スナップ『背中をスリスリするのはなぜ?』
今年は夏休み明けで生徒さんから素敵な成長話が届き溢れ、記事に取り上げるのに困らない状況にあります。その中でレッスン中に「この行動は?」とお母様がお思いになることがあったので、今回は『背中をスリスリとこする』ことの意味を解説してまいります。
子供達が壁やソファー、床や畳に背中をこするのは、大人が背中が痒くて孫の手や人の手で掻くのとは違い、背中を色々な物にこすることで多くのことを学び、そして実験を繰り返しています。上の写真は床間の壁に、下の写真はソファーの背もたれにと移動しながら感覚遊びと実験を繰り返したいました。しかしある日突然このような行動を起こしているように思われるでしょうが、実は6〜9か月頃に物を触る・叩く・握る・口に入れるなど「触ったらどうなる?」という感覚探索が盛んになります。そして9〜12か月頃に掴まり立ちや伝い歩きが始まり、自分で移動しながら周囲を触って調べる行動が増えてきます。その後1歳〜1歳半頃に歩けるようになるにつれて、今回のような「歩く→触る→戻る→また触る」といった遊びがかなり出ます。さらに1歳半〜2歳頃になると、移動できる範囲が広がり「ここからここまで歩く」「同じ場所を何度も往復する」など、空間そのものを使った遊びも増えていきます。生徒さんの行動はちょうど1歳前後から目立ってきやすいもので、実は生後6か月以降の働きかけを十分したからこそ出てくる実験行動です。つまりしっかりと育てていたからこそ出てくる反応で、最初は「壁を触る」という感覚遊びだったものが、歩けるようになると「壁まで歩いて触る」という移動+感覚遊びに発展しているところが大変面白い発達です。そして、何度も繰り返すのは「飽きていないから」というだけではなく、「触る → 感じる → 歩く → また触る → 同じ感覚になる」という一連の出来事を、何度も確認しています。よって皆さんのお子さんが最近こうした行動をとり始めたのであれば、歩行能力と身体感覚、空間認識が一緒に発達してきたサインの一つとして見ることができます。
では具体的にどのようなことを実験し学んでいるのかを解説していきます。
1、感覚を楽しむ
先述した通り多くの子供の行動は先ずこの感覚遊びからスタートします。自分が動くと、体にいろんな感覚が起こることを学びます。背中を物に当てる、押す、こする、離れることで、物が触れる感覚、圧力や摩擦の違いを感じます。自分が背中を動かすと壁との感触が変わる感覚遊びを楽しみます。そこに歩行が加わると単に背中で感じるということから、自分が移動することでさまざまな物を見つけて感触が変わることの発見を行う小さな実験を繰り返します。
2、自分の体の位置を知る
「自分の体の位置を知る」というのは、簡単にいうと「自分の体が今、どこにあって、どんな姿勢で、周りの物とどう接しているのか」を脳が把握するということです。我々人間は自分の背中を鏡などに映さない限り、自分で見ることができません。しかし大人は何となく自分の背中をイメージすることはできます。これは幼い頃からの経験で「ここに壁があり、背中をこう近づけると当たるんだ」という身体感覚を育ており、大人は一度経験すれば「ここに壁がここにある」と分かりますが、1歳児の脳はまだ発達途中で何度も繰り返し、背中の感覚を鍛えることをしなければ、自分の体の位置を覚えることができません。そのために何度も背中を色々なものに押し当てる経験を自発的に行い、新しい物を見つけては実験を繰り返しているのです。だからこそ「何度もやる」ことに大きな意味があり、自分自身で身体地図のようなものを少しずつ作っていくのです。誰かが教えたわけでもなく、子供が自発的に同じことを永遠と繰り返し獲得していくのです。この素晴らしさを親御さんも学んで感じて喜んでほしいと考えます。
3、力加減を学ぶ
子供はただ背中で物に触れるという感覚遊びだけを行っているだけではありません。強く押したらどうなるか、弱くしたらどう感じるか、物を変えたら感じ方が違うのかなどを試しています。つまり単なる触れるから、自分の動き1つで何かが変わることを学んでいるのです。私たち親は言葉が十分に話せない子供の行動を一つ一つ大切に感じ取ることが重要であること、そして子供の学びは大変奥が深いことを心に留めておく必要があります。
4、バランスや姿勢を練習する
立った状態で背中を壁につけたり離したりすることで、体幹や重心の感覚も経験していきます。大人から見ると「ただ壁にすりすりしている」ようでも、子どもにとっては「自分の体と外の世界を調べる実験」に近いのです。
5、背後を知る手掛かりを学ぶ
もし安全な壁なら、止めずに少し見守ってあげても大丈夫です。「ザラザラするね」「背中で押してるね」などと声をかけると、体験と言葉も結びつきやすくなります。また背中の感覚を鍛えておくことは、危険を察知する感覚への働きかけも敏感になります。