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Logokeiba Portfolio

<Unused Ideas> / 第7話 ’26 皐月賞・ロブチェン

2026.09.13 05:46

※本企画の趣旨は、こちらからご覧ください。


▼黒曜石▼

最終的に、ロゴケイバではこのコピーを採用した。

当時の投稿はこちら。


26年皐月賞・ロブチェン。

前年のホープフルステークスを勝った時、ロゴケイバでは「別格の第一波」というコピーをつけた。

当時、まだ新馬戦から数えて2戦目。

荒削りだからこそ、剥き出しになった才能があった。


それから数か月後の、皐月賞。

敗北も経験し、戦法の幅を広げた。

競り合えば闘志を見せ、今度は逃げ切りで勝った。

しかも、スーパーレコード・1分56秒5。

レースを見終えた直後、この馬には、いつか“二つ名”がつく。

そんな予感がした。



▼いつか、二つ名の発生源になりたい▼

競馬には、偉大な馬たちを象徴する“二つ名”がある。

皇帝、帝王、怪物、覇王、英雄、暴君、龍王、天才…。

長い競馬の歴史の中で定着し、今では、その馬を語るうえで欠かせない言葉になっている。


ロゴケイバでは、これまで数多くのキャッチコピーを書いてきた。

その中で、密やかに抱いている野心がある。

いつかロゴケイバから、一頭の馬を象徴する二つ名が生まれ、競馬ファンの間で定着したら、とてつもなく光栄だと思う。

もちろん、狙って作れるものではない。

こちらが勝手に名づけても、誰も使わなければ二つ名にはならない。

今回の黒曜石が、それに値する言葉なのかも、分からない。

ただ、そういうトライをしてみたくなる馬は確実にいる。

ロブチェンには、そう思わせるだけの強さがあった。



▼黒い馬体から、「黒曜石」へ▼

最初に着目したのは、ロブチェンの黒鹿毛の馬体だった。

そこから浮かんだのが、黒曜石。

ただ、それだけでは、単なる見立てでしかない。

この馬を黒曜石と呼ぶ、筋の通った理由が必要だった。

そこで考えたのが、ホープフルステークスから皐月賞までの変化だった。

負けを知り、戦法を覚えた。

闘志を見せ、勝ち方まで増えている。

レースを経験するたび、剥き出しだった才能が磨かれている。


黒曜石というモチーフと、ロブチェンの成長。

この二つを結びつけることができれば、ロブチェンの才能を、ロゴケイバならではの表現で描けるのではないか。

それをテーマに据えて、AIとのラリーを始めた。



▼完成したコピーと本文▼

まずは、以下を読んでほしい。


ーーーーーー

「黒曜石」


黒い馬体は、原石。

磨かれるほど、鋭い光を返す。


負けを知り、戦法に目覚め、

闘志を燃やし、勝ち方を増やしていく。


己を試されるたびに、

才能は“万能”へと、変わっていく。


目撃者は、

その異能の奥へ、

吸い込まれていく。

ーーーーーー


これが、最終的に完成したコピーと本文だ。

ここからは、なぜこの形を完成としたのかを解剖していく。



▼「黒」を捨て、「光」を捨てる▼

「黒曜石」を仮タイトルに据え、まずは本文を書き始めた。

途中、こんな文章ができた。

「その黒い輝きの奥へ、吸い込まれていく。」

悪くはない。

しかし、初期案では、本文の冒頭ですでに、「黒い馬体は、磨かれるほど、鋭い光を返す。」と書いていたのだ。

短い文章の中で、「黒」が意味もなく重複してしまう。

そこで「黒」を捨て、「その深い光の奥へ、吸い込まれていく。」とした。

しかし、まだ違う。

今度は「光」が重複している。

そこで、これも捨てた。


次に、「その強さに、吸い込まれていく。」ともした。

けれど、「強さ」では意味が広すぎる。

今回感じたのは、単純な能力の高さではない。

ロブチェンは、経験したことを次のレースで自分のものにしているように見える。

レースを重ねるほど、できることが増えていく。

だから、「才能は“万能”へと、変わっていく。」という言葉が残った。


そして最後の「強さ」は、その特異な能力を表す「異能」が相応しいと考えた。



▼足すほど、「黒曜石」が弱くなる▼

最後まで決まらなかったのが、タイトルだった。

仮置きした「黒曜石」だけでは、少し説明が足りないのではないか。

そう考えて、AIと案を重ねた。

しかし、どれもしっくりこなかった。

意味を補おうとするほど、「黒曜石」という言葉そのものが持つ強さが薄れていく。

案は増えているのに、正解から遠ざかっていくような感覚だった。


そこで、タイトルではなく本文を変えた。

「黒曜石」はそのままに、本文をこう切り出した。

「黒い馬体は、原石。磨かれるほど、鋭い光を返す。」

すると、原石 → 磨かれる → 光を返す。

この流れが生まれ、すべてが一気につながった。

なるほど、これならば「黒曜石」だけでいい。


タイトルに、言葉を足す必要はなかったことに気がついた。

タイトルを、本文で支える構造こそが必要だったのだ。



▼文脈とは、時間の価値だ▼

今回も、AIとのラリーを細かく繰り返した。

・「黒」が意味もなく、重複している。

・「光」も意図もなく、繰り返している。

・「強さ」では的確ではない。

・「黒曜石」に何かを足すと、冗長になる。

一つずつ違和感を見つけ、そのたびに案を出し直し、また捨て続けた。

AIは、こちらが課題を伝えれば、何度でも次の案を出してくれる。

しかし、なぜ、それが不適当なのか。

何なら成立するのか。

何を残せば、その馬だけの言葉になるのか。

その判断までは、AIに委ねられない。


そして、その判断には、制作対象を見続けてきた時間が必要になる。

前走を見ていなければ、ロブチェンが勝ち方を増やしていることにも気づかない。

ホープフルステークスで「別格の第一波」と書いた経験がなければ、今回をその続編として考えることもできない。

AIでは、その馬を見続けてきた時間や文脈までは、代用できない。

文脈とは、時間によって蓄積される価値でもあるからだ。

それを持たないままAIを使えば、クリエイティブは簡単に平均値へ飲み込まれる。



▼今回の制作そのものが、黒曜石の研磨だったのかもしれない▼

アイデアを出して、違和感を見つけて、捨てて、削って、また磨く。

そうして余計なものがなくなった時、ようやく完成品として、光を返すからだ。


AIを取り入れた制作が進む時代。

求められるのは、文脈を蓄積する時間だ。

そして、何を削れば、もっと光るのか。

問われているのは、見極める目だ。


それらを証明するには、執念にも似た、繰り返しの研磨が必要なのだと思う。