八村えぐい。タイムラインが、その言葉で埋まった。
始まりは、有明だった。
8月15日、有明アリーナは満員だった。パリ五輪以来2年ぶりに日本代表へ戻った八村塁が、開始15秒でミドルを決める。24秒後、河村勇輝のパスから3ポイント。11-0。場内の空気が、そこで一度変わった。マークした韓国のヨ・ジュンソクは「次元が違う」と話した。対策はしてきた。だが、実物は想像を超えていた。
勝敗そのものは、多くの人が織り込み済みだったはずだ。世界ランクは22対57。リベンジ、借りを返す、という言葉は試合前から出ていた。だが、始まったあとの主語は韓国ではなかった。想定どおりの勝敗の中で、想定外だったのが「えぐい」の密度だった。
八村は勝ったあとに、個人技の話を先に出さなかった。
「ケミストリーも崩さないようにしながら、プラスのパワーを出すことができた」
「課題としていた韓国の良いところを出させず、得点だけではなくやるべきことをしっかり抑えながらこの試合はできた」
破壊力を見せつつ、チームを壊さない。Window4を読み解く鍵は、すでに有明で本人が口にしていた。
3週間前のアウェー韓国戦は、後味の悪さを引きずっていた。2点差。「アジアの笛」と呼ばれた終盤の判定と、ターンオーバーの多さ。勝って当然と思われていた相手に落とした夜だった。有明は公式の再戦ではない。順位表には何も残らない。人が集まったのは、雪辱のためというより、2年ぶりに代表へ戻った八村を見るためだった。15日は八村と河村が先発し、点差はあっさり開いた。翌16日は、八村、西田優大、富永啓生が欠場しても、その形は残った。勝ったことより、勝ち方が残った2日間だった。
19日、八村はこう整理した。
「世界に通用するようなプレースタイルだと感じた」
「僕が入ることによって、みんなの自信になるような存在でありたい」
相手は韓国ではない、とも言った。Window4の相手はサウジアラビアとカタールである。
有明で分かったのは、韓国を倒したことではなかった。えぐさが、ケミストリーを崩さずにチームへ入ったこと。次に問われるのは、その破壊力を公式戦でも再現できるかどうかだった。
Photo by Junko Sato / SportsPressJP
Text by Tomoyuki Nishikawa / SportsPressJP