婚姻前から夫本人が戸籍の筆頭者である場合|前婚・分籍・帰化など考えられる理由
婚姻前の戸籍を確認したところ、夫本人がすでに筆頭者になっている。そんな場合、以前の婚姻・離婚だけでなく、分籍や帰化など、主に5つの理由が考えられます。
結婚前であれば、父や母が筆頭者になっている戸籍に入っている。なんとなく、そのようなイメージを持っている方も多いかもしれません。
ところが、婚姻前の戸籍を確認すると、夫本人が筆頭者となる一人の戸籍になっていることがあります。
このような戸籍を見ると、まず「以前に結婚していたのではないか」と考えるかもしれません。
実際、以前の婚姻・離婚によって本人を筆頭者とする戸籍が残っている場合はあります。しかし、本人が筆頭者であることだけをもって、離婚歴があると判断することはできません。
今回は、婚姻前から夫本人が戸籍の筆頭者になっている場合に、どのような理由が考えられるのかを整理します。
この記事の内容 ・戸籍の「筆頭者」とは
・1 以前に婚姻し、その後離婚している場合
・2 分籍によって本人の戸籍を作った場合
・3 帰化によって戸籍が作られた場合
・4 子との関係で新戸籍が編製された場合
・5 そのほかに考えられる場合
・転籍や改製は「筆頭者になった原因」とは少し違う
・戸籍をさかのぼれば、理由は分かります。問題は、その先です
・あわせて読む ・本人が筆頭者というだけでは離婚歴は判断できない
戸籍の「筆頭者」とは
戸籍の筆頭者とは、その戸籍の最初に記載されている人です。
住民票の「世帯主」とは異なり、家族の代表者や家長という意味ではありません。
たとえば、婚姻によって夫婦について新戸籍を作り、夫の氏を称する場合には、夫が筆頭者となります。
また、筆頭者が死亡したからといって、配偶者や子が新たに筆頭者へ「交代」するわけでもありません。筆頭者は、その戸籍を特定するための見出しのような役割を持っています。
筆頭者になっている」という事実と、「現在その家族を代表している」ということは別の話です。
1 以前に婚姻し、その後離婚している場合
婚姻前から夫本人が筆頭者になっている戸籍を見た場合、実務上まず考えられるのは、以前の婚姻によってその戸籍が作られたケースです。
たとえば、次のような流れです。
- 婚姻:以前の女性と婚姻し、夫の氏を称して、夫を筆頭者とする戸籍を編製
- 離婚:妻が戸籍から除かれる
- その後:夫本人を筆頭者とする戸籍が残る
離婚したからといって、夫を筆頭者とする戸籍そのものがなくなるわけではありません。
その後、現在の妻と再婚して夫の氏を称する場合、夫がすでに戸籍の筆頭者であれば、戸籍法16条により、新しい夫婦の戸籍を一から作るのではなく、現在の妻がその夫の戸籍に入ることになります。
そのため、現在の婚姻より前から夫本人を筆頭者とする戸籍が存在している場合、以前の婚姻・離婚がその理由であることはあります。
もっとも、これだけで離婚歴があると断定することはできません。
なお、以前の婚姻に子がいた場合、離婚によって親権者が母になったとしても、子はその時点で当然に母の戸籍へ移るわけではありません。子の氏の変更許可を得て入籍の届出をしない限り、子は父の戸籍に残ります。この点は、次の記事で詳しく説明しています。
離婚後の戸籍はどうなる?|旧姓に戻る・婚氏続称と子どもの戸籍を整理
2 分籍によって本人の戸籍を作った場合
婚姻以外で本人が筆頭者となる代表的なケースが、分籍です。
戸籍法21条では、成年に達した者は、戸籍の筆頭者とその配偶者を除き、分籍することができるとされています。
父(筆頭者)・母・成人した独身の息子が入っている戸籍で、息子が分籍すれば、親の戸籍から抜け、息子本人を筆頭者とする新戸籍が編製されます。
分籍によって親子関係がなくなるわけではなく、相続関係にも影響はありません。戸籍を別にする手続です。
したがって、婚姻前から夫本人が筆頭者だったとしても、以前に結婚していたのではなく、独身時代に分籍していたという可能性があります。
3 帰化によって戸籍が作られた場合
次に考えられるのが、帰化です。
外国籍の方には、日本人と同じ日本の戸籍はありません。帰化によって日本国籍を取得すると、その人について日本の戸籍が作られることになります。
その結果、本人を筆頭者とする戸籍が編製される場合があります。
「婚姻前から夫本人が筆頭者=以前に婚姻していた」とは限りません。
帰化によって本人の戸籍が作られ、その後に現在の妻と婚姻したということも考えられます。
4 子との関係で新戸籍が編製された場合
本人を筆頭者とする戸籍が作られる理由は、婚姻や分籍だけではありません。
戸籍法17条では、戸籍の筆頭者とその配偶者以外の者が、自分と同じ氏を称する子または養子を有するに至ったときは、その者について新戸籍を編製することとされています。親・子・孫の三代が同じ戸籍に並ばないようにするための扱いです。
