「宇田川源流」【お盆特集 世界から見た日本】 治安の良さと安全の国日本
「宇田川源流」【お盆特集 世界から見た日本】 治安の良さと安全の国日本
毎年のことだが、お盆の休みの時期はあまりニュースもないので、毎年のことだが適当に特集記事を組んでいる。正月は「年始放談」だがゴールデンウィークとこの時期はどうしようもない。
さて、今年は「世界の中の日本」ということで、日本が世界をどうみられているかということを、もう一度見つめなおしてみたいと思います。もちろん「スパイ天国」とか「金儲けできる国」などというような悪意で見ている人々もいますが、しかし、一方で日本にあこがれている人もまだまだ少なくないのではないでしょうか。その様に考えれば、日本のすばらしさをもう一度見つめなおすのは良いことではないかと思います。
第二回目の今日は、「安全と治安のよい国日本」ということを見てゆきたいと思います。
★ 安全を画像にした「はじめてのおつかい」
日本の高い治安と、それを支える人々の支え合いや共同体意識のすばらしさは、私たちが普段当たり前と感じている日常風景の中に色濃く表れています。海外からの旅行者や滞在者が驚く日本の「安全さ」は、単に犯罪率が低いというデータ上の話にとどまらず、社会全体に根付いた信頼感から生まれています。
たとえば、テレビ番組でもおなじみの「はじめてのおつかい」は、日本の治安の良さと温かい共同体意識を象徴する分かりやすい例です。わずか3歳や4歳の子供が一人でお財布を持って街に出て、商店街や近所の店へ買い物に行く光景は、世界的に見れば非常に珍しく、驚異的なこととして受け止められます。海外の多くの国では、子供を一人で屋外に出すこと自体が保護責任の放棄とみなされる場合すらあります。
日本でこれが成り立つ背景には、単に「危険な人が少ない」というだけでなく、「社会全体で子供を見守る」という目に見えないネットワークが存在しているからです。道を通る大人やお店の人が、小さな買い物客を警戒するのではなく温かい目で見守り、道に迷いそうになれば声をかけ、安全に目的地までたどり着けるよう自然にサポートします。幼い子供一人でも街を歩けるという事実は、地域社会に対する深い信頼のあらわれと言えます。
また、街中で急病人が倒れた場面などでも、この助け合いの意識がいかんなく発揮されます。駅や路上で人が倒れると、周囲にいる見知らぬ人同士が瞬時に協力し始めます。ある人はすぐに救急車を呼び、ある人は声をかけて様子を確認し、別の人はAEDを探しに走るという光景は珍しくありません。自分には直接関係のない他人であっても、「困っている人がいれば手を差し伸べるのが当たり前」という共通の倫理観が社会全体に共有されています。
夜間に女性や子供が一人で出歩くことができる点も、日本の安全さを物語る大きな要素です。夜遅くの電車内や住宅街の街灯の下を、怯えることなく一人で歩いて帰宅できる環境は、世界中の多くの都市において決して当然のものではありません。交番システムに代表されるきめ細やかな警察の存在に加え、一人ひとりが「互いの安全と平穏を守る一員」であるという意識を持っているからこそ、夜間でも安心して生活できる空間が保たれています。
このように、日本の安全さは法制度や警察の力だけに頼ったものではなく、人々の「お互い様」という思いやりや、社会に対する信頼感によって成り立っています。困ったときには見知らぬ同士でも自然と助け合い、子供の小さな一歩を街全体で温かく見守ることができるコミュニティの力こそが、日本という国の持つ最大の魅力であり、誇れるすばしさです。
★ 豊かな国日本の「安全」
日本が安全であり治安が良いのは、日本が豊かであり他人の物を奪う必要がなかったこと、また、何か他人に悪いことをすれば回って自分に仇が返ってくるというような慣習があるということあるのではないでしょうか。日本の高い治安と安全性を解き明かす上で非常に本質的な考察です。単に法制度や警察組織が優秀であるという表面的な理由を超えて、日本人の民俗的な深層心理や歴史的な生活様式に目を向けると、日本の安全さは必然的に形作られてきた側面が見えてきます。
歴史的な観点から「他人の物を奪う必要がなかった」という点について考えると、その根底には日本が長らく営んできた水田稲作中心の農耕社会があります。大規模な治水や田植え、稲刈りを成功させるためには、個人や単独の家族だけでは限界があり、地域全体で力を合わせる「結(ゆい)」や「無尽(むじん)」といった共同作業の仕組みが不可欠でした。こうした環境下では、一時的な奪い合いによって目先の利益を得るよりも、他者と協調して生産性を維持する方が、結果として自分自身の生活や生命を安定して守ることができるという経験則が共有されていきました。
また、広大な大陸とは異なり、海に囲まれた島国であり、逃げ場が限定されているという地理的要因も大きく影響しています。一度他人の物を奪ったり他害を加えたりして共同体の輪を乱せば、自分の居場所を失うことになります。前近代の日本において「村八分」と呼ばれる排斥の慣習が存在したことはその象徴です。共同体から排除されることは死に直結する恐怖であったため、人々の間には自省的な道徳観や規範意識が強烈に刷り込まれていきました。
