イーディス・ホール教授のプルータルコス論
世界的に有名な英国の古典学者イーディス・ホール(Edith Hall)教授は、'Edithorial'というブログサイトを運営している(じつをいうと、僕のこのサイトも、幾分かホール教授のサイトを意識しつつ立ち上げたものである)。今日、久しぶりに覗いてみて、僕にとってはタイムリーな文章が投稿されているのを偶然見つけた(下に該当ページのリンクあり)ので、簡単にメモしておきたい。
投稿日は、2018年12月31日。記事によれば、ちょうどこの日、The Afterlife of Plutarchなる書物が刊行され、これにホール教授も論文を寄せている(ただし共著)そうだ。「僕にとってはタイムリー」と述べたのは、僕も、いままさに、プルータルコス『対比列伝』の受容にかんするリサーチを進めているからだ。ホール教授の論文は、『ティベリウス・グラックスおよびガーイウス・グラックス伝』(『対比列伝』のひとつ)の演劇化をめぐる事件―ひどい検閲を受けたとのこと―を扱っているようで、具体的な内容が気になるところだ。
同じ記事のなかで、ホール教授は、さらにもうひとつ、自身が携わったプルータルコス関連の仕事の紹介をしている。A People's History of Classicsという、やはり「西洋古典の受容」をテーマとした本が近々出版されるようで(ホール教授と、一人の別の研究者による共著)、このなかでホール教授は、プルータルコスの『迷信について』が、19世紀初頭の英国の政治論争のなかで果たした役割を考察したり、20世紀初頭に『子供のためのプルータルコス』(Children's Plutarch)という本を出したある思想家のことを扱ったりしているらしい。こちらもぜひ読んでみたい。
ホール教授は、この類の受容研究を何年も前から続けていて、その仕事量の多さ―プルータルコス研究はそのほんの一部である―は驚嘆すべきものだ。僕はまずプルータルコスの受容をトピックにして、この尊敬すべき先達から多くのことを学んでいきたいと思っている。