Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

司法書士田中康雅事務所|新百合ヶ丘・麻生区の相続相談

相続した不動産を全国から探せる|所有不動産記録証明制度とは

2026.03.31 23:00

2026年2月2日から、亡くなった方名義の不動産を全国まとめて確認できる「所有不動産記録証明制度」が始まりました。相続登記の前に、不動産の把握漏れを防ぐための制度です。

「亡くなった父の不動産、本当にこれだけだろうか」 

相続登記というと、戸籍を集め、遺産分割協議をして、法務局へ申請する。そんな手続きを思い浮かべるかもしれません。けれども、その前に確認しておきたいことがあります。亡くなった方が、どこに、どんな不動産を持っていたのか。 自宅やよく知っている土地だけなら問題ありませんが、昔購入した土地、親から相続した山林、道路の持分など、ご家族が把握していない不動産が残っていることがあります。こうした不動産の把握をしやすくするために始まったのが、この制度です。

この記事の内容
・所有不動産記録証明制度とは
・これまでは固定資産税通知書と名寄帳が中心でした
・「全国から調べられる」のが大きな違い
・誰が、どこで、いくらで請求できるか
・「これを取れば100%安心」ではありません
・住所変更登記をしておくことが、将来の相続にもつながる
・相続登記は「登記する前」の確認が大切です 

所有不動産記録証明制度とは

所有不動産記録証明制度は、法務局に請求することで、特定の人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を全国から検索し、一覧にして証明してもらえる制度です。 不動産の所有者本人だけでなく、その方が亡くなった場合には相続人などから請求することもできます。該当する不動産がなかった場合には、「該当なし」という内容の証明書が発行されます。 これまで不動産の登記記録は土地・建物ごとに管理されており、「この人が全国に所有している不動産を全部調べてください」という調べ方は、原則としてできませんでした。相続登記を始める前に、亡くなった方の名義の不動産を全国的に確認できるようになったことは、大きな変化です。 

 これまでは固定資産税通知書と名寄帳が中心でした 

相続のご相談では、まず固定資産税の納税通知書や課税明細書を確認することがよくあります。さらに、市区町村で「名寄帳」を取得して、亡くなった方名義の不動産を確認する方法もあります。ただし、これらにも限界があります。 

 神奈川県に住んでいた方が、北海道や長野県、九州などにも土地を持っていたとしても、その場所をご家族が知らなければ、従来はなかなか調査が難しいところがありました。 

「全国から調べられる」のが大きな違い 

所有不動産記録証明制度の大きな特徴は、市区町村をまたいで全国の登記記録を検索できることです。3つの資料は、それぞれ役割が違います。 下の図は、その3つについて、守備範囲と、そこから漏れるものを並べたものです。

そのため私は、この制度ができたから名寄帳や固定資産税通知書が不要になる、というよりも、複数の資料を組み合わせながら不動産の把握漏れを防いでいくと考えるのがよいと思っています。 


 誰が、どこで、いくらで請求できるか 

請求できる人と、請求する場所 

手数料は「検索条件1件ごと」 

手数料は不動産の個数では増えません。何筆あっても1通分です。 

ただし、次に説明するとおり、旧住所や旧姓でも検索する場合は、検索条件の数だけ手数料がかかります。たとえば、窓口請求で検索条件を4件指定し、1通を請求する場合は、1,600円 × 4件 = 6,400円となります。 なお、請求書1枚に複数の検索条件を記載できますが、1つの検索条件欄に複数の氏名や住所をまとめて書くことはできません。条件ごとに欄を分けて記載します。 

必要な添付書類 

書類は原則として原本の提出が必要です。ただし、印鑑証明書と委任状以外は、原本と併せて「原本と相違ない」旨を記載したコピーを提出すれば、手続完了後に原本が返却されます。オンライン請求の場合は、必要書類もすべてオンラインで提供します。

交付までの日数 

交付までの日数は登記所によって異なります。制度が始まって間もないため、2週間程度かかることもあります。余裕を持って請求してください。


「これを取れば100%安心」ではありません

とても便利な制度ですが、大切な注意点があります。この制度は、登記記録に記録されている氏名と住所を検索条件として不動産を探す仕組みです。現在の住所だけで検索すれば、必ず過去に取得したすべての不動産が出てくる、というわけではありません。

