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とある冒険者の手記

V.新たな事実

2026.08.10 11:08

ヴァルを救出し野営地に戻ったガウラは、彼女を休ませる為、宛てがわれたテントに運んだ。

簡易ベッドにヴァルを降ろし、改めて彼女を見る。

ランプの灯りで鮮明になった姿は、彼女が如何に酷い環境で過ごしていたのかが伺えた。

2人きりのテントの中で、それを見たガウラは堪えきれずに涙が流れた。


「ガウ、ラ…、すまな、い、こんな、情け、ない、姿で…」


ヴァルの言葉に、ガウラは首を横に振った。


「早く助けに来れなくてごめん…」


震える声でそう言い、ヴァルをそっと抱きしめる。


「ヴァルが生きてて良かった……っ」


無事、とは言い難いが生きている。

それだけで充分だった。

涙が落ち着いた後、ガウラはヴァルの髪を整え、身体を拭き、着替えを手伝った。

ヴァルの筋力は予想以上に衰えており、足は震えながらも立つのがやっとの状態だった。

食事に暖かいスープを用意したが、スプーンすらまともに持てず、ガウラが食べさせる形になった。


「手を、煩わせ、て、すまな、い」

「気にするな。お前は身体を治すことだけ考えていればいい」


それを聞いて、ヴァルは弱々しく微笑んだ。

その後も、甲斐甲斐しくヴァルの世話をしていると、遠くで爆発音がした。


「なんだ?!」


突然のことに驚くガウラに、答えたのはヴァルだった。


「恐らく、母上、だ。施設を、爆破、した、んだろ、う」


クローンと胎児の隠滅。

そして、二度と施設が使われないようにする為でもあった。

それから少しして、ヴィラも野営地に帰還し、2人の元に顔を出した。


「2人とも、無事だな」


そういうと、ヴィラはガウラの頭を撫でた。


「?!」

「先程はすまなかった。憤りがあると思うが、あいつの処遇はこちらに任せてはくれないだろうか?」

「お義母さん…」

「私としても、一族としても、あいつを許す気はない」


ヴィラの顔は、冷静かつ真剣な表情をしているが、瞳の奥は激しい感情が渦巻いていた。

当然だろう。

自身の一人娘を好き勝手されたのだ。

親としても許し難いだろう。


「ヴァルにも、その話はされました。お義母さん、よろしくお願いします」

「任せてくれてありがとう」


そう言うと、ヴィラはヴァルの方に向かう。


「ヴァル。今回は場所の特定に時間がかかってしまって本当にすまなかった」


ヴィラはそういうと、ヴァルを抱きしめた。

そのヴィラの後ろ姿は、震えているように見えた。



***************



翌日、野営地から相乗りチョコボキャリッジに扮し、帰路に着く。

ヴァルの容態回復とリハビリのことを考えて、暫くは里で過ごすことが決まっている。

ガウラもそれに同意し、ヴァルと一緒に里で過ごすことにした。

パートナーであるからこそ、側にいてサポートをしたいと思ったのだ。

数日かけて里へと到着。

そこから、療養とリハビリの日々が始まった。

少しずつ食事を増やし、体重を戻しながら、1人でも食事が出来るようにリハビリをする。

歩行の方は、立つことは出来るので、ガウラが支えながらトイレやリビングへの移動をする様にした。

少しずつ、少しずつ、時間をかけて快復へと向かっていくヴァル。

それを献身的支えるガウラ。

そんなある日、ガウラは義母のヴィラに頼まれて、昔のヴァルの訓練記録を探していた。

ヴァルの部屋にあると言うので、ヴァルに場所を尋ねた。


「訓練記録か。確か、そこのクローゼットのどこかにあったはずだが…、物置にしてるから、探すのに時間がかかるかもしれない」


ある程度快復しているとはいえ、まだまだ自由に動けないヴァルが、指さしたクローゼット。

断りを入れてクローゼットを開ける。

物置にしてるとはいえ、しっかり箱等の収納を使って整理されていた。

一つ一つ中を確認していると、年期の入った古いぬいぐるみが出てきた。

それは、どう見ても赤ん坊の形をしていて、汚れで黄ばんではいるが白い髪に色白の肌にミコッテの耳が着いていた。


「ヴァル、これは?」

「っ?!」


それを見た瞬間、ヴァルの顔が赤く染まる。

両手で顔を覆い、消え入るような声で言った。


「それは……昔、母上があたいに作ってくれたモノだ……」

「ほう?」

「……赤ん坊だった頃のお前を模してる……」

「へ?!」


言われてよく見れば、確かに色味はそうだとわかる。

瞳も、黄色いボタンが使われていた。


「あ~……、えーっとぉ……」

「修行を始めて間も無い時だ。修行で時間を取られて、あまり集落にお前を見に行けなくなってしまって、癇癪を起こしたんだ」

「それで、お義母さんが作ってくれたのかい?」

「……そうだ。これで我慢しろとな…。まぁ、子供には効果は覿面だった」

「へぇ~……」


以前見た、子供の姿のヴァル。

そのヴァルがこのぬいぐるみを抱えてる姿を想像して、微笑ましいと思う反面、ぬいぐるみのモデルが自分の赤子の姿という事実に恥ずかしさも込み上げる。


「なんというか…お前の執着は知っていたけど、ここまでとは…」

「言うな……子供の頃とは言え、恥ずかしいんだ…」


珍しく本気で恥ずかしがっているヴァル。

ヴィエラ族の男に幻想した時とは違う恥ずかしがり方に、新鮮味を感じる。


「ふふっ、可愛いねぇ」

「……どこが」

「子供の頃のヴァルも、今のヴァルも」

「~~っ、人をからかってないで、早く訓練記録を探せっ」

「はいはい。ふふっ」


ヴァルの反応に愛おしさを感じながら、本来の目的に戻る。

綺麗に整頓されていたお陰で、割と早く記録を見つけることが出来たのだった。