「八つ墓村」(1996)
片岡千恵蔵版(1951)、渥美清版(1977)に次ぐ、横溝正史原作「八つ墓村」3回目の映画化。
市川崑監督なので、いつも通り石坂浩二主演かと思われていたが、急遽豊川悦司に金田一役が代わっている。
有名な1977年松竹版とは違って、比較的原作に沿った展開になっているが、とはいえ細部にはかなりアレンジが加えられている。
松竹版と一番違っているのは、辰弥を慕う典子が登場する点で、典子は原作でもちょっと得意なキャラクターなのだが、本作では喜多島舞さん(東宝アイドルだった内藤洋子さんの娘さん)が見事にその紀子を演じきっている。
典子だけでなく、その暗示である里村慎太郎も登場しているので、美也子との関係性も匂わされており、その部分では原作に近いと言えるのだが、骨格となる「殺人計画」自体は、本作でも省略されているので、小竹、小梅の双子の設定の意味があまり生きていない。
ただ、合成で描かれている双生児の老婆の姿は見事と言うしかなく、二人分の演技をする岸田今日子さんもさぞかし大変だったと想像する。
合成を使った双子表現自体は白黒映画時代から珍しくはないのだが、本作の表現はかなりの高水準ではないかと思う。
萬田久子さん演じる春代役も、ちょっと原作とはイメージが違っているような気がするが、おかげで怪しい容疑者の一人みたいに見えるし、原作と違って、小竹、小梅ら大叔母との確執も加えられており、多治見家のドロドロした内部事情が透けて見えるのも興味深い。
全体的に丁寧に作られている感じはするが、地味な印象を受けるのは、松竹版が当時としては派手な大作仕立てだったこととの印象の違いかもしれないし、メインを務める俳優たちが、映画撮影所育ちのベテラン勢から若い世代の人に変化し、映画っぽさが若干薄れたこともあるような気がする。
さらにケレン味に乏しい殺害方法を補うためか、本作では新たな殺人や証拠の類を付け加えているのだが、それが効果的と言うより、犯人の間抜けさを引き立たせる結果になっているように見え、作品としての説得力を失っている気がする。
トヨエツ版金田一は、その長身ぶりも珍しければ、人懐っこそうというか、ちょっとヘラヘラした軽薄そうな素振りも楽しい、独自の金田一になっている。
ちなみに、辰弥の下宿のおばさんを演じているのは横山通乃こと横山道代さんで、かつて東宝の青春映画などでコメディエンヌ的キャラで大活躍なさっていた方。
【以下、ストーリー】
1996年、フジテレビジョン+角川書店+東宝、横溝正史原作、大藪郁子脚本、市川崑監督作品
猟銃をぶっ放す男が、結婚式が行われていた民家に入り込み、その場に列席していた客や花嫁まで惨殺していく。(白黒画像に、血飛沫だけパートカラー)
父親らしき男が、祟りじゃ!八つ墓様の祟りじゃ!と叫ぶ。
タイトル(黒バックに緑色の文字)
神戸 昭和24年(液体が入ったガラス瓶が並ぶ背景にテロップ)
そのガラス瓶の一つを抱えて運ぶのは、「ヨツワ石鹸」の作業員の寺田辰弥(高橋和也)
そこに入ってきた車坂工場長(小林昭二)は、寺田君、今朝のラジオを聞かなかったかね?君の名前は確か、辰弥言うたな?といきなり話しかけてくる。
はあ…と辰弥が答えると、お父さんの名は虎蔵言うんとちゃうか?と車坂工場長が聞くので、そうですと辰弥が答えると、それじゃあ、やっぱりそうや!と車坂工場長は納得すると、ラジオで君のこと、探している人あるでと言うので、僕を?と辰弥が驚くと、相手の所、念の為、メモしておいたんやと車坂工場長は言いながら内ポケットから紙片を取り出すと、行ってみたらどうや?と手渡す。
「諏訪法律事務所」
それで、その寺田虎造という人ですがね~、それはあなたのジップでしたか?と辰弥が尋ねた諏訪弁護士(井川比佐志)が質問してきたので、本当の父ではありません、私は母の連れ後でしたと辰弥は答える。
その様子を脇の椅子に座って見つめていた老人は、辰弥を探していた井川丑松(織本順吉)だった。
なるほど、そのことをずっと昔から知ってましたか?と諏訪弁護士が聞くと、家、母の亡くなる前後だと思われますと辰弥が答えると、お母様はいつ?と諏訪が聞くと、私が7つの時でしたと辰弥が答えると、それを聞いた丑松は驚いたように辰弥の顔を見る。
21歳で兵隊に取られた?と諏訪が確認すると、ええと辰弥は答える。
養父の寺田さんは、空襲された時に爆死されていたんですね?と諏訪は資料を見ながら聞いてきたので、ええ、ひとりぼっちになりましたと辰弥が答えると、で、石鹸工場に勤められたのは?と諏訪が聞くと、友人の紹介ですと辰弥は正直に答える。
なるほど…、ところで寺田さん、ちょっと裸になってもらえませんか?と諏訪は手振りを交えて頼んでくる。
え!裸に?と辰弥が困惑すると、いやいや、もしあなたが我々が探している人物に間違いないとしたら、あなたの体には余人が真似ようにも真似られない目印があるはずなんです、お願いします!と諏訪は説明する。
ソファを立ち上がった辰弥が服を脱ぎ始めると、丑松も立ち上がり、諏訪も立ち上がる。
辰弥は白シャツを捲って、背中の火傷の痕を見せる。
それを見た諏訪は、ありがとう、さぞ嫌な思いだったでしょう、早く服を着てくださいと詫びる。
丑松のそばに寄った諏訪弁護士が、間違いなく辰弥さんですと伝えると、牛松が嬉しそうに頭を下げたので、こちらは井川丑松さん、あなたのお母さんの鶴子さんのお父さんですと紹介する。
母の!と辰弥が驚くと、丑松が頭を下げてくる。
あなたの本名は多治見、多治見辰弥というのが本当の名前なんですねと諏訪が教える。
おじいさんはその多治見家の依頼で、あなたが生まれた岡山県間宮郡の八つ墓村に帰ってもらうために迎えに来られたのにという諏訪の言葉を聞いた辰弥は、間近に近づいてきた丑松を前に、八つ墓村?と諏訪に聞き返す。
あれから26年経つ、鶴子と生写しじゃと丑松は辰弥の顔を側で見ながら言うと、会いたかったぞと手を伸ばしかけるが、次の瞬間、急に苦しみ出し、口から吐血してその場に昏倒したので、ああ、おじいさん!と呼びかけ、辰弥は助け起こそうとする。
諏訪も駆け寄り、丑松の脈を診ると、絶命している!と驚く。
その後、いやあ、君も僕もたびたび警察に呼び出されて参ったよね~、しかしその嫌疑も今日ですっかり晴れたわけだと、警察署から帰る諏訪は、同行した辰弥に話しかけ、この人のおかげなんだ、紹介しようと玄関先で言う。
八つ墓村から見えた森美也子さんだと諏訪は、目の前で待っていた女性(浅野ゆう子)を辰弥に紹介すしたので、互いに会釈し合う。
丑松さんの死因は毒薬によるもので、死亡する二、三時間前に飲んだことになる、もともと丑松さんには喘息の持病もあって、村の医者の処方による薬を常用していて、そのカプセル入りの一個に毒物が封じ込んであったんだと諏訪が説明すると、すると!と辰弥は驚き、そうだよ、犯人は遠く村にいるということになり、警察もその線で動き出すらしいと諏訪は答える。
ま、以上は美也子さんが係官に証言してくれたんでわかったんだが…と諏訪は苦笑する。
おじいさま、御気の毒でした…と美也子は頭を下げてくると、多治見家に頼まれてきましたと事情を打ち明け、八つ墓村に行ってくださいますわね?と辰弥に問いかける。
辰弥は一瞬躊躇しながらも、はいと返事する。
1人下宿先に帰ってきた辰弥は、2階の自室の机に誰かからの手紙が置いてあることに気づく。
「寺田辰弥殿」と書かれた封筒の裏には差出人の名はなかったので、階段のところから下に向かい、おばさん、この手紙どうしたの?と声をかけると、さっき、郵便受けを見たら入っていたがやとおばさん(横山通乃)が顔を出して答える。
首を傾げながら封を破って中の手紙を取り出すと、「八つ墓村に帰ってきてはならなぬ お前が帰ってきてもろくなことは起こらぬぞ おお血 血だ 弍10拾六年前の大惨事が繰り返され 八つ墓村は血の海と化すであろう」と不気味な文章が書かれてあった。
煙を吐いて走る蒸気機関車
岡山県 八つ墓村
峠から遠くの村を眺めながら、村に連れてきた美也子が八つ墓村ですと辰弥に教える。
急に身の回りに色々なことが起こって、辰弥さんもビックリなさったでしょうねと美也子は淡々と話し続ける。
丑松の遺骨を抱えた辰弥は、正直なところ、そうですと打ち明ける。
でも、良く来てくださったわと美也子は村を眺めながら感謝する。
僕は以前から母の生まれたところを一度見たいと思っていましたし…、天涯孤独だと信じ込んでいたら、僕と同じ地を引く人がいると聞いて会ってみたくなったのですと辰弥は答え、しかし…と口ごもったので、なんです?と美也子が聞いてくる。
僕を村に入れたくないと思っている人が…と、辰弥は、先日受け取った怪しい手紙を念頭に答える。
どうしてそんなことをお尋ねになるの?と美也子が聞くと、それが下宿…と言いかけて、いや、僕の思い過ごしですとだけ辰弥は答え、なんでもありませんとごまかす。
やはり気持ちが昂ってらっしゃるのね、心配事があったらなんでも私に相談してくださいねと美也子が言うので、はあと辰弥は安堵する。
この山と田畑の七割が多治見家の所有なの、莫大な資産だわ…と美也子は言う。
村でも一際大きな屋敷を見ながら、あれが多治見家ですと美也子は教える。
400年も前から村の長を務めていて、25代目の当主が多治見要蔵、この人があなたのお父さんに当たり、26年前に亡くなっていますと美也子は続ける。
その後を長男の久弥さん(岸部一徳)が継いだのですが、肺を患って長い間寝たきりなの…と美也子は教える。
だから大叔母に当たる小竹様と小梅様(岸田今日子-二役)が多治見家を取り仕切っておられるというわけ、お二人は一卵性の双子で、いかず後家で、久弥さんの妹の春代さん(萬田久子)はあなたの腹違いの姐さんね、一度結婚したけれど、なぜか戻ってきているのと美也子は続ける。
要蔵さんの弟の要二さんは里村家の養子になり、その遺児が慎太郎さん(宅麻伸)、里子さん(喜多嶋舞)兄妹です、慎太郎さんは海軍の士官でしたと美也子は言う。
村でただ一人の久野さん(神山繁)は要蔵さんの下の弟で、洪禅さん(石橋蓮司)は麻呂寺の住職ですと京都は言う。
その多治見家のゆかりの者たちが集まっていた久弥が寝ている部屋に女中のお島(大沢さやか)がまかり出て、森家の美也子様がお着きになりましたと伝える。
徹夜を従え、部屋にやってきた美也子は、座布団に座ると、遅くなりましたと挨拶する。
辰弥も黙って丑松の遺骨を置くと、自分も隣の座布団に腰を下ろす。
警察の取り調べなどがありましたので…と美也子が説明すると、ご苦労じゃったよなと小梅が声をかけてくる。
あの方があなたの大叔母様に当たられる小梅様と、その隣のおられるのが小竹様と美也子が横の辰弥に教える。
しかし、美也さん、違いますよ、私が小竹で、隣にいるのが小梅さんですと小竹自身が訂正したので、あら、ごめんなさい!私もいつも間違えてしまうのと隣にいた辰弥に笑いながら伝え、叔母様、こちらがお待ちかねの辰弥さんと紹介する。
その場にいた全員が緊張した辰弥を見つめる。
小竹さんやと向かって右側に座った小梅が言うと、はい、小梅さん、なんでございます?と小竹が聞くと、血は争えんもんじゃなあと辰弥を見ながら小梅は言うので、ほんまじゃなあ~、目元口元、あの自分の鶴子にそっくりじゃな~と小竹も同意すると、辰弥、よう帰って来られた、ここがお前の生まれた家じゃえと声をかける。
そして小竹は、久弥、あれがお前の弟じゃ、立派になったもんじゃろうが…と寝込んでいた久弥に声をかける。
その言葉で辰弥の方を見た久弥は、ほんになあ~、多治見の血筋にこんなええ男振りが生まれたとは珍しい…と少し、状態を浮かせながら言うと、辰弥、お前もせいぜいみんなに昵懇にしてもらいやと声をかける。
そしてな、よう気をつけて…、多治見家の財産、人に取られんようにせなあかんぜと忠告する。
どこかで、おおあて違いをしている奴があるやろうが、ええ気味じゃと久弥が苦笑しながら言うと、見舞いに来ていた久野などは顔色を変える。
笑い出そうとした久弥は急に咳き込み出し苦しんだので、そばにいた小竹が春代に手で合図をし、小梅が立ち上がって、ほら、薬じゃぞと、久弥の寝床の横にあった引き出し小箱を開けると、紙に包んだ薬を取り出し、それを久弥に飲ませる。
