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司法書士田中康雅事務所|新百合ヶ丘・麻生区の相続相談

葬儀費用を預金から払ったときの遺産分割協議書|相続開始時の残高で書く理由と記載例

2026.09.30 04:27

葬儀費用200万円を預金から払ったあとの遺産分割協議書は、相続開始時の残高2,000万円を前提に書き、葬儀費用に充てた分を誰が取得し、誰が負担したかまで残します。解約時の1,800万円だけを書くと、相続税の申告と数字がつながりません。 

預金から葬儀費用を払ったあとに遺産分割協議書を作るとき、預金をどう書けばよいかで迷うことがあります。相続税は相続開始時の残高で計算し、金融機関は解約時の残高で払い戻すので、同じ預金に2つの数字が出てくるからです。 この記事では、相続税の申告が必要な事例をひとつ使って、預金と現金の書き方を記載例で見ていきます。預金を分けずに、代償金で合わせる書き方もあわせて紹介します。 

この記事の内容
・この記事で使う事例
・同じ預金に、2つの時点の数字がある
・家族で決めたことを、協議書の言葉に置き換える
・記載例 預金を分ける書き方
・相続税の申告では、こう読める
・解約時の残高だけを書くと、どうなるか
・2つの書き方の比較
・ここから先は、書き方ではなく判断の話です
・あわせて読む
・まとめ 
・他の考え方 代償金で合わせる書き方

この記事で使う事例 

この先に出てくる金額は、すべてこの事例の数字です。 

 預金2,000万円(解約時1,800万円)と現金500万円は、相続後の預金の分け方の記事と同じ数字です。ここでは不動産2,500万円を加え、動いた200万円を、相続人が自分のために使ったお金ではなく、葬儀費用にしています。 預金の利息は少額なので、ここでは省きます。葬儀費用200万円は、すべて相続税で差し引ける費用(香典返しや法要の費用などを除いたもの)だったものとします。不動産に使える特例(小規模宅地等の特例など)も、ここでは考えません。

同じ預金に、2つの時点の数字がある 

預金には、見る場面によって2つの数字があります。相続税は相続開始時の残高(2,000万円)で計算し、金融機関は解約時に残っている金額(1,800万円)を払い戻します。 下の図は、この事例の預金の動きと、相続税の申告・金融機関の手続きのそれぞれで見る数字を並べたものです。

相続税は相続開始時の残高で計算するので、解約時の残高との差(ここでは葬儀費用の200万円)を、誰が取得し、誰が負担したかが、税務上は大事になります。 

この2つの数字を、1枚の遺産分割協議書の中でつなげておくことが、この記事のテーマです。 相続開始後に引き出しても、相続税の評価額が動かないこと(相続開始の時点で決まること)は、次の記事で整理しています。

相続開始後に預金を引き出したらどうなる?(税務)|死亡時残高・債務控除・実務上の注意点 

家族で決めたことを、協議書の言葉に置き換える 

家族の話し合いでは、「葬儀費用は預金から払って、残りを半分ずつ」という形で決まることがよくあります。この事例で決めたことも、それだけです。 遺産分割協議書と相続税の申告では、これを次の3つに言い換えて書きます。

相続開始後、相続人が預金を引き出して使ってしまった場合 ─ 遺産分割・精算での実務対応

記載例 預金を分ける書き方 

 この事例の遺産分割協議書のうち、預金・葬儀費用・現金の部分は、たとえば次のように書きます。

実際の協議書では、母・子は氏名で書き、不動産の条項(第1条)や、あとから見つかった財産の扱いなども入れます。この記載例で押さえたいのは、次の4つです。 


相続税の申告では、こう読める 

この協議書をもとにすると、相続税の申告では、相続開始時の数字で次のように整理できます。

母は配偶者なので、配偶者の税額軽減を使うと、この事例では母が納める相続税はありません。子には、取得した割合に応じた相続税がかかります。税額軽減を受けるには申告が必要で、申告書には遺産分割協議書の写し(相続人全員の印鑑証明書つき)を付けます。協議書と申告が同じ前提で読めることが、ここでも大切になります。 

解約時の残高だけを書くと、どうなるか

よく見かける書き方でも、相続税の申告がある場合は、そのままでは困ることがあります。この事例で、次のように書いた場合を考えます。 

どちらも、家族の間では分かっていることなので、書かなくても困らないように見えます。けれども、申告書には協議書の写しを付けますし、あとで税務署から尋ねられたときに説明の手がかりになるのも協議書です。家族の間で分かっていることほど、書いておきます。

他の考え方 代償金で合わせる書き方

預金を分けずに、代償金で合わせる書き方もあります。預金と現金を母がまとめて取得し、子の取り分1,150万円は、母が子に代償金として支払う形です。 

預金は母がまとめて取得するので、相続開始時の2,000万円も、葬儀費用に充てた200万円も、解約時の1,800万円も、すべて母の取得の中に入ります。預金を時点ごとに書き分けなくてよいのが、この書き方の利点です。解約の手続きも、母が進めやすくなります。

 代償分割の考え方は、次の記事で整理しています。

不動産がある相続の遺産分割|代償分割と換価分割の違い(総論) 


2つの書き方の比較 

下の図は、預金を分ける書き方と、代償金で合わせる書き方を、協議書に書くことと申告で見る取得額で並べたものです。

どちらの書き方でも、申告では母3,650万円・子1,150万円で同じです。解約の手続きを誰が担うか、母が代償金を払えるか、家族がどちらの形を分かりやすいと感じるかで選びます。 

ここから先は、書き方ではなく判断の話です 

協議書の書き方は、以上のとおりです。相続開始時の残高を前提に、葬儀費用に充てた分を誰が取得し、誰が負担したかが読めれば、申告と数字はつながります。 ただ、実際のご相談で時間がかかるのは、書き方ではありません。その手前の、次のようなところです。 

葬儀費用を喪主の母が負担するのか、2人で分けるのか。香典をどう扱うのか 不動産と、預金・現金の半分を母が取得する分け方でよいか。2次相続まで見て、子に多く寄せるのか 預金を分けるか、代償金でまとめるか。解約の手続きを誰が担うのか

ここは書き方の話ではなく、判断の話です。当事務所では、ご家族が納得できる分け方を先に整理し、そのうえで協議書の形を組み立てます。相続税の申告がある場合は、申告を担当する税理士と連携して、協議書と申告の数字を合わせます。全体の流れの中でいまどこを考えているかは相続の道筋地図で、似た状況でほかのご家族がどう決めたかは相続の判断例で確かめられます。 

相続の道筋地図  

相続の判断例  


あわせて読む

相続後の預金の分け方|引出済み・解約後の精算方法を具体例で解説 

葬儀費用は誰が払う? ― 相続であとから揉めないために知っておきたいこと ― 

相続開始前後・当日の預金の整理|相続で迷いやすいお金の動きを時間の流れで整理 


まとめ

協議書の書き方や、葬儀費用の扱いが決まらない段階でも、ご相談いただけます。相続税の申告がある場合は、税理士と連携して整理します。初回のご相談は無料です。