょうか。それがNetflix配給で作られているという構図も、それ自体がアートなんじゃないかと思いました。

字幕では、クレオたちが使う先住民の言語を< >でくくることで、スペイン語と区別していました。ただ、これには目と頭が追いつかず、言語を意識することはできませんでした。たぶん英語圏の人も同じ状態なんじゃないかと思いますが、どうなんでしょう? それとも、スペイン語にはなじみがあるので、自然と区別して観られたのでしょうか? 僕たちが感じることのできない映画体験があったかもしれないですね。


最後に、ひとこと言えるのは「映画館で、上映途中で退出する者に、ろくな奴はいない」ということですね。