8月31日に思うこと~学校に行けなくても、何も終わらない~
こんばんは。自学道場ALTS 校長の安永です。
倉敷市内の小中学校は明日から2学期。
毎年のことですが、夏休みの終わりには、さまざまな事情で学校に行きにくい子たちが話題になります。
私は倉敷でフリースクールと通信制高校をやっている兼ね合いで、不登校の相談を受けることがあります。今日はよく受けるご相談からのお話をしていこうと思います。
このまま休ませていたら、二度と学校に行かなくなるのでは?
いちばん多いご相談は、だいたいこういう形で始まります。
「夏休みの間はふつうに元気だったんです。ところが、8月の後半に入ったあたりから、また部屋から出てこなくなって」
そして、最後にこう続きます。
「このまま休ませていたら、二度と行かなくなるんじゃないでしょうか」
この最後の一言に、不安のほとんどが詰まっていると思っています。
保護者の方は、決して子どもを追い詰めようとしているわけではありません。むしろ逆で、「今ここで止まってしまったら、この子の将来がなくなる」という恐怖から、なんとか間に合わせようとされています。夏休みの終わりというのは、その恐怖がいちばん濃くなる時期です。9月1日という区切りが目の前にあって、「ここを逃したら次は3学期まで戻れない」と感じてしまう。
親の焦りは、子どもに伝わっている。
しかし、この焦りは、ほぼ確実に子どもに伝わります。
しかも、言葉にしていないつもりのときほど、よく伝わります。
たとえば、こういう場面です。
前の晩に、たたんだ制服をそっと椅子に掛けておく。朝、いつもより少し早く起きて、玄関の電気をつけておく。「無理しなくていいよ」と言いながら、8時が過ぎるまでリビングから動かない。学校から電話があったあと、ため息をひとつつく。夕食のときに「〇〇くんは行ってるらしいよ」と、何気なく言ってしまう。
どれも責められるようなことではありません。私が親の立場でも、もしかしたら同じことを言うかもしれません。
ところが、子どもの側から見ると、これは全部「メッセージ」です。しかも、口に出された言葉より強いメッセージになります。口に出された「無理しなくていい」は否定できますが、ため息は否定できないからです。
その結果、何が起きるか。
家が「休む場所」ではなくなります。
不登校の子が学校を離れているあいだ、いちばん必要なのは、評価されない時間です。学校に行けていない自分を、朝から晩まで責め続けている子は少なくありません。そこに大人の焦りが加わると、家の中でも24時間ずっと採点されていることになります。エネルギーは回復するどころか、減り続けます。
そして、いよいよ回復が追いつかなくなると、子どもは自分を守るために、いちばん確実な方法を選びます。「もう学校の話はしない」という壁をつくることです。会話が減り、部屋から出なくなり、昼夜が逆転する。ここまで来ると、動き出すまでにかかる時間は、月単位から年単位に変わります。
急がせたことで、長引く。これが、不登校の相談でいちばんよく見る構造です。
では、保護者はどうすればいいのか。
私がお伝えしているのは、まず「保護者自身が不安について深く分析をする」ということです。
子どもが学校に行けないことで困ることは何なのか。
将来、不利になるというのは本当なのか。
そもそも、学校でなければ学べないこととは何なのか。
学校以外に得られるものはないのか。
友達とは学校でなければ作れないものなのか。
もしかして、親のメンツのために子どもを学校に行かせてはいないか。
学校に行かなければならない理由とは何なのか。
このように突き詰めて考えていくと、学校でなければいけないことというのは、保護者が思っている以上に少ないのです。
9月1日でなくてもいい、2学期でなくてもいい、小学校、中学校のうちでなくてもいい。大人が復帰の期限を考えているかぎり、子どもは必ずそれを察知します。長期休みの最後の日が辛くなります。逆に、大人が本当に期限を手放した瞬間に、子どもの顔つきが変わることがあります。
そのうえで、家の中に「学校の話以外」を増やしてください。晩ごはんのメニューでも、猫の話でも、ゲームの話でもかまいません。そもそも、学びというのは学校の外の生活にもたくさん転がっているのですから。
学校に行っていない子と、学校の話しかしない大人。この組み合わせが続くと、家の中に子どもの居場所がなくなります。
もうひとつ、生活の芯を1つだけ決めておくことをおすすめしています。朝10時に起きる、でもいい。夕方に一緒に買い物に行く、でもいい。1日1ページだけ何かを書く、でもいい。学校に戻ることを目標にせず、「今日やることが1つある」という状態を保っておく。動き出すときに使うのは、この芯です。
学校に行けなかったとしても、何も終わらない。
不安を抱えたまま子どもを見守り続けるのは、かなりしんどい作業です。だからこそ、大人の側にも不安の置き場所が要ります。子どもに背負わせるのではなく、外に持っていく。学校の先生でも、スクールカウンセラーでも、私たちのようなフリースクールでもかまいません。
自学道場ALTSでも、保護者の方だけでお越しいただくご相談を受けています。お子さんを連れてくる必要はありませんし、「うちはまだそこまでじゃない」という段階でも大丈夫です。むしろ、その段階のほうが打てる手は多く残っています。
子どもだけでなく、保護者にも学校と家庭以外の「第三の居場所」が必要です。
明日、教室に行けなかったとしても、その子の1年が終わるわけではありません。まず、大人のほうが先に落ち着くこと。回り道のようですが、これがいちばんの近道だと思っています。
私たち、倉敷の通信制高校・フリースクール「自学道場ALTS」では、在籍校への復帰を前提とはしていません。復帰を勧めたことも一度もありません。それでも半分以上の子が、在籍校へ復帰していきました。
この2学期からも「学校に行ってみる」と復帰を決意した子がいます。まずは週の半分から。
私たちも保護者も「無理して行かなくても大丈夫だよ」と言っています。それでも、本人が決断しました。とても大きなチャレンジだと思います。
そんな大きな決断をした生徒の姿を頼もしく思いながらも、いつでも帰ってこられる、安心できる学び舎であり続けたいと思っています。