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“学び”の視点でみるミニッツの魅力(教育サポート)

2019.03.19 07:47

2018年7月29日、薩摩川内市企業連携協議会が主催した地元企業と地域住民とのコミュニケーションを図るためのイベント『わくわく お仕事博覧会』の一環として行われた『ミニッツミーティング2018 in 鹿児島』。このミーティングでは通常のレースに加え『薩摩川内モータースポーツアカデミー ~京商ミニッツドライビングスクール~』が併催された。モータースポーツアカデミーは、ワクワク&ドキドキするようなミニッツによるリアルな体験を通して子供達の科学や工学への興味を呼び覚まし、“子供の成長を応援するエンジニア養成アカデミー”だ。

その開催に尽力したのが、ここで紹介する松本栄志さんだ。モータースポーツアカデミーの発起人の一人でもある松本さんが、本企画を立ち上げたのはどのような想いからだったのだろうか? そこには……地方都市が抱える、ある事情があった。


関連記事はこちら:

1:リケジョとミニッツ

2:ミニッツから学ぶべきこととは?

3:“学び”の視点でみるミニッツの魅力


インタビュー:松本栄志さん
一般社団法人 組込システム技術協会 理事 関東支部長
兼 プラットフォームWG主査
兼 ロボット安全WG主査

「薩摩川内市が開催する『わくわく お仕事博覧会』は、“地元の学生達には地元の企業に就職してもらいたい”という想いからスタートしたイベントです。地元では子供達を含めた地域住民と産業・企業との関わりが希薄なこともあり、学生達の大半は学校を卒業すると首都圏に職を探します。


“地元にはいろいろな仕事がある”ことを地元の子供達にもっと知ってもらい、何かきっかけがあれば地元企業に就職してもらう。そういったつながりを築きたいという想いから始めたイベントなんです」

しかし、単に地元企業が会社を紹介するブースを出展しただけでは誰も興味を示さないと考えた松本さん。働き方改革も含めて“子供達が興味をもってくれるものは何か?”、“これから注目されるものは何か?”を考えた結果、最初にたどりついたのがロボットを題材とした教育コンテンツの展開だった。


そこには、2020年からプログラミング教育が小学校の授業に導入されることに加え、最近は理工系の人材育成が注目されており、早い時期から子供達に学びの機会を与えることが重要という考えもあった。


「新しいものづくりに取り組みたいというテーマで薩摩川内市の企業の方々と話をするなかで、“ロボットがいいんじゃないか”と話題になったんです。


でも、それは仕事になるのか? と考えると、すでに多くの企業で取り組んでいますので、そう簡単には仕事にはならない。じゃあ、何ができるのかを考えた時に“教育に使えるんじゃないか?”、ロボットを教材にしてプログラミングをやってみよう”という流れでスタートしたんです。


ところが、ロボットを製作してみると1体が50万円とか100万円で、子供達が気軽に使えるレベルのものではなかったんです」


ロボットを題材にして子供達に学びを提供するのは敷居が高いと結論づけた松本さんが、次なる題材として興味をもったのがR/Cカー。そのなかでもより手軽に、より簡単に科学を体験できるのはミニッツではないか? という結論に至ったという。


「国内はもちろん、海外メーカーのモデルも調べました。一般的な1/10スケールモデルでは大きすぎて小さな子供では扱いにくいですし、家の中で走らせるのも容易ではない。もっと身近に置いて、気が向いた時に手に取ってスグに使えるものが必要だと思ったんです。

そこで“コレだ!”と思ったのが、ミニッツでした。乾電池で動く、片手で扱える、使わない時は飾ることができる、テーブルの上に載る教材……スゴいなって思いましたよ(笑)。しかも、値段も安い。子供が家で練習中に家財を壊すとか、人にケガをさせるのは絶対にダメなので、安全性の面においても魅力的でした。


ミニッツを採用した理由は他にもあります。薩摩川内市には原子力発電所があり、“次世代エネルギーのまち”という地域ビジョンを掲げています。それと世界の産業を支える一つとして自動車があります。自動車の動力は環境問題や地球資源を背景にエンジンからモーター(電気自動車)に移行していますよね。