辰弥、今日は疲れとるじゃろうから、部屋に行って休みなされ、お前が生まれた離れじゃ、26年前のあのとこ木にままにしてある…と小竹が声をかけ、春代、早う案内せんかいなと叱る。
辰弥を連れて離れに案内した春代だったが、その赤い扉には春代が鍵で開ける南京錠がかけられていたので、それに気づいた辰弥は困惑する。
鴨居には「鬼手佛心」と書かれた掛け軸がかかり、古びた屏風が置いてあり、壁には般若と女面の麺が飾られていた。
辰弥に向き直った春代は、改めてご挨拶します、春代ですと名乗ったので、辰弥も、辰弥ですと笑顔で答え、こんな大きな部屋を僕一人にですか?と尋ねる。
そんな辰弥の手から、丑松の遺骨を受け取った春代は、この家では二人の叔母の決めたことは絶対守らなければいけませんのよ、あなたを探させたのも叔母ですと教える。
どうして急に僕を?と辰弥が聞くと、兄があんな具合やし、私も心臓が悪うて、ここままでは多治見の嫡流は絶えてしまいますやろ?と言いながら、春代は襖を開けていく。
だから小さい時にお母さんと共に行方不明になったあなたを見つけ出して、家を継がせようと叔母が…と春代は続ける。
その時、辰弥は雨戸のとい部分に謎の穴を見つけ不思議がっていると、庭先に人影を感じ驚く。
そこに現れたのは異形の濃茶の尼 (白石加代子)だった。
辰弥を見つけた濃茶の尼は、帰れ~!きてはならんぞ!と叫んできたので、どこから入ってきたの?出て行きさい!と春代が叱ると、お前が来るとまた村は血で汚れる、村の者も言うとるぞと言うので、濃茶の尼言うのよ、ちょっと気が変なの、気にせん方が良いわと春代は辰弥の肩を抱いて忠告するが、八つ墓明神様がお怒りじゃ、お前はお前の爺の丑松を…、なんで死んだか知ってるのか!それが一番目の生贄じゃぞ、それから二つ、三つ、四つ、五つ…、今に八人の死人が出る!己、己帰れ!と言いながら座敷に上がり込んだ濃茶の尼が辰弥に掴みかかろうとしたので、おやめなさいと春代が間に入ろうとするが、跳ね飛ばされたので、組み付かれた辰弥は、やめろ!と言いながら濃茶の尼を庭先に突き飛ばす。
起き上がった濃茶の尼は、わしを殺すのか?この人殺し!と睨みつけてくる。
そんな八つ墓村に霧の濃い早朝、長いマントを着た長身の男がカバンを片手にやってくる。
金田一耕助(豊川悦司)だった。
そんな金田一の前に棒を持った男が片足を引き摺りながら立ち塞がると、どこから来た?と睨みつけてくる。
意味がわからず金田一が困惑すると、よそもんが来ると碌なことが起こらんのじゃ!帰れ!と男が言うので、金田一は苦笑しながら、困ったな~と言いながら周囲を見渡し、用事があってこの村に来たんですけど?と返事するが、出ていかんと叩きのめすぞ!と脅しながら棒を振り上げたので、金田一は思わずバッグを盾に身を防ごうとするが、その時、吉藏!乱暴はいけんよと女の声が聞こえる。
吉蔵(川崎博司)と呼ばれた男が振り向くと、畑にいた女性に気づき、典子さんか…と態度を和らげる。
朝からお酒飲んどるのね、早う帰って牛の面倒見てやらんとと、吉蔵に近づいてきた典子は叱るので、牛がどうかしたか?と吉藏が聞くと、えろう鳴いとったと典子は教える。
そりゃ大変じゃというと、吉藏はその場から走り去る。
いやあ助かりましたと言いながら、おかま帽を脱いで金田一が礼を言うと、嘘や!と紀子が即答したので、え?と金田一は戸惑う。
今朝、村に着きなさったんで?と典子が聞くので、ええ、神戸を夜行列車で発ち、岡山まで伯備線に乗り換えたんですが、これが途中止まりで、仕方がないので、駅の待合所で一眠りして、米子行きの始発に乗って新見町に着き、そこからバスで1時間!やっと辿り着いたんです、ところで宿はありませんかね?と金田一が聞くと、あります、一軒だけと紀子が言うので、ああ、それは良かった、教えてくださいと金田一が安堵して聞くと、郵便局ですけんどと典子が言うので、え?と金田一は聞き返す。
多治見家では、女中のお島が、朝ごはんお持ちしましたと言いながら、久弥の部屋に来るが、ひさやが血反吐を吐いて事切れているのに気づき、腰を抜かす。
うつ伏せに倒れた久弥の頭の近くには「八つ墓明神祈祷神璽」と書かれたお札が落ちていた。
駐在所の電話が鳴り出し、はい、駐在所と受話器を取って答えた寝起きの千石巡査(うじきつよし)だったが、え?多治見家?さ、殺人!と驚愕する。
その頃、旅館も兼ねている「八つ墓村郵便局」に男の子(鈴木隼人)が一人来て、つかあさい1と声をかける。
誰も出てこないので、もう一度、つかあさい!と少年は店の奥に声をかけると、金田一が部屋から顔を出し、なんだい?坊やと言いながら近づくと、ハガキ2枚!と言うので、ああ、ハガキ!ちょっと待ってよと言いながら、金田一は郵便局用の部屋の中を、どこにあるのかな~?と呟きながら探し始める。
少年がそんな金田一をじっと見つめていたので、奥さん!奥さん、お客さんですよ!ハガキを二枚だそうですよと金田一は奥に声をかける。
慌てて出てきたひで(吉田日出子)が、すみません、洗濯しとったもんやからと言いながら店に出てきて、引き出しを開けたので、ああ、そんなところに!と金田一は驚く。
ハガキを少年に渡しながら、2枚で4円とひでが言うと、少年がちょうど差し出したので、おおきにと奥さんは笑顔で礼を言う。
帰ってゆく少年を笑顔で見送った金田一が、宿屋をしたり郵便局をしたりじゃ大変ですよねと語りかけると、ああ、郵便局というたらお上の許可を得んと出来んことですから、そらあ名誉なことですけんど、葉書や切手の売り上げの手数料は大したことないし、局長の給料も雀の涙みたいなもので…とひでが言うので、局長というのは誰です?と金田一が聞くと、私ですがなとひでは憮然とした顔で答える。
互いに顔を見合わせ、思わず笑ってしまった金田一は、じゃあ、ご主人は?と聞くと、山守が本職ですとひでは教える。
山守に頼まれて山の管理や出荷の采配をしとりまして、今朝もはようから出かけましたとひでは言うので、じゃあ、宿の方も奥さんが一人で…と金田一が同情すると、そうですがなとひでは答える。
子供はおらんし、部屋も二つも空いてることやし、そんなら貸そうかってことになって…、あっ、そうや!お客さん、外食券持ってます?とひでが言い出したので、あ、配給のお米を少々…と金田一が答えると、いつまで滞在です?とひでは確認する。
さあ?それが…、どうなるのかな?と言いながら金田一が髪をかき始め、フケが机に降り注いだので、ひでは思わず身を引く。
そこに亭主の徳之助(石倉三郎)が一人駆けつけてきて、大変だ!えらいこっちゃ!えらいこっちゃ!多治見の久弥さんが死にはった!とひでに伝えたので、肺病やったからな~、気の毒にな~とひでは応対するが、違う!毒殺や!と男は言うので、ひでもええ!と驚くが、そばで聞いていた金田一も驚き、多治見家で!と聞くので、ああ、大騒ぎじゃ、警察が来てるしな…と男は、見知らぬ相手に戸惑いながらも教える。
あの~、多治見家ってどの辺ですか?と金田一が聞くと、この道を東へまっすぐ行くと四つ辻がある、その四つ辻をやな、北へ曲がったら石の地蔵さんがあるから…と男が説明い終わらぬうちに、金田一は郵便局を飛び出してゆく。
誰やあれ?と男が聞くと、さっき着いたばっかりのお客さんやとひでは教える。
なんていう人や?と男が聞くと、あ、忘れとった、名前と職業、宿帳に書いてもらうの!とひでは思い出す。
それで…と、死体の第一発見者はお前だな?と多治見家に来ていた等々力警部は(加藤武)は女中のお島に聞く。
ええ…と女中が答えると、名前は?と等々力が聞いたので、お島と答える。
その時は既に死亡しておったんやから、薬はその前に飲んだことがある…と等々力は、小竹、小梅、春代や典子や辰弥がいる部屋の中でつぶやく。
いつも薬は誰が飲ましとったんや?と聞くと、色々やが…と小竹が呟いたので、等々力はえっ!と驚き、今、どっちのご隠居がいったのかね?と二人の老婆を見比べながら聞き返す。
薬は時間を決めて飲ませるようにしていました、不意に咳き込む時は別ですが…と春代が代わって答える。
ということは、朝苦しくなったので、1人で?と等々力が仮説を述べると、…だと思いますと春代は答える。
う~んと考え込んだ等々力は、次に、久野さんだったね?と医者の久野に話を振る。
被害者が飲んだ粉薬が少し残っている、分析すればこれが劇薬だということはすぐに判明すると思うが、主治医のあんたが調合したんですな?と等々力は確認する。
私が盛ったとでもいうんですか?と久野のは等々力と目も合わせず答える。
あんたね、目下検察中の神戸における井川丑松の変死も、あんたの薬と検討がついとるんだよと等々力が指摘すると、何遍も言うが誰かが毒とすり替えたんじゃ、わしを陥れようとしとるんじゃよ!と久野はキレ気味に主張する。
おい坂東、薬袋が後いくつ残ってる?と等々力が部下の刑事に聞くと、7つありますねと坂東(永妻晃)が答えたのでてるみ、合計8つあった1つに毒が入っていたわけか…と等々力が一人合点すると、等々力警部殿、あの、金田一さんと言う方が見えとられるんですが?と駐在の千石が知らせにくる。
金田一?と等々力が不思議がると、探偵さんや言うとられますけど…と千石は補足する。
探偵?と等々力が困惑しているとき、和服姿の金田一が入ってきたので、何だね君は?と等々力は詰問する。
あの~、神戸の弁護士さんの依頼でこの村に来たものなんですが、殺人だと聞きまして驚いて…と金田一が説明すると、驚くのは勝手だが、関係者以外は無闇に立ち入らないでほしいなと等々力は注意し、君!そういってあっただろうと千石にも文句を言う。
は!すみません!と千石が詫びると、金田一も一緒に頭を下げ、軽率だよ、こっちは忙しいんだと等々力は呆れたように言い、君が神戸から来たと言う…と辰弥に話しかけたので、辰弥ですと答える。
昨夜はどこにも出かけなかったね?と等々力が確認すると、ええと言うので、捜査が終わるまで絶対この村を離れんようにと注意する。
一方、金田一は、久弥の部屋の検死の様子を覗き込んでいたが、そこにいた典子と目があい、紀子が笑って会釈してきたので、金田一もつい会釈を返してしまう。
君は?とそんな典子に等々力が聞いたので、里村典子ですと答え、私のいとこです、この2階の納戸で、兄さんの慎太郎さんと住んでますと春代が背後から捕捉してくる。
それを聞いて、まだいたのか、その慎太郎を呼んで来なさいと等々力は春代に命じる。
すると警部の背後にいた典子が、今いませんと答えたので、等々力は驚いて振り返る。
いない?と等々力が確認すると、朝早く畑仕事に出かけ、私も一緒でしたが先に帰ってきたんですと典子は言う。
その男も重要参考人だ、後で駐在所に出頭するように!と等々力は典子に命じると、坂東、遺体の解剖を急ぐ、その手配だと言いながら部屋を退去しようとしたので、死体のそばにあったこれ、どうしましょうと坂東がお札を持って聞いてきたので、なんだ?これと等々力は戸惑う。
それを見た千石が、あ、八つ墓明神の護符ですな、古いもんですよと指摘し、余計なことですが、被害者の背禍には八の字が見えております、この護符と言い八の字と言い、何かこう、八つ墓の祟り…とと千石が主張しかけたので、余計なことだよ、鑑識に回しとけと言い残し、等々力は帰ろうとする。
その時、警部さん!と呼び止めた辰弥が、おじいさんの、いや井川丑松の事件の真相はまだわかっていないのですか?と聞くと、警察も忙しいんだ、まあその内おいおいとわかるさと苛立たしそうに等々力は答え、そそくさと帰ってしまう。
その後ろ姿を見送っていた辰弥に、あの~、辰弥さんでしたよね?と金田一が話しかけてくる。
ええと辰弥が答えると、あの~、僕、金田一耕助と申しますと自己紹介し、実はその~と周囲を気遣いながら、諏訪さんから頼まれてきたんですと明かす。
あの弁護士さんに?と辰弥が気づくと、はい、あの~、諏訪さんはね、今度の尋人の一件が、何かその表面に現れている意味だけではなく、その裏に我々の思いもよらぬ深い事情が隠されているんじゃないかと言うんです、そこで僕に言って来てくれと言うことになったんですが、どうですか辰弥さん、この村に来て何かそんなことを感じられませんでしたか?と金田一は聞く。
