石川遠征第1弾 あやとりはし
名前だけは知っていました。
正直、この橋は凄いと名前を聞いていましたし、その特徴も聞いてはいました。
けれども写真などでもその姿を見ることは無く、いつしか記憶の隅に追いやられていたこの橋。
だがしかし。
数奇な巡りあわせは急に訪れるもの。
家族での加賀旅行の数日前、とあるブロ友の方にこの橋はレポされていました。
衝撃的でした。
細かいことは言わない。
まずは見てくれ。
レポスタート。
この橋があるのは山中温泉郷のど真ん中。
石川県加賀市(かがし)
地図中央の国道は国道364号。
もう少し南に行けば大内隧道があります。
もったいぶっても仕方ありません。
ここに来れば必ずその姿は目に入ります。
それではご覧ください。
正に異形!!
手前が階段になっていることからもわかるように歩行者専用です。
ちなみに手前に写っているのは初登場のうちの一番上の娘ちゃん。
シーズン中は大変でしょうが・・・。
さてそろそろ行きましょうか。
その正体は言うまでもなく、この橋の変態すぎる架橋形式によるものです。
中路曲線逆三弦トラス橋
(ちゅうろきょくせんぎゃくさんげんトラスきょう)
まずトラス橋というのは「トラス」、つまり三角形に部材を組むことで強度を増す形式です
これは「アーチ橋」「吊り橋」などと並んで、橋好きには好まれる工法。
何せ見栄えがいいですから。
そして中路というのはトラス橋のどこに道を通すかということによります。
これはアーチ橋かトラス橋かで話題になります。
通常、上路式(じょうろしき)か下路式(かろしき)の二択になるこの部分ですが、上路ならトラスの上を、下路ならトラスの下というか下弦上を床版が通ります。
しかしこのあやとりはしではなんと「ど真ん中を通す」という第3パターンを発動。
アーチでも最も少ない「中路式」を採用しているのです。
そしてさらに、「逆三弦トラス」、通常トラス橋は三角形の部材を直方体に組んで橋とします。
しかしこのあやとりはしではこれを三角柱に組んでいるのです。
しかもこれを逆三角形に組んでいます。
全国を見れば非常に稀ではありますが、逆三弦トラス橋は存在します。
しかしその形式では全て上路式が採用されています。
まぁ形状を見れば当たり前。
この形式で中路を採用しているのは恐らく全国でここだけではないでしょうか。
そしてトドメとばかりに「曲線」。
これは読んで字の如く。
曲がってるんですよこの橋。
それも蛇行するかのように。
これはこの橋がただの通行用に作られたわけではないことを如実に示しています。
三弦トラスならではのタコ足
力がここに集中しているのがよくわかります。
しかし面白い形だなぁ。
三角形の断面を支える弦材は通常の四角形の断面のものより、明らかに多くの鋼材が使われています。
利便性より見た目を重視していることがわかりますね。
しかし中路式ではどこにも接続させることができません。
そこでこのあやとりはし、ある意味裏技を繰り出してきました。
床板吊っちゃった!
たこ足部分から伸びる細い鋼材で吊り下げられた構造となっている床版。
これだけ見ると吊り橋構造と言っても過言ではありません。
吊床版橋という形式の橋もありますからね。
それに近い形式と言えるかもしれません。
どっちにしろ唯一無二ですが。
下を流れるのは大聖寺川(だいしょうじがわ)。
この川もいろいろ面白物件抱えてるんですよ。
ここ以外にもレパートリー豊富です。
こちらは上流側ですね。
この周辺は、山中温泉の中心部。
つまりバチコリ観光地です。
そのため川にはこのような親水公園が設けられ、橋上から眺めることもできます。
だからこそ、この奇抜なデザインは賛否両論あるようですね。
個人的には面白いと思いますが・・・。
いよいよ対岸が近づいてきました。
延長94.7m、曲線の為長さの感覚がわかりにくいですが、結構長い橋です。
嘘だろ・・・
いや嘘でしょうけどね(笑)
しかしこれは個人的にはツボ。
いい演出ですね。
実際支えてるのはこっちですから。
ご安心してお渡りください。
林を抜ける異形の橋。
この橋はしばしば「竜」の姿に似ているといわれています。
うねり、谷を翔る竜
その光景は温泉地の谷間にふさわしい光景だと僕は思います。
この近くにあるこおろぎ橋や黒谷橋とは、また違った感覚もいとおかしです。
往復して楽しんだこの橋ももうすぐ終わりの時が近づいてきました。
ここで個人的に一番見たかった角度から撮影して終わりましょう。
逆三角形の下弦!!
この曲線がこのうねりを作り出しているのです。
本当に遊園地の乗り物みたい。
面白い橋があるもんです・・・。
1991年竣工。
この橋はもともと勅使河原宏氏のデザインで作られた観光用の橋です。
賛否両論ありますが、僕はこの橋、大好きです。
以上、あやとりはし編