たとえば、親の戸籍に入っている独身の男性が養子縁組をすると、その男性を筆頭者とする新戸籍が編製され、養子はその戸籍に入ります。
そのため、親の戸籍に入っていた人について、子との戸籍関係を整える過程で、本人を筆頭者とする新しい戸籍が作られている場合があります。
ただし、男性の場合、婚姻していない子を認知しただけでは、その子は父の戸籍に入りません。子の氏の変更許可を得て父の戸籍に入籍するなど、限られた場面での扱いになります。
頻繁に目にするケースではありませんが、「結婚したから筆頭者になる」という場合だけではないことは押さえておく必要があります。
5 そのほかに考えられる場合
さらに特殊なケースまで含めれば、本人を筆頭者とする新戸籍が作られる場面はほかにもあります。たとえば、次のようなものです。ここに挙げたものが全てではありません。
- 届出による日本国籍の取得・再取得
- 就籍によって新たに戸籍が作られた場合
- 性別の取扱いの変更に伴って新戸籍が編製された場合
戸籍法22条でも、戸籍に記載がない人について新たに戸籍の記載をすべきときは、父または母の戸籍に入る人を除き、新戸籍を編製することとされています。
もっとも、通常の戸籍を見て「なぜ婚姻前から本人が筆頭者なのだろう」と考える場面では、まず以前の婚姻・離婚、分籍、帰化といった理由から考えるのが分かりやすいでしょう。
転籍や改製は「筆頭者になった原因」とは少し違う
ここで、転籍や戸籍の改製についても整理しておきます。
転籍によって本籍を移した場合や、戸籍がコンピュータ化されるなどして改製された場合にも、新しい戸籍が作られることがあります。
しかし、これらは通常、すでに筆頭者であった人が、その後の戸籍でも引き続き筆頭者として記載されるものです。
「この人は、なぜ最初に筆頭者になったのか」を考えるときに見るのは、転籍や改製そのものではありません。
その前にどのような原因で本人を筆頭者とする戸籍が作られたのかを、順にさかのぼって確認することになります。
戸籍をさかのぼれば、理由は分かります。問題は、その先です
婚姻前から夫本人が筆頭者になっている理由は、出生まで戸籍をさかのぼれば、たいてい分かります。以前の婚姻・離婚であれば、除籍謄本や改製原戸籍にその記載が残っています。調べ方としては、ここで答えが出ます。
ところが、相続の場面で本当に詰まるのは、離婚歴があったかどうかではありません。その婚姻に子がいたかどうかです。前の婚姻の子は、離婚しても父の子であることに変わりはなく、相続人になります。親権者が母であっても、何十年も会っていなくても、相続人です。その方を含めなければ、遺産分割協議は成立しません。
そして、それが分かった後に決めることになるのは、手続の話ではなく、家族の話になります。誰が、どのように連絡を取るのか。生前のうちに家族へ伝えておくのか。伝えないまま、遺言で備えるのか。ここが分かれ道です。
どの道を選んでも間違いではありません。ただ、どこに分かれ道があるのかを知らないまま進むと、後から戻るのが大変になります。
全体の流れの中でいまどこを考えているかは相続の道筋地図で、似た状況でほかのご家族がどう決めたかは相続の判断例で確かめられます。
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本人が筆頭者というだけでは離婚歴は判断できない
婚姻前から夫本人が戸籍の筆頭者になっている場合、主に考えられる理由を整理すると、次のようになります。
下の図は、婚姻前から本人が筆頭者になっているときに考えられる理由を、1枚にまとめたものです。
- 以前の婚姻・離婚:以前の婚姻で作られた、夫を筆頭者とする戸籍が残っている
- 分籍:分籍によって、本人を筆頭者とする戸籍を作っている
- 帰化:帰化によって、本人の戸籍が作られている 子との関係:子との関係で、本人を筆頭者とする新戸籍が編製されている(戸籍法17条)
- 国籍取得・就籍など:国籍取得・就籍などによって、新戸籍が編製されている
- 転籍・改製:筆頭者になった原因ではない。すでに筆頭者だった人が、新しい戸籍でも引き続き筆頭者になる
以前の婚姻・離婚ということはあります。
しかし、「本人が筆頭者である」という一つの記載だけから、その人に離婚歴があると判断することはできません。
戸籍は、その戸籍がどのような原因で編製されたのかによって意味が異なります。
「本人が筆頭者になっている」という結果だけではなく、「なぜその戸籍が作られたのか」を考えることが大切です。
なお、実際の戸籍の記載内容や戸籍の動きは、その人の身分関係、届出内容、戸籍が編製された時期などによって異なる場合があります。
戸籍の記載から、相続人の範囲がはっきりしない段階でも、ご相談いただけます。初回のご相談は無料です。