エレクトーン弾きが知っておきたい著作権の話①
それなりに弾けるようになってくると、エレクトーンのスコアが出版されていない曲も弾いてみたくなったり、知人から
「今度○○の曲弾いてよ!」
と無茶振りを受けることも増えてきます。
自分で編曲して演奏するにあたって必要な知識「著作権」についてまとめました。
なぜ編曲に許諾申請が必要なのか
曲を作った人には「自分の作品を、第三者に勝手に改変されない権利(同一性保持権、著作者人格権)」というものが発生します。
(これはJASRACなどの著作権管理団体に信託していない作品でも自動的に発生します。またこの権利は著作権管理団体を含む第三者に信託することができないため、作曲者が持ち続けます。)
エレクトーン編曲というのは原曲から編成・楽器を変える、つまり「改変」にあたるので、作曲者に許諾をいただく必要がある、ということです。
難しく書きましたが、
「あなたの曲が大好きなので自分で弾きたいです!」と言われて嫌がる作曲者はあんまりいないので、勇気を出して問合せしましょう。
公式の利益を害しない限り、お断りされることはあまりありません(当社調べ)。
もしお断りされたら潔く諦めましょう。「好きな人の嫌がることはしない」。常識です。
編曲の許諾と、演奏の許諾
たまに混同されるのですが、この2つは別物です。
「演奏権」についてはJASRACなど第三者に信託することができますが「同一性保持権」は信託することができません。
そのため、編曲の申請は作曲家または「音楽出版社」に問合せする必要があります。
音楽出版社って?
作曲家は曲を書くのがお仕事なので、いちいち「アレンジしていいですか?」「応援してます!」という問合せに応対することができません。これらの雑務を代わりにやってくれるのが「音楽出版社」です。(正しくは違うんだけど)事務所的なものだと思っておけばOKです。
編曲の許諾を得るための手続き
権利を持っている音楽出版社を調べよう
その曲の権利を持っているのが誰か?を調べるのにとても役に立つサイトがあります。
JASRACの作品データベース検索サービス「J-WID」です。
現時点で、メジャーレーベルから音源が出ている作曲家、テレビ・映画・アニメで使用されている曲はほぼ全てがJASRACに何らかの形で登録されています。
ユーザー登録不要、検索にお金はかからないのでどんどん活用しましょう。
↑検索画面です。作品タイトル(=曲名)か、アーティスト名で検索する場合が多いかと。
↓曲ごとの詳細画面です。
2枚目の画像で「識別」が「出版社」となっている権利者が、編曲許諾の問合せ先になります。
(補記)J-WIDに掲載されていない場合
ゲーム音楽などは、JASRAC管理曲でない場合も多いです。
J-WIDに載っていない場合、その作品の制作会社に問い合わせることになります。
問合せの際に必要な事柄
音楽出版社の名前が分かったら、問合せ窓口を探しましょう。
良い時代になったもので、たいていの場合はggればでてきます。
窓口はメールアドレスだったり、Webフォームだったり、電話だったりします。
実際に連絡するときには、下のようなことをまとめておくと話が早い=先方の印象が良いです。
・自分の氏名、あれば所属
・どんな編成(楽器・台数)にするのか
・いつどこで発表するのか
・有料公演か否か、決まっている場合はチケット代
・会場の収容人数
おまけ:どこからが編曲?/許諾申請が必要ない場合
※個人的な考えが多分に含まれます。ご利用は用法容量を守って自己責任で。
以下のケースは、編曲にあたらないと思われます。
・市販の楽譜・レジストの一部を自分用に改変する
・バンドなど、総譜が存在せず(決まったアレンジャーがいない)、セッション的に合奏する
・コード譜などを見ながら、即興的に演奏する
また、本番の予定はないけれど好きだから書いてみたい、編曲に挑戦してみたい、という場合は申請の必要は無いと思われます。そもそも完成するのか、発表できるのかが不確定なものに対して、作曲者や出版社の手を煩わせるのもどうかと思ったり。
こういった場合は、完成して発表の予定ができたら申請をする、で良いと思います。
「プログラムに曲名や作品名を掲載する」「集客のネタに曲名を出す」「CDなど、後に残るような形にする」場合は必ず事前に申請しましょう。
場合によっては公演中止、という可能性もありえます。
最後に
このあたりの手続きは面倒そうに感じられると思いますが、ぶっちゃけ楽譜書いたりレジスト作ったりする方がはるかに面倒くさいので、大事の前の小事と思ってちゃんとやりましょう。
無許可でコソコソやるよりも、自信を持って書いた方が良い演奏につながると思います。
2019.9.18 追記
「演奏権」について記事を書きました。こちらもお読みいただければ幸いです。
2020.05.17 追記