そういえば…と辰弥が思い出すと、ああ、もう何かあったんですか?と金田一は興味を持ってくる。
ええ、ちょっとと辰弥が言うと、ああ、僕もね、村に入った途端殴られそうになりましてね~、それが最初に受けた歓迎でしたと金田一は笑いながら打ち明ける。
その後、一人で、大きめの石を砕く作業をしていた慎太郎の元に美也子がやって来て、お百姓さんより早く野良にでてらっしゃると話しかける。
耕しても耕しても石灰岩ばかりですと慎太郎は諦めたように答える。
この村って大きな鍾乳洞があるくらいだから、農業には不向きなんじゃありません?そんな土地の地主だったあなたの里村家は戦後の農地改革やいろんなことで田畑を失われてしまったんでしょう?それに比べ、多くの山林を持つ本家の多治見家は栄えるばかり…と美也子が指摘する。
戦争が終わったからこそ、家の財産よりも実力が頼りだと思っておりますと慎太郎は答える。
自分はこの手で運命を作り出す、こんな石灰岩でも努力次第では生産的なものに変わると慎太郎が話すと、その計画は進んでいらっしゃるの?と美也子は興味を持ってくる。
いや、戦友に手紙を出して、融資を頼んだりしてるんですが、なかなか…と慎太郎はため息をつく。
そこに駆けつけてきた典子が、兄さん、久弥さんが飲んどった薬に毒が入っとたんや、苦しんで、血を吐いて…と言うので、死んだのか?と慎太郎が聞き返すと、典子は警察が来て…とと続ける。
その頃多治見家の離れに戻っていた辰弥は、神戸の下宿で受け取った不気味な手紙を開いていた。
26年前の大惨事…と辰弥は読み返す。
そのびの機、庭の砂利を踏む足音が聞こえたので、そっと雨戸を開け庭をのぞいてみると、提灯を持った小竹と小梅が暗闇の中を歩いてくるところだった。
2人は蔵の中に入ったので、辰弥は怪しむ。
翌日、外で作業していた美也子に、あの~、ちょっとお尋ねしますがと声がかかったので、振り向くと、そこに立っていた金田一が、あ、すみません、驚かせてと金田一は詫び、この向こうに防空壕のような穴がありましたが、あれは?と聞くと、ああ、あれは鍾乳洞の入り口ですと京都は答える。
ああ、そんなもんがあるんですかと金田一は驚く。
この辺は石灰岩の地層が多いカルスト大地なんで、地下は鍾乳洞になっているんですと美也子が説明すると、そうなんですかと金田一は感心する。
でも天井が低いせいもあって落盤の恐れがあるんで、入っちゃいけないことになっていますよと美也子が忠告すると、そうですか…と苦笑した金田一は、美也子の作業を見つめ、芋掘りですか?と尋ねる。
いいえ、草の根を探しているんですと都が教えると、草の根?と金田一が不思議がったので、1人で?とええ、あかねっていう草の根、私草木染めやってるんです、その染料になる植物探しているんですと美也子は言う。
金田一が美也子の手から根を奪いとると、あ!と美也子は驚くが、面白そうですね、お手伝いしましょうか?と金田一は申し出る。
その頃、辰弥は一人で村の中を散策していたが、周囲の家々から彼のことを除く村人の顔が気になり出す。
金田一が、ああ辰弥さんだと気づいたので、美也子も思わず立ち上がる。
お知り合いですか?と聞くと、ええ、まあと金田一は答え、辰弥はこんにちはと声をかけて美也子に近づいてくる。
麦わら帽をぬいだ美也子は、辰弥さん、このかたは?と金田一のことを聞いたので、紹介しましょう、こちら金田一耕助さん、神戸の諏訪弁護士さんの依頼で来られた探偵さんですと言い、こちら森美也子さんと紹介すると、あなたが!金田一ですと金田一はおかま帽を脱いで挨拶する。
美也子ですと返した美也子が、そうですか、諏訪さんのお知り合い?と聞くと、いや、職業柄、二、三の事件をご一緒しただけで、特に親しいというわけではないんですと金田一は言い訳する。
辰弥さん、あまり一人で出歩かない方が良いんじゃないの?どこへ?と美也子が案じながら行先を尋ねたので、ええ、八つ墓明神のことが気になって…、一度見ておこうと思ったものですからと辰弥は教える。
それを聞いていた金田一は、ああ、僕もそうだったんですよと金田一も言うので、この向こうの丘でしょう?と辰弥が確認すると、ええ、」でも明神と言ってもお社がないのよと美也子は答える。
え、どうして?と金田一が聞くと、数十年前に落雷で焼けてしまったのと美也子は言う。
村の人たちは、これも尼子の落武者の怨念のなす技だと騒いだそうですと美也子が言うので、その尼子の落武者というのは?と金田一が聞くと、この村に遠い昔から話し継がれてきた話ですと美也子が言うので、ぜひ聞かせていただけませんかと金田一は頼み込む。
詳しくはないんですけど…と断った美也子は、昔と言っても、今から400年ほど前の戦国時代、毛利元就と戦って敗れた雲州の豪族尼子義久の一族の八人がこの村に落ち延びて来たそうですと話し出す。
村人たちは哀れに思って八人を匿い、炭焼きなどを教えてしばらくは仲良くやっていたらしいんです、ところが毛利型の詮議が厳しくなって、落武者を匿うと命を取る、殺せば莫大な恩賞を出すと言うおふれが回って来たのですと話しながら、美也子は辰弥と金田一を伴い、八つ墓明神へ向かう丘を登り始める。
困った村人たちは相談した結果、お金にも目が眩んだんでしょう、八人を騙し討ちにしたんですと美也子は続ける。
(回想)雨の降りしきる森の中、めいめい狐と鬼の面を被った村人が落武者が暮らす小屋の前に集結する。
行け!と号令がかかり、小屋の中に村人が乱入すると、村の衆、何をする!と落武者の声が聞こえ、小屋から逃げ出した落武者も、反対側に待ち受けていた狐の面を被った村人が襲いかかる。
襲撃された落武者は、ずぶ濡れになりながら、何事だ!と叫んで抵抗するが、多勢に無勢、勝つ見込みはなかった。
邪魔するか?卑怯者!などと罵倒する落武者もいたが、農具などで次々に惨殺されていく。
槍で串刺しにされた若い落武者(今井雅之)は、祟ってやる!七生までこの村を祟ってやる!と叫ぶが、その目の前にいた庄左衛門(岸部一徳-三役)は、祟れるものなら祟ってみろと言い返し、鎌で落武者の首を切り落とす。
その後、最後の若い武将の言った通り、村では次々に怪異なことが起こったのですと美也子は言う。
尼子の祟りを恐れ慄いた村人たちは、犬猫同様に埋めていた八人の死体をあらためて丁重に埋葬し、そこに八つのお墓を建て、明神として崇め奉ることにしたんですと言いながら、美也子は初墓明神の墓のところに金田一と辰弥を連れてくると、ここがそうです、荒れ放題ですけどねと二人に伝える。
その墓を見ながら金田一が怖い話ですね~と呟くと、この村の名もこの明神の名前に由来しているそうなんですと美也子が捕捉する。
八つ墓明神の祟りか…と辰弥が呟くと、何かあったの?辰弥さんと美也子が聞くので、僕がこの村に着いた日、濃茶と言う尼さんが僕に帰れと言って挑みかかって来たのです、お前が来ると明神様がお怒りになるからって…と辰弥が説明すると、その濃茶の尼って言うのは何者ですか?と墓を眺めていた金田一が美也子に聞いてくる。
何かのことがあって、主人と子供をいっぺんに亡くされて、尼さんになったと言う話ですと美也子は説明すると、辰弥さん、気にしない方が良いわ、あの人少しおかしいんだから…と忠告するが、しかしあの人の言うとおりになってしまったと辰弥が言うので、久弥さんが亡くなったこと?と美也子が聞くと、ええ、祖父の死もそうです、2人の事件とも僕を中心に起こったような気がするんですと辰弥は答える。
ということは、今後も何か起こるって?と美也子が問いかけると、あの人、8人までは死ぬって…と辰弥は教える。
それを聞いた美也子は金田一の顔を一瞬見つめ、急に笑い出す。
大丈夫よ、金田一さんという名探偵が来てくださったんですもの、そんなことにはならないわよ…と美也子は皮肉を言うが、その時、八つ墓の一つが崩れたので、金田一は仰天して飛び上がる。
怪訝そうに見つめる美也子に気づいた金田一は恥ずかしそうに笑いながら頭を書く。
夜、多治見家では、久弥の初七日の席が設けられ、多数の縁者が出席していた。
今夜は兄の初七日においでいただき、ありがとうございますと客を前に、春代が挨拶していた。
慎太郎も出席していたが、美也子の思い詰めたような視線を感じ目を逸らす。
春代は台所で忙しく料理の準備をしている加勢の主婦たちにも礼を言う。
座敷では、美也子は辰弥を伴って、客の1人森壮吉(石濱朗)の前に来ると、亡くなった夫の兄です、こちらは辰弥さんと紹介していた。
おお、立派な青年じゃのう、これで小梅さん、小竹さんも安心じゃろうと壮吉は辰弥を見て感心する。
久弥は長いことなかろうと思うとったが、こんなことになるとはな~、かわいそうなことしたの~と言いながら、小梅は手に持った腕を隣の小竹に渡す。
警察がしっかり犯人を探してくれるけん、あまり気を病まんようにすることだなと洪禅和尚が言葉をかけてくる。
かわいそうなのはわしの方だ、多治見家の財産を狙うて、久弥を殺したんだろうと警察に疑われ、村中で噂され、道もまともに歩かれん始末だと久野がこぼす。
一方美也子は、慎太郎さん、改めて御紹介します、辰弥さんですと紹介したので、慎太郎もよろしくと頭を下げ、この家の二階に妹と二人で厄介になっていますと自己紹介したので、まあ、厄介だなんて…と美也子は口を挟む。
海軍だと聞きましたが?と辰弥が尋ねると、ええと言うので、僕も兵隊に取られて3年間南方に行っていました、軍艦に乗っていられたんですか?と辰弥が聞くと、ええ、しかし最後には乗る船もなくなってしまって、生きて帰られたのが不思議ですと慎太郎は言う。
同じ座敷内で、郵便局の徳之助に杓をしていた典子は、おじさん、私が郵便局に紹介した人、探偵さんなんですってね?と聞くので、ああ、らしいんじゃけどな、あんなぼさっとした探偵に事件を頼む人がおるんかな~と徳之助は答える。
人は見かけによらんけん…と典子が言うと、いやいや見た目通りじゃと徳之助は答える。
噂をすればなんとやらで、その金田一が勝手口から多治見家の台所に入って来たので、手伝いに来ていた郵便局のひでが、あら、金田一さん!と気づいて声をかける。
ああとひでに気づいた金田一はコートを脱ぎながら、お参りに寄せてもらいましたという。
そうですかとひでが喜ぶと、台所で飲んでいた吉蔵が立ち上がり、あ、よそ者が来やがった!入れさせん!と言い出したので、何を言うんや、うちのお客さんや!お前らに文句言われることはないけんな!とヒデが金田一を庇って言い返す。
そこに辰弥もやって来て、僕がお招きしたんですと吉藏に説明する。
ああ、あんたさんがとひでも安堵し、ええ、金田一さんどうぞと辰弥が奥に手招いたので、吉蔵は、わしはな、だいたいあの辰弥という若造が気に入らんのじゃと悪態をつきながら座り込む。
あいつが村に来ることになってから、変なことが起こったんやという吉藏に、あの人は多治見家の大事な後継やそうやないか、そんなこと言うてええんか?とひでが言い返すと、なんぼでも言うてやる、濃茶の尼もあいつに殺されそうになったと聞いたぞ、なあ?勘治とそばにいた仲間の勘治(宇治川理斉)に同意を求める。
ああ、わしも聞いた、この26年間、村には何事もなかったんやからな!なあ、周平と勘治も仲間に同意を求める。
そうじゃ、よそもんはみんな出ていってもらおうやないかと、博労仲間の周平(保木本竜也)も言い返してくる。
徳之助の隣に座った金田一に、探偵さん、今までどんな事件を解決されたんですかと、お銚子を持った典子が無邪気に聞くと、いやあ、大したことやってないんですよと金田一が頭をかきながら謙遜したので、どちらにお住まいですかと徳之助が尋ねると、僕ですか?困ったな~、決まってないんですと金田一が典子から酌をしてもらいながら答えると、自分の家がないんかいな!と徳之助が驚く。
ええ、まあ、風まかせ…ですか…と金田一も笑ってごまかす。
風まかせ?はあ~、羨ましいな~と徳之助が呆れていると、何やら耳打ちした小竹と小梅が席を立つ。
それに気づいた辰弥」が見守っていると、二人はそっと座敷を抜け出していく。
一方、台所にいたひでは、勝手口から入ってきた人物に気づき、濃茶の尼さんか、もう法事は終わったよと出迎えるが、尼は無言のままなので、ご馳走のおこぼれか?とひでは笑って聞く。