① 昔の住所・旧姓でも検索する 

たとえば、30年前に東京都に住んでいたときに土地を取得し、その後神奈川県へ引っ越したものの、その土地の住所変更登記をしていなかったとします。その土地の登記記録には、今でも30年前の東京都の住所が残っている可能性があります。 現在の神奈川県の住所だけを検索条件にしても、その土地は拾えません。そこで、過去の住所や旧姓など、登記されている可能性のある氏名・住所を検索条件として追加することが大切です。手数料は条件ごとにかかりますが、見落とすことのリスクの方が大きいと思います。 過去の氏名・住所を検索条件にするときは、証明書類が必要です。 

つまり、事前に戸籍の附票などで住所の履歴をたどっておくことが、この制度を使いこなす前提になります。ここは相続登記の準備とそのまま重なりますので、まとめて進めるのが効率的です。 

② 検索の対象にならない不動産があります

この制度は「所有権の登記がされている不動産」を検索するものです。次のようなものは、検索結果に出てきません。 

古い建物や、山間部の土地などでは、こうしたケースが実際にあります。証明書に載っていないから存在しない、とは言い切れません。 

③ 上の代の相続登記がされていないと出てきません 

これは実務で特に注意している点です。たとえば祖父名義のまま相続登記がされていない土地は、登記名義人が祖父ですので、お父様の名前で検索しても出てきません。「祖父の代から手をつけていない不動産があるかもしれない」という場合は、さかのぼって調べる必要があります。 

④ 「該当なし」でも手数料は戻りません 

検索の結果、該当する不動産がなかった場合も、「該当する不動産はない」という内容の証明書が発行されます。この場合も手数料はかかり、返却されません。条件を増やすときは、その分の費用も見ておく必要があります。 

だからこそ、固定資産税通知書・名寄帳・権利証・登記情報・所有不動産記録証明書などを組み合わせて確認する。これが、相続の不動産調査では大切です。 


住所変更登記をしておくことが、将来の相続にもつながる

この制度を見ていると、2026年4月1日から始まった住所・氏名変更登記の義務化ともつながっていることが分かります。 引っ越しても不動産の住所変更登記をしないままにしておくと、登記記録には昔の住所が残ります。すると、ご本人が亡くなったとき、相続人が現在の住所しか知らなければ、その不動産を見つけにくくなることがあります。 反対に、住所変更登記をして登記記録の住所を最新の状態にしておけば、将来、相続人がこの制度を利用するときにも不動産を把握しやすくなります。

住所変更登記は、単に「住所を書き換えるだけの登記」ではありません。

将来の相続で「こんな土地があったなんて知らなかった」という把握漏れを減らすことにも、つながっていきます。 

住所変更登記の義務化|検索用情報の申出・スマート変更登記について

 

相続登記は「登記する前」の確認が大切です

 相続登記のご相談を受けていると、どうしても「この不動産を誰の名義にするか」という話から始まりがちです。しかし、その前に、そもそも相続する不動産は、本当にこれですべてなのかを確認しておく必要があります。 一つの不動産だけ相続登記を終え、何年も経ってから別の土地が見つかれば、もう一度戸籍や遺産分割、登記の確認が必要になることもあります。所有不動産記録証明制度は、そのような相続登記の漏れを減らすための「準備段階の制度」として、今後かなり利用されていくのではないかと思います。 相続が始まったら、すぐに名義変更をすることだけを考えるのではなく、次の順番で進めていくことが、後から困らない相続につながります。 

2027年3月31日までに相続登記が必要な人|2024年4月1日より前の相続も対象です  

配偶者か子か。決められないなら「今は決めない」|相続登記を急ぐ前に  


まとめ 

「これを取れば全部分かる」という制度ではありませんが、これまで手がかりのなかった調査に、大きな入口ができたことは間違いありません。 なお、所有不動産記録証明制度は2026年2月2日から施行されています。手数料や請求方法などの詳細は、法務省・法務局の最新情報をご確認ください。 


初回のご相談は無料です 

「どこにあるか分からない土地がありそう」「祖父の代の名義が残っているかもしれない」。所有不動産記録証明書の取得を含め、調査から相続登記まで一緒に進めます。相続税がかかる場合は税理士と連携します。争いの代理や交渉が必要になる場合には、必要に応じて弁護士をご紹介します。その手前の、事実関係と資料の整理は当事務所でお手伝いします。

相続登記のご案内|進め方・費用・期限から、次の相続の準備まで

全部まとめて遺産整理  


関連するご案内

相続登記申請義務化について|期限・相続人申告登記・過料までを1本で  

数次相続と再転相続の違い|相続が続いたときに何が違うのか  

今回の相続で見えた課題を、次に持ち越さない|生前対策と不動産の出口