絵本『ろくべえまってろよ』
灰谷健次郎氏の作品は私にとっては父の存在を色濃く感じる作品ばかりです。例えば『兎の眼』『ひとりぼっちの動物園』『太陽の子』『わたしの出会った子どもたち』そして今回取り上げる『ろくべえまってろよ』は父に読んでもらった作品で、特に『太陽の子』では戦争の恐怖を父に思い起こさせてしまったことを大人になってから知り、『ろくべえまってろよ』ではコロナワクチン接種の待ち時間に二人で読んだことを思い出し懐かしがったことが、父の最晩年の絵本の思い出として新たに加わりました。絵本とは子供の頃に読んでもらった記憶だけでは終わらない、親子の思い出の強化としての位置付けもあるのだと再認識した作品です。
『ろくべえまってろよ』は、困っている仲間を放っておかず、みんなで知恵を出し合い、力を合わせて助けようとすることの大切さを伝えることを主題とした絵本として、教育現場では使用されることがある作品です。
またこの作品の面白いところは、子どもたちがろくべえを助けるために、いろいろな方法を考えるところです。ろくべえが穴に落ちているのを見つけると、かんちゃんが「まぬけ」と言います。普通なら「かわいそう」「助けなきゃ」と言いそうなところで、いきなり「まぬけ」と言ってしまうのが、子どもらしくて面白いところです。子供達に囲まれた職業に就かれている方は、子供の突拍子もない発言の面白さに触れたことがあるでしょう。また犬のくせに穴に落ちるなんてという場面では、犬だって全ての犬が俊敏に動けるものでもないことを知っているとそのような発言は出ないかもしれません。多くの犬に触れたことがない子供の発言であることも想像できて面白みがあります。また大人たちに頼んでも助けてもらえないところは、子供達がどう感じているでしょうと想像しても物語は大きく広げることができます。私がその場面に出くわすとしたら、大人から見て穴はそう深くはないこもと判断するか、安全確保ができるなら子供たちの思考力や協力をどのように育ませるのかという学びを促すためにも放っておいたかもしれません。事実「大人が助けてくれないなら、自分たちで考えよう」となり、この展開が少しおかしくもあり、子どもたちの一生懸命さが伝わってきくる作品になっています。
この他にも面白い場面はあります。どんなところが面白いのかを実際に読んで確かてはいかがでしょうか。