すると尼は、用事があるから来たんじゃと答える。
ひでは座敷にいた美也子を手招きし、近づいた美也子に何事かを耳打ちする。
無表情のまま京都が台所へ向くと、すれ違った春代と座敷にいた金田一がそれに気づく。
かって口の前で待っていた濃茶の尼が手招くので、美也子が吸い寄せられるように近づき、二人が台所の隅によると、美也子が財布から金を出して濃茶の尼に渡しているのを春代は横目で見てしまう。
濃茶の尼は受け取るとそそくさと帰ってしまったので、何かあったんですか?とひでが聞くと、今夜招かれなかったことに難癖つけに来たんです、小竹様と小梅様が取り仕切ってるんだろうから会わせろって、と美也子は苦笑混じりに言うので、ひでは、まあ、厚かましい!と呆れ、勝手口を占めると、でももう大丈夫、お金を渡したら、納得して帰りましたからと美也子は説明する。
座敷では酔った久野が、叔母2人が多治見家の実権を握っているんだから何しようとしかたがないが、相続のことだけは相談してくれてもよかったはずじゃと管を巻いていた。
そんなこと言うとるから邪魔なんやと洪禅和尚が叱ると、血縁者が怪しいと言うならな、里村の慎太郎だってそうじゃと言いながら、久野は慎太郎のそばに座り込むと、我々凡愚は誰しも金が欲しいと思っとる、撮り済ました顔をして、一皮剥けばみんな狙っとるに決まっとるんじゃい!と慎太郎を侮辱する。
久野おじさん、今夜はそんな話はやめてください、ヒカキ兄さんの供養になりませんけんな!とやってきた春代が、久野の手から盃を取り上げて注意する。
慎太郎が席を立って座敷から出ると、おい、まだ話は終わっとらんぞと言いながら、起き上がった久野も後を追おうとする。
濃茶の尼は、自分の庵に帰ると、たくさんの蝋燭に火を灯していた。
尼の部屋には、どこから持ってきたのかわからない雑多なものが置かれていた。
尼はその中から、「劇薬に付き注意」と書かれたラベルの貼られたガラス瓶を取ると、その中に、今し方美也子からもらった札束を嬉しそうに仕舞い込む。
そんな濃茶の尼の部屋に忍び込んだ黒い影は、いきなり尼の首に紐を巻きつけ、軍手をした両手で締め付ける。
尼は血を吐いて絶命する。
その横に、軍手をつけた手が鎌を置いていく。
多治見家の台所では、客が全員帰った後、女中が一人で食事をしていたが、離れに戻っていた辰弥は、向かいの蔵から出てくる小竹と小梅の二人の様子を、雨戸の隙間からそっと観察していた。
辰弥はすぐさまバッグから懐中電灯を取り出すと、点くかな?とスイッチを入れてみて、光ったのを確認すると、二人の叔母が立ち去った後の蔵に入ってみることにする。
雨戸を開いて、靴を用意し、庭を駆け足で横切ると、重い蔵の扉を開けてみることにする。
蔵の中を懐中電灯で照らして様子を見ると、布切れが挟まった状態の大きな箱があったので、蓋を開けてみると、底には綺麗な模様入りの反物が置かれていた。
しかし、その箱の底の隅に穴が空いていることに気づいた辰弥は、反物を片方に寄せ、箱の底を確認すると、床下に続く階段があったので、階段だ!と驚く。
辰弥は思い切って箱の中に入り、蓋を自分で閉めて階段を降り始める。
地下は鍾乳洞に続く穴だった。
奥へ進んでみると、岩の上に安置した鎧姿の武者を発見したので、辰弥は肝を潰す。
恐怖に駆られ、その場から逃げ出そうとした辰弥だったが、途中で戻り道を見失い、走り回っているうちに、風が吹いてくる箇所を見つける。
外に通じていると直感し、そこから飛び出した辰弥は、「落石の危険あり 立ち入り禁止 八つ墓村村役場」の立て札が立った箇所に出他ので、こんなところに抜けられるのか…と驚く。
夜風に身震いし、夜道を駆け足で帰ろうとした辰弥だったが、濃茶の尼の寺の外に立っている人影に気づき、慎太郎さんだとつぶやく。
その慎太郎が自分に近づいてきたので、慌てて近くの草むらに見を潜めた辰弥は、コートの襟で顔を半分隠し、険しい表情の慎太郎が通り過ぎていくのを見る。
気になった辰弥は、まだ室内灯が点いていた濃茶の尼の家を覗いて見ることにする。
窓から部屋の中を覗き込んだ辰弥は、そこで事きれていた濃茶の尼の遺体を発見し、ああ!と驚く。
翌朝、金田一は畦道を疾走していた。
事件現場に坂東刑事と共に来ていた等々力警部は、事件発見者である辰弥を前に、ここが濃茶の尼の庵と知っておったのかね?と尋問していた。
その場には美也子と春代も同席していた。
知りませんでしたと辰弥が答えると、じゃあ、どうして真夜中にここへ来たのかね?と等々力が追及したので、偶然ですと辰弥が言うと、偶然って、君ね、君は濃茶の尼に恨みがあったんだろう?突き飛ばして殺そうとしたことは、村のものの証言でわかっているんだよと等々力は指摘する。
それは違いますと春代が横から口を出し、あれは濃茶の尼の方で辰弥さんにつかみかかってきたんです、私がその場にいたんですから間違いありませんと証言するが、アン公認はちょっと黙っとってくださいと等々力は諌める。
そこに駆けつけてきたのが金田一で、その場で立番をしていた千石巡査を押し退けて、第三の殺人ですか?と問いかけたので、聞かれた等々力は、何だ、また来たのか!と呆れたように言う。
千石が、知らせたのは自分ではありませんと言い訳すると、いやいや、辰弥君から電話をもらったもんですからと、金田一は千石を庇って教える。
辰弥も胸を張って、金田一さんにも知らせておこうと思ってと言うので、困るな~、重要容疑者がむやみに電話をかけたりしたらと等々力は苦言を呈する。
ちょっと失礼と春代を避けた等々力は、辰弥に近づき、改めて聞くがね、その時間にこの付近で誰かを見かけなかったかね?と聞く。
いいえと辰弥が答えると、本当かね?と等々力が念を押したので、ええと辰弥は答えるが、その隙に金田一は部屋に上がり込み、濃茶の尼の部屋に集められた収集品を観察する。
おい坂東、調べは終わったのか?と等々力が聞き、坂東がええと生返事すると、森美也子さんでしたね?と確認する。
はいと美也子が答えると、お呼びしたのは他でもないんですが、あなた昨夜、被害者にお金を渡したそうですな?と等々力が聞くと、はいと言うので、理由を話してもらえますかと等々力は頼む。
初七日のことで難癖をつけに来たもんですからお金をあげたんです、それだけですと美也子は即答する。
すると等々力は、つまり最後に話をしたのはあなたですな?と確認する。
そんなふうに決めつけられると困りますわ、私の後にも誰かに会っていたかもしれませんでしょう?と美弥子は反論する。
このガラクタ、これ何ですか?種々雑多ですねと金田一が聞くと、一緒に見ていた千石が、これはですね、濃茶の尼は妙な盗癖を持っとりまして、大それた盗みをするわけではないんですが、お賽銭箱からお賽銭をくすねたり、お墓の供米を盗んだり、まあ、人の洗濯物なんかも平気で持ってったりするんですな、村の連中もよう知っとりますと教える。
その時金田一が、親?鎌がありますね…と気づいたので、ええ!死体のそばに今度は鎌?と千石も驚く。
まるで三日月のように見えますねと金田一が鎌の刃の部分を見て指摘する。
三日月といえば尼子の紋章ですなと言いながら、千石は等々力の様子をうかがい、等々力警部殿、久弥さんの枕元にあった八つ墓明神の護符といい、あの鎌といい、今回の事件はやっぱり尼子の祟りじゃないんでしょうかと進言すると、まだ、そんなくだらんことを言っとるのかと等々力は吐き捨て、おい板東、鑑識はまだかと催促する。
板東は、はあと答え、それより警部、この瓶に「劇薬に付き取扱注意」と書いてあります、中にお金がぎっしり詰まっていますと言いながらガラス瓶を抱えてくる。
これは薬瓶だな~と等々力が指摘すると、これは何でしょう?と板東は天秤計りのようなものを差し出す。
等々力がそれを手に取ると、粉薬を測る軽量器ですよ、病院で使うとると脇から仙石が教える。
それを聞いた等々力警部は、そうか…、分かった!と手を打ち、犯人はやはり医者の久野だ!と断言する。
二つの毒殺事件の証拠をこの尼に捕まれて脅かされていた!それで首を絞めた!と等々力は断定する。
壁にかかった5分類を調べていた金田一は、おりから吹いた風で煽れらた掛け軸を見つけ、何かを直感する。
階段を登る男の足と多治見家の二階で典子が琴を奏でる様子が重なる。
似合の扉が開いたのに気づいた典子は手を止め警戒するが、なんや、辰弥さんかと拍子抜けしたように言う。
慎太郎さんは?と辰弥が聞くと、相変わらず畑と典子は答え、取り調べは終わったの?と聞いてきたので、昨夜、兄さんは法事の後、どこかに出かけた?と辰弥は質問する。
頭冷やしてくる言うて…と典子が答えると、あ、それ!誰に聞かれても黙っていた方が良いよと辰弥は忠告する。
何で?と典子が聞くと、いや…、それは…と辰弥も口ごもるが、その時下から辰弥さん!と呼ぶ春代の声が聞こえたので降りてみると、典子さんに用があったの?と春代が聞くので、あ、いや…、別に…と辰弥はごまかす。
すると春代は、慎太郎さん兄妹とは仲良うせん方が良いんやけどと言い出す。
どうしてですか?と辰弥が聞くと、大叔母さんらが里村家を嫌うていなさるんやと春代は言う。
なぜ?と辰弥が不思議がると、私らの父は長男ですけん、多治見家を継いだけど、里村家に養子に出た要二さんの方が、人間として器量が優れていなさった、多治見家が自分の命より大切な大叔母さんではそれが悔しかったんですと話す春代と辰弥の背後を小梅と小竹が通り過ぎる。
劣った人が真っ当な人に対する僻み、その感情が今も続いておりますんやと春代は寂しげに伝える。
じゃあどうして、慎太郎さんと典子さんがこの家に?と辰弥が不思議がると、兄の久弥がしたことなんです、大阪に移った叔父さん夫婦が苦しんで亡くなり、一人ぼっちになった典子さんを引き取ったんですが、その時は慎太郎さんはまだ戦地で、生死のほどは分かりませんでしたからな~と春代は答える。
でも、私は嬉しいのよと言いながら、いきなり春代が辰弥の手を握ってきたので、辰弥は驚く。
あなたが帰ってきてくれたから、いつまでもいてくださいねと言いながら春代は辰弥を抱きしめてくる。
辰弥が体を離すと、急に春代は苦しみ出したので、どうしました?と辰弥は案じる。
大丈夫、持病の発作が…、すぐ良くなります…と春代は説明する。
その頃、郵便局の一室に泊まっていた金田一は、里村慎太郎、典子…、多治見要蔵死亡、鶴子死亡、久弥死亡…などと呟きながら、事件に関わる人物の相関図を書いていた。
先代は勿論…などと金田一が筆を入れていると、何やってはりますのんと言いながら、ひでが蒸し体毛を入れたハチを持って部屋にやってきて、あ、系図ですか?と金田一の前にある紙に書かれた文字を見て気づく。
多治見家のですなと言いながらひでは、金田一の横に寄り添って書き込みを確認すると、ややこしいですやろ、ここんち、うちは簡単や、ひでと徳之助と言い、金田一さんと子は何人です?と聞くので、ええ、まあ…と金田一は言葉を濁す。
簡単すぎるのも寂しいもんですよとひでは言うので、ええと金田一は適当に返す。
するとひでは、お芋さん!食べます?私なんか手伝うてあげましょうかなどと言い、ひでが邪魔しようとしてきたので、いえいえ結構ですと金田一が断ると、そうですか?とひでは残念そうに言う。
多治見家では、何やらそろばんを弾いていた小梅と小竹の部屋に呼び出された春代は、何か誤用ですやろか?と聴きながら座る。
小竹さん、何ですかな、小竹さん?と互いに声を掛け合った老婆2人は、春代は何やら辰弥に話しておりましたな~と小梅が切り出す。
そうですのと小竹が答えると、春代、何を言うてた?と小梅が問うて来たので、辰弥さんはもう家族と違いますのか?と春代は聞き返す。
そないにすぐ気許すのが、世間知らずの印じゃと小竹が指摘する。
多治見の家を守るには言うて良いことと悪いことがあると小梅も注意する。
春代は苦笑しながら、隠していてもいずれわかることですと言い返すと、口答えするでない!と小竹が叱ってくる。
小梅も、心臓病みの役立たずの女子の癖に…と嫌味を言ってくる。
