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暮らしの道場

愛に負ける。

2016.04.03 15:05

*前回の記事の続き。





過去に起きた拷問の現場である

トゥール・スレンにて

前回のブログ記事に記したように

あまりの重みの中で

わたし自身の内を確認した



その翌日

そこから数キロ離れた

同じく大量虐殺の現場である

キリング・フィールドを訪れた。


この場を廻りながら

オーディオ・ヘッドフォンで

解説を聴く。


長い説明の

最後に

奇跡的にこの場から脱出し、

アメリカまで逃亡できた男性の

お話になった。



彼は

ずっと自分達を支配し痛めつけた相手を

憎んでいた。

愛を込めて育ててくれた母を残して

一人、脱出せざるをえなかった彼は

その後

「復讐こそが、母がもっとも喜ぶことだ」

と信じて生きた

彼の思考

人生の進路

なにもかもが

復讐に向けられていた

何より

母を喜ばせたかったから。


そんな風に

人生の全てを費やしてきた

それなのに

ある日

気がついた。

「母は

そんなことを望んでいたわけではなかったのだ

ただ

“息子が幸せでいてくれれば良い”

と願っていた

望まれていたのは

自分の幸せだけだった

ただただ

それだけだったのだ」

と。


その日から彼は

皆が、家族に感じられるようになったと言う

あの女性と

自分の姉は

同じだと

年老いた女性を労わるときは

自分の母を労わっているようで

同じことだと

そんな世界に、変わったと言う。



初めて

涙。

トゥール・スレンと、キリング・フィールドという場の歴史は

あまりの血の惨劇に

涙も出ないほどで

重たく沈黙する以外に

為すすべがなかったが

彼の言葉に

心が熱くあたためられ

希望へと うごめく気がした。


前回の記事に記したような、自身の思いも

「わたしは大変に冷酷ゆえに、そんな風に思うことしかできないのではないか

(自分が重みを背負えないから、痛みに寄り添いきれないから、その言い訳のような思いなんじゃないか)」

迷う心もあったが

彼のお話が耳に流れてきた時、リンクした気がして

それは肯定できる思いなんじゃないかって

道に逸れた思いではないんじゃないかって

思わせてくれた



どうしても

どうしても

心動かされるのは

愛だ

愛に負ける。

どうしても

どうしても

哀しみ

苦しみ

その奥にある

絶対的な

希望

それを見つめたい

それなくては

動き出せない

生きられない

それを見るとき

光射すのと同じこと

歩き出すことができる。