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幻燈館

「開戦前夜」

2026.08.05 05:18

NHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」のドラマパートをベースに約40分を追加した完全版

全編138分というやや長尺ではあるが、ドラマ部分が面白いので最後まで飽きることはない。

前半は「シン・ゴジラ」での「巨災対(巨大不明生物特設災害対策本部)」を彷彿とさせる各分野からのエリート集団による「アメリカともし戦わば」と言う仮定を予測するブレーンストーミングの模様が描かれ興味深いのだが、その中核となる主人公の家庭の事情や過去の経緯などの掘り下げもあり、仮想の総理大臣役に抜擢された主人公がどう言う結論を当時の内閣に報告するかのサスペンスが加わっている。

現実的に考えれば「日本がアメリカに勝つ可能性はまずなく必敗」が結論として導き出されるのだが、現実では開戦して、予想通りの敗戦になるわけで、なぜそんな無謀な流れになったのか?その流れは誰にも止められなかったのか?誰が悪かったのか?と言う疑問符がラストになっても残り、結論は出ていない。

話の中では「日本対アメリカ」の太平洋戦争を素材にしているが、大きく考えれば「戦争」は誰が得をして誰が犠牲になるのか?と言う普遍的な要素を含んでいるので、今現在戦争が起きている地域と重ねて見ることも可能になる。

もし仮に当時の日本が中国から手を引き、既得権益の多くを自ら捨て去ってアメリカと戦わなかったとしても、明るい未来が待っていたかどうかは不透明なところが悲しい。

資源のない日本は三等国になってアメリカの植民地同様になってしまうことは、戦争しなくても起きていた可能性が高く、戦争をやった今も「アメリカの犬」みたいだなどと揶揄される日本になっていることを考えるとなんともやるせない気持ちになる。

色々考えさせる力作だと思う。