どうせ私は世間知らずで病気持ちの役立たずの女子です、けど大叔母さんと春代は言い返したので、何です?と小竹が言うと、思い切って言います、大叔母さんのやり方を私は辛抱できても、若い辰弥さんにことごとく通用するとは限りませんよ、ひょっとすると、辰弥さんは神戸に帰ってしまうかもしれませんよと春代は指摘する。
辰弥を傘に着て、急に生意気になりよったの~と小梅が言うと、家に入りようなのはちゃんとした男の跡取りだけじゃ、文句があるなら、春代には出ていって守ろうてもええの~と小竹は小梅に話しかける。
本にそうですの~、小竹さんと小梅も同調したので、春代は悲しげな表情になる。
草木染めの糸を干していた美也子は、物音がしたので振り返ると、慎太郎だったので、あら、いらっしゃってたのと笑顔で出迎えるが、慎太郎は真剣な顔で、気になることがあるんですと言ってくる。
何?と美也子が聞くと、濃茶の尼が殺された件でと慎太郎は言うと言うので、本当、びっくりしてますと美也子が応じると、美也子さん、何か巻き込まれていませんか?と慎太郎は聞いてくる。
美也子がいいえと答えると、僕にできることがあったら力になりたいと思って…と慎太郎は視線を外して言う。
慎太郎さん、石灰岩ってセメントや肥料の原料になるんでしょう?と急に美也子は話題を変え他ので、出しぬけに何ですか?と慎太郎が戸惑うと、石灰岩の主成分は炭酸カルシウムの集合体で、その中に含まれる不純物は二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、五酸化リンなどであって、工業用としてはその不純物が20%であることが望ましいんですってと美也子が知識を披露すると、慎太郎は笑顔になって、いやあ驚いたと答える。
猛勉強したの、あなたのために…と美也子は打ち明ける。
慎太郎が照れると、ちょっと待ってと奥へ引き込んだ美也子は、白い毛糸を染めて編んでみたんです、使ってくださいと言いながら、慎太郎の首に、手作りの水色のマフラーを巻いてやる。
そして急に慎太郎の手を握ると、美也子は自分の頬に押し当て目を瞑る。
私がこの森家に嫁いできて、主人はたった3年で病死しましたと美也子は打ち明ける。
戦争が終わったから、出雲の実家に帰ってやり直そうと考えていたんです…と美也子は続ける。
その時です、あなたが復員して来られると知ったのは…と美也子が言うので、妹が多治見の本家に引き取られていなかったら、僕は大阪の焼け跡で再出発したと思いますと慎太郎は答える。
そんな慎太郎の胸に美也子は顔を埋め、互いに抱き合う。
そこにごめんくださいと声が聞こえたので、二人は慌てて体を離すが、そこに現れたのは金田一だった。
二人に気づくと、あ、お話中でしたか?と金田一は詫びるが、いや、僕は他に用があるので…と言い、慎太郎はマフラーを外し、机に置いてあった麦わら帽に隠しながら部屋を後にする。
次々と奇妙な事件が起こりますね~と金田一は世間話のように語り始める。
濃茶の尼のことで私に何か聞きにいらしたんですか?と美也子が問いかけると、いえ、そうじゃないんですと金田一は否定すると、作業場ですか、綺麗な色だなどとはぐらかす。
あ、草の根の汁ですか?と言いながら、小皿に入れられていた緑の液体に指を突っ込んだ金田一は、あれ、しまった、指が藍染になったとおどけてみせる。
美也子は笑って、それ青いお花、青花の汁ですと教える。
手書き模様の時、それで下絵を描いてから色付けしますでしょう?その後、水で洗うと、青花の縁取りだけが消えるんです、見ててください、どうです?と、実践して見せながら教える。
金田一が、は~と感心すると、これでと美也子は濡れた布を渡してきたので、それを受け取った金田一は人差し指の汚れを拭う。
指が綺麗になったので、本当だ、インク消しで消したようだと金田一は喜ぶので、便利な植物でしょう?と美也子も微笑む。
ええ、今日伺ったのは、多治見家について少し教えていただこうと思いましてと言いながら、金田一は袂から系図を取り出す。
ちょっと人間関係を整理してみたんですが、役場で調べてみますと、多治見家の財産は全て亡くなった長男の久弥さんの名義になっています、この久弥さんに配偶者も子供もいないわけですから、系図にある今生きている親族の方に相続の権利が生じます、そこでです、犯人が遺産目当てで久弥さんの寿命を縮めたとすれば、相続権のある人間を少なくするほど分配が増えることになりますよね?と金田一が聞くと、興味ありません、よそ様のお家のそう言うこと…と美也子が無視したので、なるほどね、ところで辰弥君の存在なんです、大叔母さんが私生児である辰弥君を後継者にするべく法律的な手続きをされているのかどうか…と金田一が続けると、さあ?知りませんとそっけなく答えた美也子は描画の作業を再開する。
ああそうですか…、もしされているとすれば辰弥君の命も狙われるわけですからね~と金田一は、系図をしまいながら呟く。
まあ!と美也子が驚くと、僕はそのことを確かめにこれから辰弥君に会いに行こうと思っているんですが…と金田一は告げる。
美也子はそんな金田一と共に多治見家の辰弥を訪ねると、辰弥は無言で荷造りをしている最中だったので、辰弥さん、何ですそれ!と美也子は詰め寄る。
辰弥は、僕はやっぱり帰ります!と決意したように答える。
どうして?と驚きながら美也子が辰弥の前に座ると、この前も言ったでしょう?僕が来たために…と辰弥が言うので、大叔母様や春代さんには?と美也子が聞くと、これから言いますと辰弥は答える。
辰弥さん、それはあなたの思い過ごしですと美也子は説得するが、じゃあ、これでも帰るなと言うんですか!と言いながら、苛立たしそうに辰弥は胸ポケットから手紙を取り出して差し出す。
美也子がそれを受け取って開くと、ここにくる直前に届いたんですと辰弥は説明する。
僕にもちょっと見せてくださいよと言いながら、美也子の手から手紙を取り上げた金田一が文章を読む。
あなたが峠で私に何か言いたそうだったのは、この警告状のことだったのねと美也子は察する。
辰弥が黙って頷くと、封筒も見せてくれませんか?と文章を読んでいた金田一が手を差し出す。
封筒を受け取った金田一は、どこに置いてあったんです?と聞くと、下宿の郵便受けと辰弥は答える。
う~ん…,左手で書いて、青インクを滲ませるためにわざと粗末な紙を使ってますね、筆跡がわからないようにするためなんですと金田一は指摘するが、美也子は無視する。
おどろおどろしい稚拙な文章で怖がらせようとしていますが…、逆にこれは相当知能が高い人物の仕業だと思いますね~と金田一は推測する。
すると辰弥は、これだけじゃないんですと言い出したので、ええ?まだ何かあるんですか!と金田一は驚き、僕は昨夜奇怪なものを見てしまったんですと辰弥は打ち明ける。
どこで?と金田一が聞くと、土蔵の地下道で!と蔵の方を指差しながら辰弥は打ち明ける。
大きな箱の蓋を開け、下に敷かれた布を剥いだ辰弥は、これです!と紹介すると、中を覗き込んだ金田一は、抜け穴だ!と気づく。
美也子も、こんな所に?知らなかったと驚く。
3人が箱の底から鍾乳洞へ降りると、屋敷の中から春代が蔵の方を監視していた。
懐中電灯を照らした辰弥が先頭を進み、後から続く金田一が、庄屋の家なんかには、百姓一揆に備えて抜け穴があると聞いたことがありますが、これもその類じゃないでしょうかなどと解説し、そうか…、これ鍾乳洞に繋がっているんですねと金田一は気づく。
こっちですと案内した辰弥は、懐中電灯の光を安置されていた鎧武者の方に向ける。
それを見た金田一も美也子も怯える。
ちょっと拝借と言って、辰弥の手から懐中電灯を受け取った金田一は、鎧武者の顔のそばでじっくり観察し、これは人形とかじゃなくて、明らかに人間ですねと指摘する。
え?人間!と辰弥が驚く。
ミイラですと金田一が教えると、ミイラですって?と美也子も驚く。
いや…、ミイラというよりは屍蝋でしょう、干からびていませんから…、死体は条件によっては蝋人形化して腐敗しないこともあるんですと金田一は説明する。
その時、お供え物があるわと美也子が気付き、懐中電灯を当ててみた金田一も、これは新しいですねと指摘する。
大叔母が備えたものだと思いますと辰弥が言うと、大叔母様が?と美也子は驚く。
その間も武者の様子を観察してた金田一は、年代物の兜ですねと指摘する。
あ、兜に三日月!と美也子が気付き、尼子の紋章じゃありません?と言う。
しかし少なくとも400年前の死体じゃないで砂と金田一は苦笑する。
誰のミイラなんだろう?と辰弥が不思議がった時、あなたや私のお父さんですと言う声が響き、それは3人を追って鍾乳洞へ入ってきた春代だった。
春代さん!と美也子が気づいて驚くと、辰弥も、僕の父?と驚く。
…と言うことは、多治見要蔵さんですか?と問いかけながら、金田一も武者のところから降りてくる。
ええ、ここは、大叔母さんと亡くなった久弥兄さんと私しか知らない場所だったのですと春代は打ち明ける。
それが知られてしもうたのやから、これまで胸に秘めていた事を話しますと春代は言う。
今から26年前…
(回想)頭に懐中電灯を2本刺した鉢巻をし、胸にも懐中電灯をぶら下げ、弾倉を両肩に襷掛けにし、猟銃と日本刀を持って座敷を飛び出そうとする要蔵(岸部一徳-三役)を、あなた、そんな格好でどこへ?と止めようとした妻のおきさ(姿晴香)だったが、その場で無言のまま刀で斬られる。
父はいきなり母を斬って家を飛び出したのです。(春代の独白)
そんな要蔵の様子を見守る幼少時代の久弥(野上亜佑多)と春代
(回想明け)兄は13歳、私は7歳でした。
(回想)駆けてくる要蔵と出会った酔っ払いは、手にした行燈の灯りでその異様な姿を見て、あ、鬼だ!と叫ぶが、その場で猟銃で撃ち抜かれてしまう。
結婚式を行なっていた座敷にも乱入した要蔵は、多治見の旦那様、何か?と問いかける家人を無視し、その場にいた出席者たちを次々に惨殺していく。
隠しておるんだろう!と要蔵が絶叫するので、多治見の旦那が狂った~と客たちは大騒ぎになる。
逃げようとした白無垢姿の花嫁も、その場で袈裟懸けに斬り殺される。
祟りじゃ、八つ墓村の祟りじゃ~!と客が叫ぶが、その男も要蔵の日本刀で串刺しにされる。
就寝中の民家にも要蔵は侵入、何事かと起き上がった家人たちを次々と惨殺。
表に逃げた2人も斬り殺し、皆殺しにしてくれる~!と絶叫しながら、また別の民家を襲撃し、夕食中だった家族を皆殺しにしてゆく。
その家にはまだ乳飲子もいたことに気づいた要蔵は、一突きで刺し殺す。
外の道で出会ったものたちは、鬼だ~!と怯えながら切り殺されて行く。
さらに通行人を二人斬り殺した要蔵は、鶴子を返せ~!と絶叫する。
(回想明け)父が…、多治見要蔵が殺したのは32人だったそうですと春代は打ち明ける。
狼狽えながらしゃがんだ春代に近づいた金田一は、ああ、こんな事を聞いても良いでしょうか?どうして要蔵さんがここに?と安置してある鎧武者を見上げながら聞く。
父は警察に追われて一度は山に逃げ込んだらしいんですが、この家に戻ってきたので、大叔母が誰も入れない鍾乳洞に匿ったのだと思いますと春代は答える。
父はそこで死んだ、大叔母たちは鎧兜を着せて安置し、隠し切ろうとしたのでしょうと春代は推測する。
そうですか…、しかしなぜ要蔵さんはそんな素行をやってしまったんでしょうね?と金田一は聞く。
理由はわかってるんですと春代が言うので、何ですか?と金田一が聞くと、辰弥さんのお母さんの鶴子さんを…と春代が言いかけた時、春代さん!と美也子が制し、それは言わない方が良いわ、これ以上辰弥さんに…と忠告するが、いや、話してください!と辰弥は春代にせがむ。
僕には母のことを知る権利があります!知りたいんです!と辰弥は訴える。
(回想)じゃあ、また明日来ますと言いながら郵便局から出てきた井川鶴子(鈴木佳)
鶴子さんは博労の丑松さんが男手一つで育てた一人娘で、千羽さんと言う人が局長をしていた郵便局に勤めていたんです。
妻子がありながら、鶴子さんに恋焦がれた父は、不意に鶴子さんを襲い拉致すると、土蔵に閉じ込めたのです…(春子の独白)
蔵のなかで、鶴子に襲いかかる要蔵
(回想明け)鶴子さんは毎日毎日救いを求めましたが、父は放そうとはしませんでしたと春代は語る。
(回想)連日のように蔵のなかで鶴子を陵辱する要蔵
