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つねに多くのことを学びつつ年をとる―勝又泰洋の学問日記―

ティム・ホイットマーシュ先生の講演会

2019.03.22 09:10

3月29日(金)が待ち遠しい。というのも、この日、東京大学で、ケンブリッジ大学のティム・ホイットマーシュ(Tim Whitmarsh)教授による講演会が開かれるからだ(一番下のリンクは、運営サイドによるその案内である)。演題は'The Bastards of Cynosarges and the Invention of Virtue'(「キュノサルゲスの庶子たちと徳の発明」)で、紀元前5世紀の哲学者アンティステネース(いわゆる「犬儒(キュニコス)派」の祖といわれる人物)の思想と、「キュノサルゲス」というアテーナイの複合施設(体育場などがある)の関係性について話がなされるようだ(僕は事前に受け取った講演原稿をすでに読ませてもらったが、事柄の性質上、詳細は明らかにできない)。

 海外の研究者による講演は、日本のあちこちで行われてきており、僕もこれまでいくつもそういったものに参加してきたが、今回の講演会は僕にとって特別なものといえる。というのも、講演者のティム・ホイットマーシュ教授は、僕が学生時代にオックスフォード大学で研究滞在をしていたときの受入研究者で、滞在期間中、さまざまな面で面倒をみてくださった方だからだ。このときのことについては、日本西洋古典学会のHPに小文を載せているので、興味のある方はお読みいただけると幸いである(URLは以下のとおり)。

http://www.clsoc.jp/agora/column/2012/120910.html

 ホイットマーシュ先生(と以下では呼ばせてもらう)は、もともとはローマ帝政期のギリシア文学の専門家である―ルーキアーノスやピロストラトスなどの「第二次ソフィスト」の著作、あるいは恋愛小説にかんするご業績が目立つ―が、最近では、研究対象を拡大させ、古代ギリシア世界全般の思想・宗教について数多くの仕事をされている(たとえば、数年前に先生が出されたBattling the Gods: Atheism in the Ancient World (New York, 2015)は、古代世界における「無神論」的思想の系譜をたどる刺激的な本である)。今回のご講演も、そういった研究の一貫とみて差し支えないだろう。

 僕がオックスフォードにいた2012年のあるとき、ホイットマーシュ先生は、「一度でいいから日本にぜひ行ってみたい」とおっしゃっていた。日本にいらっしゃるのはおそらく今回が初めてなので、講演会のお仕事に加えて、きっと観光も楽しまれるのだろう。最近の学問的関心、イギリスの西洋古典学事情、日本の印象、こういったことについて先生とたくさんお話をさせてもらいたいと思っている。もう一度、あのときの学生の気分を味わうことができると思うと、楽しみで仕方がない。