1枚のモックアップが世界を変える ―AI時代に必要なVMDスキル
まさか、オンラインショップの運営に「VMD」のスキルが必要になるとは、今さらながら驚いている。
AIの時代になり、モデルも、撮影場所も、専用の道具さえも要らずに、お店のディスプレイがまるごと出来上がってしまう。だからこそ逆に必要になるのが、コーディネートやVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)のセンスなのだ。
思えば、アパレルの店長をしていた頃、私は「自分にはできないから」と、スタッフたちがディスプレイを組んでいくのをただ眺めているだけだった。けれど、あの時間も無駄ではなかったらしい。いろいろなインプットや経験が静かに積み重なっていて、気づけば私は、AI時代のVMDを自分の手でやっていた。
いつもとは違うモックアップのアイデアが降ってきたのは、眠る直前、午前2時頃のことだった。
「あ、天井から吊るすディスプレイにすれば、2つのバッグをうまく配置できるかもしれない」
頭に浮かんだのは、「ピカソ meets ポール・スミス展」で見た光景だった。天井から100枚ほど吊るされていた、ピカソのボーダーTシャツ。あれはポール・スミスによるキュレーションだった。
その記憶を頼りに、ChatGPTに「宙に浮いているような、吊るされたディスプレイにしたい」とプロンプトを送ってみる。出来上がったのは、想像以上に斬新な一枚だった。バッグをなるべく引き立たせたかったので、背景は白にし、そこにクリムトの世界観を重ねてもらった。
翌朝、Etsyの通知を確認すると、さっそく「お気に入り」に登録されていた。
1枚目のモックアップが持つ力を、あらためて実感した瞬間だった。この手応えをきっかけに、「吊るす」という手法で、次々とモックアップを作り続けていった。
最初は木製だったハンガーを、ゴールドの針金ハンガーに変えてもらうと、一気に垢抜けた印象になった。一方で、クロップド丈だけはなかなか思い通りに生成されず、何度も何度もプロンプトを出し直しては、ようやく完成にたどり着いた。私のプロンプトの量は、正直なところ尋常ではない。しつこいと言われても仕方がないほどだ。
でも、そのしつこさが実を結んだのだと思う。私がどんな画像を好むのか、GPTの側にも少しずつ「学習」されていったようで、出来上がるもののクオリティは、私が思い描いていた以上のものになっていった。
ユーザーの想像力さえあれば、なんでもイメージに変換してくれる。しかもGPTの画像生成能力は日々アップデートされていくから、こちらの表現の幅は、広がる一方だ。
Etsyのモックアップスキルが、売上を作る。そう断言できるようになりたいものだ。