(回想明け)周囲のものも諌めましたし、丑松さんも来て返して欲しいと頼んだのですが、父は頑として聞き入れず、暴力を振るう始末に、鶴子さんは同居することを承知したのです…、それで離れに…と春子は言うので、今僕がいる部屋ですか?と辰弥が聞く。
ええ、でも父は鶴子さんが逃げ出すのを恐れて、離れの入り口に錠をかけたり、庭に面した縁側には孔子のようなものまで作ったり…と春代が説明していると、それは今はありませんねと金田一が口をはさむ。
頷いた春代は、そんな生活がしばらく続いて、男の赤ちゃんが生まれました…、それが辰弥さんです…と春代は続ける。
ところがある日突然に…
(回想)離れの鍵を開け入ってきた要蔵は、赤ん坊を抱いていた鶴子の手から赤ん坊を奪い取り、鶴子は蹴飛ばすと…
赤ん坊を取り上げて焼け火箸を…(春代の独白)
赤ん坊の背中に焼け火箸を押し付けた要蔵を見て、鶴代は顔を覆って悲鳴を上げる。
(回想明け)このままでは子供も自分も殺されてしまう…、鶴子さんはそう決心されたのでしょう、辰弥さんを抱えて家を抜け出された…と春代は言う。
それで…と、要蔵さんが凶暴になられたんですねと金田一が指摘する、
辰弥は急に頭を抱えて唸りだすと、その場にしゃがみ込んだので、辰弥さん!と案じた都が駆け寄って辰弥の体を支える。
金田一は改めて、屍蝋化した要蔵の姿に目をやる。
郵便局ではひでが、女の職員雇う必要がどこにあるんや!と徳之助に文句を言っていた。
徳之助は、おめえがしんどそうにしてるからじゃ!と言い返す。
ああ、そらあしんどいですわ、そやけど、その子の賃金はどこから出すんや!とひでは文句を言うと、なんとかするわい!と徳之助が我を張ったので、あんたはいつでもそれや、口ばっかしや!と手真似をしながら言い返す。
何じゃと?こら!と言いながら徳之助がひでの着物を掴むと、あんた、妻に手出したな!と言いながらひでも徳之助の顔を掴んで反撃する。
騒ぎを聴きつけ部屋から出てきた金田一が、二人の間に、まあまあと言いながら入って仲裁する。
しかしひでは、止めんといてくださいと言いながら金田一の体を押し退けてしまう。
私はこの人の腹は読めとるんや!とひでが徳之助を指さしてなじったので、何じゃ!と徳之助が言い返すと、若い女をそばに置いときたいんじゃ!と言いながら、ひではまた徳之助の顔を摘み出す。
金田一が羽交締めしてひでを引き離すと、何を言うとるんじゃ、あほんだら、ええか、この郵便局はな、前の代まで女の局員雇ったんじゃ!ちっともおかしいことない!と徳之助が言うので、え?前の代まで?と金田一が口をはさむ。
昔のことなんか何にも関係ない!とひでは徳之助を馬鹿にするが、金田一は何事かを考え込み、」またしてもひでと徳之助が喧嘩を始めるが、そこに駐在の戦国が自転車でやってくる。
お医者の久野先生、来とらんか?と喧嘩の真っ最中のひでたちに聞くので、いいやと日では答える。
久野さんがどうかしたんですか?と二人を止めていた金田一が聞くと、一昨日の晩から帰っとらんと奥さんから届出があったんじゃと千石は教える。
山も向こうの夕陽を部屋の縁側から眺めていた金田一は、自分のバッグの中から天眼鏡や双眼鏡を出してみてはまたバッグへ戻し、落胆していた。
その時、金田一さんいますか?と声がかかる。
部屋の前に来た人物を見て、ああ、辰弥君と金田一が気づくと、奇妙なものが見えるんですと、金田一の前に座り込んだ辰弥は報告する。
奇妙な?と金田一が聞き返すと、離れにある枕屏風です、夕陽の逆光の加減でしょうか、初めて透けて見えたんですと辰弥はいう。
まだ夕陽ですね〜と外の様子を確認した金田一は、行きましょう!と決意する。
外から春代が自宅へ戻ると、あの〜、警察の方が見えておりますが?とお島が報告する。
離れに連れてきた金田一に、これです!と辰弥が枕屏風を見せると、下張の中に何か張り込んであるなと金田一は指摘すると、辰弥君、水ある?と聞き、辰弥ははいと答える。
辰弥が火鉢に置いてあった手悦瓶から湯呑みに水を汲んで金田一に渡すと、金田一はその水を口に含んで屏風の表面に吹き付ける。
そして懐から取り出したナイフで屏風の一部を切り出していく。
その時、部屋の外から辰弥さんと呼びかける典子の声がしたので、扉を開けて廊下に出た辰弥は、用?と聞く。
典子は、金田一さんと何やっとるん?と聞いてきたので、別にと辰弥は笑顔でごまかそうとするが、協力してやろうと思うて…と典子が言うので、君が探偵をするって?と辰弥は面白がる。
犯人には、尼子の落武者の祟りが取り憑いているのやわ…などと典子は言い出す。
殺された落武者が8人、26年前の騒ぎの時も32人が殺されたんやけど、4x8=32で、これも8に関係あるんや…、と言うことは八つ墓明神に…などと典子は力説するが、その時、離れの中から辰弥君!と呼ぶ金田一の声が聞こえる。
辰弥は典子に、じゃあ後でね!と笑顔で言い、重い扉を開けて離れに戻っていく。
部屋に入った辰弥は、金田一が屏風の中から見つけた一枚の写真を見せられ、あ、それは!と驚く。
それは鶴子と若い男性が一緒に写っている昔の写真だった。
写真の裏には亀井陽一27歳、 井川鶴子20歳 大正11年 正月写すと書かれてあったので、金田一がそれを読み、鶴子さんって君のお母さんですね?と確認する。
辰弥が頷くと、亀井陽一、この人は?と金田一が写真を見せながら聞くと、全然知りませんと辰弥が言うので、大正11年正月と言うと君が生まれる前ですね?と金田一は指摘する。
そうですと答えた辰弥は、母はどうしてこんなところに写真を隠したんでしょうか?と不思議がる。
その時、庭側のガラス戸を叩きながら、辰弥、辰弥と呼びかける声に気付き、ガラス戸を開けると、小竹がしゃがみ込んでいたので、金田一と共に座敷に助け上げた辰弥だったが、どうしました?と問いかけると、小梅さんが攫われてしもうたと小竹が息も絶え絶えに言う。
何ですって!と辰弥が聞き返すと、要蔵が、要蔵が生き返ったんじゃと小竹が言うので、鎧武者が!と金田一は驚くが、押し被さってきたんだ!と小竹は言う。
金田一は頭をかきむしり、しまった〜!と叫ぶ。
えっ!と驚いた辰弥だったが、辰弥君、懐中電灯を!と金田一が命じたので、辰弥がすぐさま懐中電灯を手渡すと、それから誰かを呼んで小竹さんの介抱をね、僕は先に洞窟に行ってますからと金田一は告げ、蔵の中に入り込む。
座敷に残った辰弥は、誰か来てくださ〜い!と呼びかける。
洞窟内に入り込んだ金田一は、要蔵の遺体の場所まで進んで周囲を探すと、頭から流血し昏倒した小梅の体を発見する。
金田一はすでに小梅が事切れていることを察し、絶望するが、要蔵の遺体を確認している時、等々力警部や坂東刑事、駐在の千石らを引き連れた辰弥も近づいて来て、金田一さん、警部さんがいたんです、小竹さんは春代姉さんに頼んできましたと教える。
話は今聞いた、この鎧武者が26年前の…と等々力が愕然としながら言うので、小梅さんは即死です、前頭部が打ち砕かれていますと金田一は教える。
鉄棒のような鈍器で殴ったんだな…と等々力が推測すると、いやいや上からこの兜を落としたんでしょうと金田一は説明する。
何だ?と等々力が怪しむので、兜の紐の蜘蛛の巣が取れています、誰かが紐を結び直した形跡がありますし、兜の被せ方が、こう…、少し斜めになっているんですと金田一は補足する。
重そうな兜だ、そんなところに戻せるかね?短時間に…と等々力が疑問を口にすると、そうなんです、足場がね、よくできてるんですと金田一は岩場を降りながら答える。
犯人は鎧武者の後に隠れていて犯行に及んだと思われますと、等々力の横に降りてきた金田一は説明すると、僕はちょっと奥を見てきますと言うなり走り去ったので、忙しい男ねと呆れた等々力は、ところでと、この鍾乳洞は行き詰まりになっとるんかね?と辰弥に聞く。
抜けられます、濃茶の尼の伊織の近くにと辰弥が答えると、そこからは入ってはいかんことになっとるんですがねと千石が説明する。
そうか…、良し、分かった!とまた等々力は手を打つと、医者の久野はこの洞窟のことを知っていて、濃茶の尼殺しにも利用したんだと推測する。
この村を離れたと思わせておいてここに潜み、この小梅を殺害した!うん!と等々力は断定する。
その時、洞窟の奥から、警部さ〜ん!と呼ぶ金田一の声が聞こえたので、呼んでますよと言う坂東刑事の言葉に押されるような形で等々力もそちらへと向かう。
こっちのようですよという坂東の言葉に促され、洞窟を進んだ等々力は、そこにいた金田一を見つけ、こんなところに!何だね?と話しかけ、ああと金田一が言うので、ああじゃわからんじゃないかとぼやきながら近づくと、この中を見てくださいと金田一は懐中電灯の明かりを奥に向ける。
ああ?と疑いなから奥に進んだ等々力は、金田一が向けた懐中電灯の光に浮かび上がった久野の死体を発見して、久野だ!信じられんと驚く。
完全に硬直しています、死後2日は経っていますと金田一は指摘する。
自分の推理が外れたことを知った等々力は、これは一体どう言うことだ…と金田一の顔を見る。
ご隠居の小梅さんを襲ったのが久野医師でないことだけは確かですなと千石が横から配慮のない発言をしたので、そんなことはわかってる!と等々力は癇癪を起こす。
その声で一瞬硬直した千石だったが、お?握り飯?握り飯が三個…、一っ子は半ば齧ってあると、久野の遺体の横においてあった握り飯の一個が食べかけであることに気づき、指で触ってみて、ああ、こちこちですわと握り飯も時間が経っていることを報告する。
犯人は久野さんを2日前にここに誘き寄せて、毒入り弁当を渡したんじゃないでしょうか…、しかし我々が死体を発見してしまったんで、犯人の計画は少し狂った…と金田一が推理する。
どうして死体をこんなところに隠す必要があったのかね?と等々力が金田一に問いかけると、目的を達成するまで、久野さんを怪しいと思わせときたかったんでしょうと金田一は推測する。
じゃあ君は、まだ殺人が起きると言うのかね?と等々力が聞くと、それは僕にも分かりませんと金田一は言う。
う〜ん、丑松、久弥、濃茶の尼、それに小梅殺しが医者の久野でないとすると、う〜ん、捜査は一からやり直しだ!と等々力は無念そうに言う。
その頃、多治見家の玄関先には鎌や棒を手にした村人が集結し、こらあ!開けろ!辰弥を出せ!と騒いでいた。
中から出てきたのは美也子で、何を騒いでいるんです?と聞くので、勘治や周平と共に先頭にいた吉藏が、あんたじゃ話にならんわい、辰弥を出せと言う。
わしの両親は26年前、辰弥の父親に殺されたんじゃ!と勘治が怒鳴り、わしの身内もじゃ、もう祟りが来るんじゃ!と周平も続ける。
頭を冷やしなさい、祟りなんて迷信です、それにあなたたち、多治見家の山林や牛のお陰で食べていけるんでしょう?後継ぎが代わっても400年も続いた大庄屋の力は変わりません!さ、今日のところは私に任せて引き取りなさいと美也子は宥める。
その後、金田一は岡山市相生町にやって来る。
訪ねた先は「仙波時計店」という店だった。
あの〜、この古い写真のことで伺ったんですが、八つ墓村で現在郵便局をやっておられる望月徳之助さんに、昭和19年に榊原さんと言う人に郵便局を譲り受けたと聞き、その岡山に移転されていた榊原さんの住所を調べてお会いしたところ、榊原さん、こちらの仙波久兵衛さん?から大正11年に受け継いだので、その頃の郵便局のことだったら仙波さんの方が詳しいから行ってみなさいと教えられ、あちこち歩いてようやくこうして…と金田一は、仕事中だった仙波清十郎(西村雅彦)に事情を説明し、持参した写真を見せる。
時計用修理用ルーペを外した仙波は、ああ、そうでしたか…、しかしすまんこっちゃが、父久兵衛は戦争中に病気で亡くなりましてな、私は倅の清十郎ですと答える。
息子さんでしたか…と金田一が首を垂れると、いやガッカリすることはありません、あ、ご覧のように我が店の時計はことごとく同じ時刻を指して晴れたりっじでしょう?と店の時計を指差した仙波は、ああ、なるほど…それで?と聞いてきた金田一に、うちの親父は時計はどれも一分一秒も狂わしてはならんと言う主義でしてな、跡を継いだ私もそうしとるんですが、親父は几帳面の他に物覚えが良いのも自慢で、一時が万事私はそれも受け継いでおりましてな、この井川鶴子、亀井陽一ですか?と写真の裏書を見ながら、2人の名前になんか記憶がありますと言う。
