右下
ポアロといえばその人。事件はトリックに目が奪われがちも動機こそが、と彼女を描きしミュージカルにて。そう、アガサ・クリスティ。
例年八月は中止だったはず。真夏の炎天下に、それも対象者は障害者の方々であり、何を好んでグランドゴルフなど。いや、それがどうして、しかも一人ならず。何せ彼らにはそれを上回る「動機」があるに違いなく。月イチの障害者スポーツ教室にて満足げに帰路につく彼らを見送った。
容認派の父に対して不要論をかざすは。母の説得を終えたゆえ、あとは要する費用を、と娘。確かに「取得するなら今」と助言したのは事実。費用以上に時間。それこそが学生の特権であり、社会人以降にそれだけの融通が図れるか。
時折のラウンド相手や子と同年齢の学生であり。聞くにゴルフ部の新人が三十名は下らず、それも大半は初心者。ゴルフに欠かせぬは金銭的な余裕。ならば、全員がそういう家庭の生まれか、と言われれば。道具など中古で十分、練習場ならばまだしも本コースとなるに。
仮に捻出が出来たにせよ、もたつかば見知らぬ後続組から「急げ」の重圧を背に受けながらのプレーではさすがに。不足する金銭を補って余りあるは若さ、体力と情熱。彼らなりに知恵を絞り、学割とはいわぬまでも。
閑古鳥の地方にあっては彼らを歓迎する向きあり。首都圏近郊に比べて低廉なプレー代はもとより、コース内に併設されるは格安の宿泊施設。免許とゴルフ、それこそが学生の必修だったりもして。
惜しむ金銭。乗り合いの遠征は若者のみならず。高速代を払ってでもそちらのほうが割得と。いや、それこそが賢い選択か。車中の話題となりしはそちら。東名川崎がETC専門になるとか。もはや広く定着し、標準化した感のあるETCなれど、中には諸般の事情で持ち合わせぬ人とて。せめて、救いの1レーンがあっても、とK兄。
そう、そこに劣らぬ普及を見せるは。この前なんぞ発券機にて商品を選択後、支払い方法にあるはずの「現金」なく。まごつくに背後から、「そちらは現金使えぬ」と。並ぶ2台の外観や同一。1台を専門にするなら優先すべきはカードならぬ現金にあるまいか。庶民の味方のはずの駅そばにあってかくの如き状況。百均のレジなんぞ、もはや。
レジ袋の有無を聞かれるはまだしも、やれポイントがどうだ、とか。ようやく支払い方法の画面となりしも、並ぶボタンから「現金」探すにひと苦労。ようやく見つけるは右下であり。まずは「現金」か「それ以外」か、なる二者択一があって、その後は勝手に、というのが真の利用者目線にあるまいか、と憤慨してみても。
ならば、いっそそちらもセルフで。が、やはり、あの炎天下に汗だくで訴える姿への同情こそが金額を押し上げるのであって。そこに立ち止まって財布から小銭を取り出し、子供に持たせ。縮まりし距離に目の高さを合わせ、「ありがとう」と一言。顔ほころばせる子供たち。それに生まれし感情こそが。
駅頭にて熊本地震への救援募金を終えた。
(令和8年8月10日/3012回)