さらに「悪事を働けば自分に仇が返ってくる」という感覚は、民俗学や信仰の観点からも興味深い仮説が立てられます。日本には古くから、仏教の「因果応報」の教えだけでなく、神道的な「穢れ(けがれ)」の概念や、世の中のすべての物に神や霊が宿るというアニミズム的な世界観が深く根付いています。誰にも見られていない場所で悪事を働いたとしても、お天道様が見ている、あるいは土地の神々が見ているという恐怖感が自然と働きます。他者を傷つける行為や奪う行為は、巡り巡って己の運気を下げ、自分や子孫に災いとなって跳ね返ってくるという無意識の畏怖が、法罰以上に強い精神的ブレーキとして機能してきたと考えられます。
つまり、日本の治安の良さは「豊かだから奪わない」という物質的な理由だけではなく、「定住型の農耕社会において他者と共生しなければ生き残れなかったという歴史的生存戦略」と、「目に見えない力や世間の目によって自らを規律する民俗的な精神構造」が複雑に結びついて形成されたものと解釈できます。自らの利益のために他者を害することは、社会的な死と精神的な罰の両方を引き寄せるという深い知恵が、何世代にもわたって継承されてきた結果が、現在の「安全な日本」という奇跡的な日常を支えていると言えます。
★ この治安の良さを後世に伝えるために
治安の良さと高い安全性が、戦後の高度経済成長を支えた巨大なエンジンのひとつであり、現代における女性の社会進出や活躍を支える不可欠な基盤となっているというご指摘は、日本の社会構造と経済史を読み解く上で非常に鋭く本質的な視点です。
戦後復興から高度経済成長期にかけて、日本が目覚ましい発展を遂げられた背景には、高水準の教育や勤勉さに加え、社会全体を包む圧倒的な「安心感」がありました。街や夜間の治安が保たれていたことで、深夜におよぶ流通や物流、製造業の交代制勤務が円滑に機能し、24時間稼働する社会インフラやコンビニエンスストアのような世界的にも稀有な利便性が誕生しました。犯罪被害への対策や防犯にかかる余計な社会的コストを最小限に抑え、人々のエネルギーと資本をそのまま経済活動や技術開発に注ぎ込めたことこそが、日本経済の飛躍を支えた隠れた原動力でした。
そしてこの安全な環境は、現代の女性の活躍にとっても強力な土台となっています。女性が一人で安心して通勤し、夜間でも遅くまで働くことができる環境は、世界の多くの地域では当たり前のことではありません。また、冒頭の会話で触れた「はじめてのおつかい」に象徴されるように、幼い子供たちが一人で登下校し、地域社会の中で安全に過ごせる環境があるからこそ、保護者は安心して仕事に専念できます。もし街が不案内で危険に満ちていれば、送迎や防犯に多大な時間と費用を割かれ、女性が社会でキャリアを継続することは極めて難しくなっていたはずです。治安の良さは、女性の社会参加や自己実現を陰で支える最も重要な社会資本と言えます。
では、このかけがえのない安全と相互信頼の文化を、今後の多様化する社会の中でも維持・発展させていくにはどうすればよいでしょうか。人口減少に伴い海外からの労働者や移住者を迎える機会が増える中で、重要なのは新しく社会に加わる人々を単に排除するのではなく、日本が長年培ってきた「見えないルール」や「お互い様」の文化覚書を丁寧に共有し、共に地域社会を作っていくアプローチです。
そのための方策として、まず地域コミュニティにおける対話と「文化の可視化」が求められます。日本の治安を支える農耕社会由来の共同体意識や、お天道様が見ているという倫理観は、日本人にとっては暗黙の了解ですが、異なる文化圏で育った人々には言葉にしなければ伝わりません。ゴミ出しのルールや夜間の静寂を保つ慣習、非常時の助け合いなど、なぜそのルールが存在するのかという背景にある「お互いの安心を守るための思いやり」の意図を、言葉や体験を通じて丁寧に伝えていくプロセスが不可欠です。
さらに、新しく暮らす人々を単なる「労働力」としてではなく、「地域社会を共に守るパートナー」として巻き込む仕組みづくりも効果的です。地域の防災訓練や防犯パトロール、清掃活動などに積極的に参加してもらい、一緒に街を守る体験を共有することで、共同体への帰属意識と「この街を安全に保ちたい」という当事者意識が芽生えます。困ったときに助け合える関係性を日頃から築いておくことこそが、相互の不信感を防ぎ、かつての「結(ゆい)」のような温かい安全網を再構築することにつながります。
日本の高い治安と信頼の文化は、歴史的に形成された宝であり、経済成長や誰もが活躍できる社会の根幹です。これからの時代は、外からの文化を拒絶するのではなく、日本が大切にしてきた「他者を思いやり、社会全体で安全を守る」という美徳を新しく来る人々にも共有し、共に育んでいく姿勢こそが、未来へこの素晴らしい安全な日本を繋いでいく鍵となります。