それを聞いた金田一は、ええ?本当ですか!と驚いたので、少々お待ちくださいやと言った仙波は、立ち上がってたなカラフルそうな封筒を取り出すと、これ親父が大事にしとった書類の束ですわと言うと、その中から手紙の束を取り出して、ありました、これや!と言いながら取り出す。
そこ封筒の裏書には、岡山県真庭郡八つ墓村郵便取扱所記付 井川鶴子と書いてあった。
表には付箋が貼ってあったので、付箋がついていますねと金田一は指摘し、「該当者所在不明につき転送す」と付箋を読み、それをめくると本来の宛名「浦潮派遣軍 第17師団 第一歩兵第21連隊 亀井陽一様」と書いてあったので、亀井陽一さんは兵隊だったのかと呟く。
鶴子さんが戦地に出した手紙が戻ってきた…、しかしどうして自分の住所ではなくて郵便局着付にしたんでしょうね?と金田一が聞くと、さあ…、それにしても、あの几帳面な親父が戻ってきた手紙を鶴子さんと言う方になぜ渡さなかったんやろう?と仙波も不思議がる。
渡さなかったと言うより、渡せなかったとも考えられますねと金田一は答え、あれ?これ風が剥がれてますよといい、中の便箋を取り出す。
親父が呼んだんやろか?と仙波も身を乗り出して来る中、僕は鶴子さんの息子さんのためにこの男性を探しているんですが、これお預かりしても良いでしょうか?と封筒を差し出して見せる。
時にあなた、何屋さんです?渡船場が聞いてきたので、探偵ですと金田一が答えると、ああ、探偵屋さん?と仙波は納得する。
弁当持参で多治見家に来ていた美也子は、慎太郎さん!と呼びかけながら2階の部屋の扉を開くが、そこには誰もいなかった。
そのびの記、大叔母さん、急にどうしたんです!と叫ぶ春代の声が下から聞こえてくる。
放せ!と抵抗する小竹は、どこへ行くんです?と止めようとする春代の手を振り切ってどこかへ行こうとする。
どこへ?と春江が重ねて聞くと、鍾乳洞じゃと小竹はいう。
どういたんですか?お美也子が降りてきて聞くと、大叔母さんが急に…と春代は言う。
小竹は、要蔵に謝りに行くんじゃ、わしらが要蔵を殺したんじゃからなと小竹は叫ぶ。
あそこ行けば小梅さんもいる…などと小竹が言うので、行けませんよ、鍾乳洞には呪いが漂うとるけん…と春代は注意する。
今、要蔵さんを殺したとおっしゃいましたよね?と美也子も聞く。
仕方なかった…、要蔵を匿うたら暴れてのう…、それで小梅さんとわしは弁当に猫いらずを…と小竹は障子に縋って告白する。
それを聞いた春代は、まあ、毒を!と驚くと、小竹は頷き、要蔵が狂ったのはわしのせいじゃ、
昔、八人の落ち武者殺しの采配をしたのは多治見家初代の庄左衛門で、祟りに取り憑かれての〜、不意に暴れ出すと7人の村のものを殺し、8人目に己の首を…(と小竹の独白)
(回想)大鎌の歯を自らの首の背後から手前に引き、首を落とす。
(回想明け)それ以後、多治見家の当主は、100年ごとに物狂いになったそうな…、要蔵は400年目の投手じゃった…と小竹は打ち明ける。
その頃、濃茶の尼の庵に慎太郎を呼び出した辰弥は、何の話があるんです?と怪しむ慎太郎に、まあ上がってくださいと勧めたので、こんな所に連れてきて…と文句を言いながらも慎太郎は従う。
一度は神戸に帰ろうとしたことがあるんですが、今はこの体に流れている黒い血のことを徹底的に知りたいと持っているんですと辰弥が打ち明けると、君はこの村や多治見家に伝わるおぞましい話を信じているんですか?と慎太郎は顔を見ないまま聞く。
信じるも信じないもない!巻き込まれているんですよと辰弥は訴える。
頷いた慎太郎は、君も狙われている一人であることは確かだと答え、僕もその一人だと教える。
あなたが犯人に?と辰弥が驚くと、村に戻っていた金田一が姿を現したので、金田一さん!と辰弥が仰天すると、脅かしましたか、いや、ごめんなさいと金田一は笑顔で詫びる。
びっくりしましたよ、第一どこへ行ってたんですか?と辰弥が聞くと、う〜ん、色々と調べることがありましてねと金田一は答え、それよりお二人はなぜここに?と尋ねる。
僕は濃茶の尼の死体の第一発見者になっていますね?と辰弥が言うので、なっていますって、そうじゃないんですか?と金田一は今までのニヤニヤ笑いを急に止める。
僕より先に見つけた人がいるんです…、この慎太郎さんですと辰弥は指摘する。
あなたがこの家にいた時、死体はすでにあったはずですよと辰弥は慎太郎に迫る。
僕はあなたが出ていくのを偶然に目撃したんですと辰弥は打ち明け、なぜあの時ここにいたんですか?なぜ警察に通報しなかったんですか!と問いかける。
そうでしたか、しかし今、君に答える必要はないと慎太郎は突っぱねる。
僕はあなたが…と辰弥が告白しようとすると、あ!と金田一が声を上げる。
祭壇の品物がなくなっていますね、ここに奇妙な絵の掛け軸があったんだけどな〜と金田一は指摘する。
麻呂尾寺で引き取ったんじゃないですか?と慎太郎が言うと、洪禅さんが?と金田一は驚き、その後走って麻呂尾寺へ向かう。
麻呂尾寺にいた洪禅は、26年前の酷い事件の際、亭主と子供を殺されたあの女子は、この寺に逃げてきよった…と、突然訪問した金田一に説明する。
わしは尼になることを勧めたんじゃと洪禅は言う。
そうですか、ところでお尋ねした掛け軸は?と金田一が聞くと、尼になっても恨みが忘れられずに、血が可笑しゅうなって、あんな掛け軸を拝んでおったらしいが、ああ…と洪禅が顔であり場所を示したので、ちょっと拝見しますと断った金田一が、その掛け軸を確認する。
掛け軸の背面を見た金田一は、歌のようなものがいくつか書いてありますね〜と気づく。
歌?犯人がわかったのかね?と洪禅が聞くと、いや…と言いながら金田一はまた笑って頭を掻き始める。
多治見家の二階から降りてきた慎太郎は、家の様子を伺っていたが、春代がいなくなった小竹を探していた。
小竹は小春の位牌を持って、1人で蔵に向かっていた。
蔵には人影が蠢いていた。
それに気づかず中に入った小竹は、大きな箱のそばに来ると、位牌を横に置きながら、小梅さんや安心おし、今行くからなと言うと、箱の蓋をあげようとする。
そんな小竹の上にぶら下げられていた駕籠を繋いだ紐を、軍手をした手が物陰から引こうとしていた。
次の瞬間、駕籠は落下し、気づいて悲鳴を上げた小竹を押しつぶす。
蔵に駆けつけた春代が、そんな惨状を発見し愕然とする。
そのびの記、春代の背後から軍手をした手が伸び、紐で春代の首を絞めてくる。
助けて!と叫ぼうとしながらも、最後の力を振り絞って春代は軍手の小指に噛み付く。
紐を持った軍手の手は離れるが、心臓を抑えながら春代はその場に倒れ込む。
多治見家に戻っていた辰弥は、物音に気付き、すぐさま蔵に駆けつける。
そこに横たわっていた小竹と春代の体を見た辰弥は、驚愕しながらも、姉さん!姉さん!と春代に駆け寄って抱き起こす。
辰弥さん…と呟く春代に、しっかりしてくださいと辰弥は呼びかける。
首を絞められて…と春代が言うので、辰弥は誰が?と聞くが、春代は首を横に振るばかり、暗うてようわからなんだけど、軍手の指に噛み付いた…、ちぎれるほど…と春代は教える。
指を!と辰弥が驚くと、春代が苦しむので、姉さん、心臓が苦しいんですか!と辰弥は呼びかける。
首を一旦頷くようにしたが、すぐに横に振った春代は、でも、嬉しい…、辰弥さんに抱かれて死ねる…、ああ、弟とは思えない…、好きだった…と言い、そのまま唇を重ねかけたところで息絶えてしまう出す。
姉さん!と呼びかけながら春代を抱き締める辰弥。
ついに7人の死体が出た!と「八つ墓村連続殺人事件」の捜査本部にした駐在所にいた等々力は嘆いていた。
丑松、久弥、濃茶の尼、久野、小梅、小竹、春代!地獄…、地獄だよこれは!26年前の事件も恐ろしいことにかけては前代未聞だが、今度の事件も我々を悩ませることにかけては前以上の事件かもしれんぞと、呼び出した金田一、久弥、慎太郎を前に等々力は訴える。
畜生!多治見家は親子二代にわたって我々に手を焼かせるのか!と苦悩したと等々力だったが、金田一君、君はさっきからそこに座ったきりだがどうしたんだね?あんたが集まってくれって言うからこうして集まってるんだよ、その君が黙ってたんじゃしょうがないじゃないかと指摘する。
いや、僕がもう少し早く糸口を見つけておれば、小竹さんと春代さんをむざむざ死なせずに済んだんじゃないかと思うと、申し訳なく思って…とと金田一が言うので、ちょっと、君!今糸口とか言ってたね?何かを掴んだのかね!と等々力が聞くと、金田一は黙って頷く。
そ、それは何だね?と等々力が聞くと、立ち上がった金田一は、辰弥君、持ってきてくれましたか?と聞き、辰弥もええと答える。
今朝これが僕の机の上に置いてあったんですと言いながら辰弥は紙を取り出し等々力に見せる。
何々?と等々力が目にしたその紙には、「犯人について重大なことを教える。鎧武者の下に来い。人に知らせると、八つ墓村の惨劇が広がるだろう」と、雑誌から切り抜いた文字を貼り付けた文が書かれてあったので、何だい、こりゃと等々力は呆れて聞く。
犯人は焦ってるんじゃないでしょうか?辰弥君は神戸を発つ直前にも、この渓谷上を受け取っているんですよと言いながら、金田一はもう一枚の渓谷場を出して見せる。
警告状?ああ、インクが滲んでいて読みにくいな、こりゃとぼやきながら、等々力はそれを確認する。
「血の海と…」と等々力が読むと、「化すであろう」と千石が続きの部分を読む。
何だ、こらあと等々力が呆れて金田一に返すと、水を一杯くれませんか?と金田一は千石に頼む。
はい水と、戦国がコップに注いだ水を渡すと、それを受け取った金田一は、インクに特色があるんですと言い、普通の青インクなら水では消えませんよねと念を押し、しかし、見ていてくださいと言いながら、金田一がコップの水につけた人差し指で警告状の文の一部を擦ると、文字は見事に消えてしまう。
ああ、消えた!と千石らが驚くと、慎太郎も仰天する。
これは、青花という植物の青い汁で書かれたものですと金田一は指摘する。
草木染めをするときにこれで下絵を描くらしいんでうよね、後で水で洗うと消えるかららしいですと、金田一は慎太郎を意識して言う。
慎太郎はその意味を理解し、草木染め…と呟いて動揺する。
この封筒には切手が貼ってありませんと、金田一は辰弥が最初に受け取った警告状の封筒を出して見せ、辰弥君の下宿に直に届けられたものすと指摘する。
調べてみますと、その前後に、この村から泊まりがけで出ているのは…と金田一が続けると、祖父の丑松さんと、美也子さんだけだ…と達也が気づく。
その場で座り込んだ慎太郎は、金田一さん、犯人は美也子さんですか?と怯えたように問いかける。
金田一が黙って頷いたので、等々力たちは仰天する。
慎太郎は頭を抱えて悩み出す。
金田一が鍾乳洞に安置された要蔵の遺体の元に来ると、辰弥さんね?と言いながら、美也子はその武者姿の遺体を背中から押そうとする。
金田一ですと打ち明けると、鎧の背後から姿を現した美也子だった。
森美也子さん、あなたは辰弥君をここへ呼び出して、最後の締めくくりをつけるつもりだったんですね?と下から問いかける。
締めくくり?何のことでしょう?と美也子はとぼける。
あなたは辰弥君を狙ったと金田一が指摘すると、何を根拠にそんなことを!と美也子は苦笑する。
尼子の祟りを利用して、この殺人事件を神秘的なものに仕立て上げ、そして今まで7人の命を奪いましたね?と金田一が言うと、いくら探偵だからといって、無責任なことをおっしゃると許しませんよと美也子は気色ばむ。
死体の側に八つ墓明神の護符を置いたり、尼子の紋章を思わせる草刈り鎌を置いたのは、あなたですねと金田一が問いかけると、私に限らず誰にだって置けるでしょう?と美也子が反論すると、ですからあなたとも言えますね、殺害の出発点は多治見家の遺産相続人の数を減らすこと、そこであなたはまず丑松さんを…と金田一が続けると、仮にそう考えたとしたらおかしいわ、だって丑松さんは相続とは関係ないじゃありませんか、その人をどうして?と美也子は反論してくる。
