ブルーグラス、18世紀終わり頃。
ブルーグラス(5,6 cm x 7,5 cm)、イギリス、18世紀末の物。上の縁は欠け難いようにガラスが折り返しのダブルになっている、普通この時代のグラスで上の縁をダブルにする物はパテ入れかエッグカップのどちらかだが、ブルーグラスではパテ入れは作らないし、エッグカップには大き過ぎる、となるとこのグラスの用途がはっきりしない。食卓で使われた物であることは間違いない。用途はともあれ美しいグラスだ。二百五十年近く前の物だ。
また最近イギリス、ヴィクトリア時代の召使いに関する本を読んでいる、読みながら思ったのは、僕の店にある18、19世紀のグラスやシルバー、陶磁器が欠けることもなく残ることが出来たのは、当時これらを所有していた中、上流階級の家に仕えていた召使いたちの日々懸命な重労働があったお陰である、ということ。このクラスの人たちは自分で洗ったり手入れしたりはしない、それは「下々の(しもじも)」人間がすることで、自分たちは使うだけ。だからこれらのアンティークのグラスやシルバーなどを実際に日々触って大事にしたのは召使いたちだ、下の階級出身で今で言えば中学生くらいの女の子(召使いは大半が女性)が上のクラスの家に雇われ朝から晩まで必死に働いた。ただ、シルバーやグラス、陶磁器を触って管理したりしたのは上級の召使いなので、ご主人様や奥様の住む上の階に毎朝お風呂用のお湯や暖炉の石炭を運んだ腕の太い召使いがシルバー磨いたりしたとは思えないが、実際に洗ったのはキッチンにいた召使いだろう、小さい家ならば召使いは少ないので一人で朝から晩まで何でもやらされるが、大きなお屋敷になれば完全に分業されているので、グラスを洗う人、管理する人は別だったはずだ。兎に角彼女たちの必死の日々の労働、朝早くから夜遅くまでで馬車馬のように働かされる、そのお陰で今ここにこうやって綺麗なグラスや陶磁器が並んでいると思うと僕はとても複雑な気分になり、見え方まで違ってくる気がする。だからアンティークはネット販売してはいけないのだ。せめて僕も身体使って大切に売らないと遠い昔のイギリスで懸命に働いた無数の女性たちに申し訳ないではないですか、、。