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日英同時通訳者 古賀朋子 English-Japanese Interpreter Tomoko Koga

ピアニストみたいな通訳者?

2026.08.03 01:00

つい最近、通訳業界の大先輩、通訳エージェンシーの方、インハウス通訳の方とお食事をする機会がありました。


その席で、大先輩から思いがけず私の通訳についてこんなコメントをいただきました。


「通訳しづらい場面になっても慌てている様子が出ず、ペースやトーンがほとんど変わらない。本当に上手なピアニストは、ミスをしても聴衆に気づかれないというけれど、それに似たものを感じる」


この言葉を聞いて思いました。通訳者にとってミスをしないことは大切であり、市内に越したことはありません。でも、実際の通訳の場面では、単語が聞き取れない、予想外の展開に驚く、話者のアクセントに苦戦するなどなど、いろいろなことが起きるので、完璧に訳すというのはかなり難しいです。そして正直に言えば、心の中で焦ることはよくあります。そこで本当に大切なのは、通訳者の動揺が表に出てしまうかどうかです。


確かにピアニストや演奏家もコンサートの時に小さなミスを犯すことはあるのでしょう。ですが、経験を積んでいればいるほど、その瞬間に流れを止めることなく、演奏を続けるのではないでしょうか?結局のところ多くの観客が感じるのは(もしくは分かるのは)みすをしたかどうかではなく、音楽全体がどう聞こえたかであるような気がします。少なくとも自分が生で演奏された音楽を聴くときはそうであるような気がします。(そもそも気づくだけの耳があるかという議論もありつつですが。)


そう考えてみると通訳も少し似ているような気がします。いつでも最適な訳語がすぐに口から出てくればそれに越したことはありませんが、思いつかない時もあります。肯定文かと思いきや文末でひっくり返されることもあります。音がよく聞こえないこともあります。


常に予測をしながら通訳をしているわけですが、予定外のことがしばしば起こるので、その時に通訳者が焦りすぎると、それが声や間や呼吸に出て伝わってしまいます。(そう言えば通訳者が呼吸の音をマイクに入れないっていうのも、結構大事かつ、個人的にタイムリーな話です!)


今回大先輩から頂いた言葉は、20年以上通訳を続けてきた自分にとっても、とても嬉しいものでした。もちろん、これからも知識や技術を磨き続ける必要があることは言うまでもありませんが、同時に皆さんに安心して聞いていただける通訳者でありたいという思いを改めて強くしたのでした。