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脳性麻痺ライター・著者 東谷瞳  |障害と生きる日々

20.一人のための工夫が、みんなを変える

2026.09.22 00:06

その工夫は、たった一人のために始まった。

聞こえにくい子がいるから、先生がゆっくり話すようになった。

車椅子の人が来るから、通りにくかった場所が整えられた。

少し時間がかかる人がいるから、待つことが当たり前になった。

きっかけは、とても小さい。

特別なことでも、大きな変化でもない。

でも、その変化は、気づかないうちに広がっていく。

最初は「その人のため」だったものが、

いつの間にか「みんなのため」になっている。

Flowerで何度も感じてきたのは、この変化の連なりだった。

誰か一人が声を上げる。

誰か一人がそこにいる。

それだけで、周りの見え方が変わり、関わり方が変わっていく。

環境が少しずつ変わり、空気が少しずつ変わっていく。

それは決して、一気に起こるものではない。

時間がかかるし、うまくいかないこともある。

それでも、確実に積み重なっていく。

これまでのコラムの中で、いろいろな話をしてきた。

外に出ることの難しさ。

手助けの迷い。

「違い」に対する戸惑い。

そして、人と人との関係のあり方。

そのどれもが、簡単に答えの出るものではなかった。

でも、ひとつだけ、確かに言えることがある。

それは、「関わることでしか、何も始まらない」ということ。

知らなければ、変わらない。

出会わなければ、気づかない。

関わらなければ、何も動かない。

そして、その関わりは、特別なものじゃなくていい。

ほんの少し声をかけること。

同じ時間を過ごすこと。

相手のことを考えてみること。

その小さな一つひとつが、少しずつ世界を変えていく。

あるメンバーが言っていた。

「違いがあってよかった」

その言葉には、これまでのすべてが詰まっているように感じた。

もし、みんなが同じだったら、気づけなかったこと。

出会えなかった人。

生まれなかった関係。

違いがあるからこそ、人は立ち止まり、考え、関わろうとする。

その中で、新しいつながりが生まれていく。

一人のための工夫は、やがて誰かのためになり、

気づけば、みんなの当たり前になっていく。

それは、とても静かで、でも確かな変化だ。

大きなことをしなくてもいい。

完璧でなくてもいい。

まずは、一人のために、できることを考えてみる。

その一歩が、誰かの世界を変え、

そして自分の世界も、少しずつ変えていくのかもしれない。

違いは、壁ではない。

それは、出会いを引き寄せる“種”になる。

そう信じられる社会を、

少しずつでも、つくっていけたらと思う。