『電気エネルギー』、『自動車』というキーワードを並べてみると、ミニッツはばっちりハマるんじゃないかと。プログラミングとか難しいことを考える前に、まずは触って体験してもらう体験型科学教室という形でミニッツを教材に採用するに至ったんです。


これはモータースポーツアカデミーのカリキュラムの一例ですが、数学の関数をミニッツで体験することもあります。レディセットのRWDを操縦してみると、初心者には難しいですよね。

でも、送信機をワンランク上のミドルクラスにすると、プロポの操作量に対してクルマの挙動を調整できる“カーブ”という機能が使えます。“普段の生活で関数なんて使わないよね”って口にしていた中学生達に、“このカーブ、実は関数なんだよ”と説明すると、“なるほど”といった具合に納得してくれるんです。


自分にとって難しかったことが、関数を使うと簡単になる。苦手な数学を実際に体感してもらうことで、関数を身近に理解できるんです。学びの世界ではこういった体感がとても大切なんです。このような背景もあり、体験型学習教室を謳うモータースポーツアカデミーでは教科書を使いません。


教科書を使うとどうしても“暗記する”ことに気が向いてしまうからです。私も学生時代に家庭科で作ったカレーで失敗したことは今でも覚えていますが、教科書に何が書いてあったか忘れてますからね(笑)。うまくいったことも、うまくいかなかったことも体感したことは記憶に残る。そういう学びの機会をつくりたいんです」


このような経緯でスタートしたモータースポーツアカデミーはミニッツミーティング2018 in 鹿児島を皮切りに神奈川県のM Atsugi Racing、薩摩川内市の市比野小学校、熊本県のONE'S HOBBYでも開催。今後もいろいろなことにチャレンジしていきたいと松本さんは語る。

「現在、アカデミーは神奈川、熊本、鹿児島のショップと有志のユーザーの方々に御協力を頂いて運営しています。薩摩川内市の小中学校では、学校から依頼を受けた企業が子供達に授業を行う出前授業と言うものがあり、ここでもミニッツを使った授業を行っています。


衰退が叫ばれるホビーを教育に活用することで、子供達が科学の楽しさを学び、それは新たなユーザーを産み、日本のホビー市場が活性化することを願っています。


まだまだ運営方法に不慣れな面もありますが、全国に広めたいですね。最終的には私達の手を離れて地元企業が独自に開催できるような仕組みを作りたいと思っています。


子供達に学び方を知ってほしい

まずは教えられたままを学ぶ(学び方を学ぶ)、これとても大切なんです。そして自分で学んだことを人に教える(教え方を学ぶ)ことで成長する、アカデミーが目指す学びのスタイルでもあります。一期生達は入門から半年を迎え、現在は学ぶ立場から教える立場に成長し、子供達が自らミニッツの指導を行なっています。


成長の見える化

アカデミーではライセンス制度導入を準備しています。

指導員向けのトレーナーライセンスと生徒向けのドライバーライセンスです。

トレーナーライセンスは優秀な指導スキルを有する人を認定する制度です。

アカデミーのカリキュラムは50科目以上あるのですが、これを習得するレベルに合わせてライセンスを付与します。


子供達も自分のステップアップが見えるので次のステージに進むのが楽しくなります。

「カリキュラムをあと2個クリアしたらAライセンスだね!」とか、目標が見える化されるとヤル気にもつながります。


日本が世界に誇るホビー産業は半世紀が過ぎ、模型やR/Cカーのような現実志向からTVゲームなどの仮想志向へ向かっています。街の模型店や駄菓子店も減少し、地域の子供達と大人達の交流も少なくなりました。


「ミニッツのようなリアルホビーを教材にして子供達が科学を学ぶ、レースイベントを通じて大人から子供まで幅広い交流が生まれる。ホビー業界活性化のためにも、この取り組みを拡散させたいですね」