辰弥君に恐怖心を与えて帰郷を断念させたかった…、警告状もその一つです、しかし辰弥君は決心を変えなかった…と金田一は答える。
小竹さんと小梅さんは休暇を守る使命感で一杯で、病気の久弥さんに遺言状を書かせて、辰弥君一人に遺産を残したかったんでしょうから、それを実行される前にあなたは第二に久弥さんを…と金田一が続けると、私は多治見家の親族じゃありません、命を賭けたとしても何の見返りもないんですよ!と美也子は言い返す。
人は金銭欲のためだけに命懸けになるとは限らない…と金田一が言うと、何をおっしゃっりたいの?と美也子が癇癪を起こしたので、あなたの左手の小指の傷は春代さんに噛まれたものですね!と金田一が指摘したので、美也子は包帯を巻いた左手をハッとして背後に隠す。
それは辰弥君が確認しているんですと金田一は迫る。
美也子さん、このままだと慎太郎さんが逮捕されますよと金田一は口調を抑えて忠告する。
それを聞いた美也子の顔色が変わる。
現在相続人として残っているのは辰弥君と慎太郎さんだけですから、当然慎太郎さんに嫌疑がかかりますと金田一は教える。
あの人を疑うなんて!そんな!と美也子は憤慨し、要蔵の遺体の背後に戻ると思い切り前に押し倒す。
金田一は驚きながら身を避けると、次の瞬間落下した要蔵の遺体は木っ端微塵に粉砕する。
美也子はその場を逃げ出し、多治見家の蔵の箱から出現する。
しかしそこには、等々力警部以下、千石巡査、坂東刑事、そして辰弥が待ち受けていた。
そして振り返った美也子は、そこに慎太郎もいて自分を睨んでいることにも気づく。
金田一も箱の中から出て来て、床に降り立つと履いていた下駄を脱いで揃える。
美也子さん、どうして僕に打ち明けて…と慎太郎が問いかけるが、美也子は何も言い返さなかった。
魔がさすと言う言葉がありますよね?辰弥君がこの八つ墓村に帰ってくると決まった日から、美也子さんは悪魔に魅入られてしまったと言うしかありませんと金田一が口を開く。
そんな美也子に近づいた等々力が、丑松と久弥に盛った毒はどこで?と聞くと、もちろん久野医院からですと金田一が答える。
それを濃茶の尼に見られてしまった…(洗濯物を医院の庭先でくすねていた濃茶の尼が、窓から室内で劇薬の瓶を盗んでいた美也子に気づく映像)
それで、尼に脅迫された!と轟も気づく。
(回想)何の薬を盗んでおったかも見ておったぞ、警察に知らせてやったら丑松と久弥の供養になるやろうな〜と、久弥の初七日の法事の勝手口で美也子を脅す濃茶の尼
その後、軍手をはめた手で、濃茶の尼の首を絞めた美也子は、三日月型の草刈り鎌を置く。
(回想明け)箱の横にしゃがみ込んだ美也子を前にして、濃茶の尼はあの夜、美也子さんのことで話があるから来い、来なければ美也子さんに祟りが取り憑くと言うので、言葉の裏が気になって…と慎太郎が言うので、それで僕より先に…と達也は理解する。
頷いた慎太郎は、死体を見て、逆に美也子さんが誰かに狙われているんじゃないかと思い、警察ににんが子誰ににんが子言えなかった…と慎太郎は打ち明ける。
金田一君、君は濃茶の尼の強請りの件はどうして分かったのかね?と等々力が聞くと、ああ、これは伊織にかかっていた掛け軸なんですが…と言いながら、金田一は着物の懐から件の掛け軸を取り出すと、裏に歌がありましたと言う。
歌?と言いながら、眼鏡をかけた等々力が掛け軸を受け取って、裏面を、何々?と読むと、この歌なんですと金田一は言い、「我見たり 花青き実や 薬師にに忍びて密かに盗みしを」なんだこりゃと轟は戸惑うが、美也子さんが毒を盗むのを見たと言うことですと金田一は解説する。
尼は不幸な人でしたから、世の中を恨んで物狂いを装って、嫌がらせばかりしてなんじゃないでしょうか?正気でないとこんな歌は作れませんよと金田一は推理する。
それでその次に医者の久野を犯人に仕立てようとしたんかね?あんた!と等々力が美也子に問うと、美也子はこくりと頷く。
(回想)洞窟の前で医者の久野と会った美也子は、明日にでも逮捕状が出るそうですよと吹き込む。
ここにしばらく身を隠していた方が良いと思います、あ、このお弁当を…と言いながら、美也子は久野に握り飯を手渡す。
(回想明け)箱の横にうずくまった美也子は新樽を見上げ、あなたにはすまないことをしましたと言うので、慎太郎は、美也子さんと呼びかけ、自分も美也子の前に跪くと、僕にはわからない、どうして大叔母さんや春代さんを!と問いかける。
小竹様と小梅様には相続人を決める力がありました…とと美也子は言う。
(回想)小竹の頭上から落ちる駕籠
(回想明け)でも、春代さんを謝るつもりはありませんでしたと美也子は訴える。
(回想)ただ、春代さんに現場を…(美也子の独白)背後から首を絞める美也子
(回想明け)ごめんなさい、慎太郎さんと土下座して詫びる美也子
美也子さん、僕は…と口籠る慎太郎
あなたはいつも穏やかで良いお友達でしたが、でも私の目は見てはくださいませんでしたと美也子は指摘する。
あなたも取りすがろうとしたこともありましたけど、いつも氷のような壁に囲まれて一歩も近寄ることはできませんでした…と美也子は打ち明ける。
悲しかった…、とても悲しかった…と美也子は吐露する。
でも、何も報われなくても良い、お尽くししたい、きっと私にもできることがあるって考えるようになりましたと美也子は続ける。
機会が訪れたのですね…、不幸とも言える機会が…、慎太郎さんが遺産を独占できるかもしれないという…と金田一が横から話しかける。
大切な人の手助けがしたかったんです、大切な時に…と美也子は言いながら立ち上がる。
大切な時?と金田一が問いかける。
頷いた美也子は、この山や土地を所有して石灰岩の工場を建てる…と美弥子が言うと、君がそんなことを…慎太郎は驚く。
涙を流す美也子は、夢を思いついた時、密かな喜びの炎が見えました、黒く赤い、錆のような炎の灯りに私は引き摺り込まれていきました…と美也子は打ち明ける。
終われば私も死ねば良い、そう覚悟すると、罪が見えなくなってしまったんですと美也子は言う。
でも恐ろしい夢はやっと…、やっと覚めましたと美也子は告白する。
僕は気づかなかった…、前ばかりを向いていたんです、自分のことだけを見ていた…と慎太郎は答える。
美也子さんをこうさせたのは僕です!と言いながら慎太郎が跪くと、いいえ、それは呪われた僕の血のせいだと思いますと辰弥が言いながら前に出てくる。
僕の存在そのものが美也子さんを動かしたんですと辰弥は訴える。
美也子さんお最後の標的が辰弥君だったことは間違いありませんと金田一が口をはさむ。
しかし多治見要蔵は辰弥君の本当の父ではないんですと金田一が言い出したので辰弥は、えっ!と驚く。
美也子も慎太郎も等々力も驚く。
僕はこの亀井陽一という人物が事件と関係があるんじゃないかと思い、岡山に行きましたと金田一は懐から手紙などを取り出し説明し出す。
そこでこの手紙を発見したんですと、「軍事郵便」と書かれた付箋付きの手紙を差し出す。
軽井沢八津坂小学校に勤めていた教師で鶴子さんとは内密に交際をしていましたと金田一は言う。
大正11年1月、陽一さんは兵隊に取られた、この鶴子さんの手紙はその2ヶ月後に書かれたものなんですと金田一は説明し、ちょっと重大な箇所を読みますといい、便箋を問い出すと金田一は読み上げる。
「お別れにあなたは赤ちゃんを授けてくださいました、一緒に凱旋をお待ちします、今年10月に生まれますのよ…」
鶴子さんが拉致されたのはこの手紙を投函した直後のことだったんでしょうと金田一は言う。
鶴子さんは主産後、要蔵さんに責められて真相を話した、それで要蔵さんは逆上し、鶴子さんは命懸けで辰弥君を守って逃げた…と金田一は推測する。
父は?亀井という人は?と辰弥が聞くと、岡山の役所で調べたんですが、君が生まれる少し前に戦病死されていましたと金田一は打ち明ける。
辰弥はそうでしたか…と納得する。
お母さんがこの写真を屏風の中に隠したのは、命よりも大切だったからと思いますよと金田一は言い、その手紙を辰弥に手渡す。
辰弥は手紙を胸に抱きしめて感激する。
その時、美弥子が一声うめいて、箱の前で昏倒する。
それに気づいた金田一は、しまった!と叫ぶ。
慎太郎も驚いて京都に抱きつくが、まだ毒薬を持っていたのか!と等々力は呆れる。
美也子さん!と抱き起こした慎太郎だったが、美也子はすでに事切れていた。
八つ墓に花を添える典子
落武者の墓が八つ、でも亡くなったのも八人、美也子さんは八人目に自分を選んだことになるのやわ…と呟くと、辰弥さんと私、もう従兄弟同士ではないのねと、同行した辰弥を見上げ、典子は微笑む。
笑顔で頷いた辰弥は、神戸に遊びにおいでよと誘う。
立ち上がった典子は、私たち大阪に行くのよと告げる。
え!慎太郎さんも?と辰弥が驚くと、生き残ったから言うて、多治見の財産なんかもらいませんよ、兄はあれでとても気位が高いのよと典子は言う。
へえ〜と驚いた辰弥に、金田一さん、どこに帰るんやろう?風まかせという手張ったから…と典子は案じる。
辰弥は、忘れられない人だ…と笑顔で呟く。
多治見家の二階部屋で荷造りをしていた慎太郎は、美也子からもらったマフラーを手に取ると、それを折り畳んでバッグに入れる。
「連続殺人事件捜査本部」の張り紙を剥がしていた千石は、良う調べてみますと、森美也子は出雲出身なんですな、出雲といえば尼子、あの人は尼子の落武者の恨みを晴らした買ったんっじゃないでしょうかと呟き、まだ残っていた等々力に、お前、そりゃ思い過ごしだと注意される。
おい、板東、水はまだかと奥に声をかけ、生き残りの相続人がみんな相続を放棄するそうで、多治見家の財産は村の共有になるんでしょうか?と言いながら、コップの水を運んできた板東刑事に、粉薬を飲もうとした等々力は、さあどもを、金田一君はまだいるのか?と聞く。
今日のバスで帰るらしいですよ、見送りに行くんですか?と坂東が聞くと、当たり前だ!と口に入れた粉薬を吹き出しながら等々力は答える。
その頃、郵便局では、神戸の諏訪弁護士さんから、郵便為替が唐湊いておりますけんど、現金にかえときまひょうか?と徳之助が教えると、お願いしますと金田一は頼み、郵便局にいると便利ですねと微笑む。
2枚になっとりますな、本名ら金田一さん、すんまへんけどね、ここに名前書いてくれますかと徳之助は頼むと紙片を二枚渡す。
礼金と必要経費だと思います、事件が終わった後連絡しましたらすぐ送ってくださったんですね、律儀な方だと言いながら、金田一は署名する。
あれ?この必要経費、少し多いな…、返さないと…と悩み出した金田一を見た徳之助は、几帳面な人じゃな〜、金田一さんのおかげで大事件が片付いたんじゃ、取っておきなさいと口を出すが、いや、こういうのは困りますと金田一は振り向いて真顔で答える。
あ、バスの時間が近いようですと柱時計を見た金田一は気付き、書類を徳之助に渡すと、トランクを取ってきますと言い残し部屋に戻る。
そこに足を抱えたひでが姿を現し、金田一さんは?と聞くので、何だこれ?と徳之助は不思議がる。
お味噌、金田一さんにあげるんよとひでが言うので、アホか、こんなもんもろうたら金田一さん迷惑じゃと徳之助は叱るが、何言うてんのや、うちで毎日出す味噌汁褒めてくれはったんよとひでは言い返す。
わしゃな、金田一さんに相応しいお土産をちゃんと用意してあるんじゃと言うので、何を?とひでが聞くと、あの人な、ちびた下駄履いとるやろう?とニヤリと笑いながら玄関先に脱がれた金田一の下駄を見せ、新しい下駄やと自慢げに言い、取ってくるわと言い残し奥へと向かう。
そんなん…、これ、どうしよう?と、ひでは味噌樽を抱えたままその後を追ってゆく。
無人になった郵便局に、以前来た少年が来て、つかあさいと声をかける。
返事がないので、もう一度、つか浅い!と呼びかけると、トランクを持った金田一が出てきて、お客さんか…と呟く。
ハガキですか?と聞くと8円切手二枚と言うので、切手ねと確認した金田一は、勝手知った郵便局の机の上を探し、あった!と言うと、はい2枚と言いながら少年に手渡す。
朝焼けの霧のお腹に佇む金田一の姿にキャストロール(主題歌:小室等「青空に問いかけて」が流れる)
本編シーンの写真の上にキャストロール
スタッフロール
監督名の後に「完」