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渋谷昌孝(masataka shibuya)

彼シリーズ「掟の橋」

2019.03.26 11:21

目的地に向かうために見知らぬ橋を渡らなければならなかった。橋を渡ろうとすると「ピッピッ」とセンサー音が俄かに鳴りだした。そして空気の圧力のようなものによって鷲掴みにされると、彼はもといた地点まで引き戻された。欄干の文字には「掟の橋」とある。欄干はAIスピーカーになっている。立ちすくむ彼を尻目に犬が一匹通り越してゆく。

「犬が渡っているではないか?」

「彼は通行手形をお持ちです」

「犬なんていぬ方がマシだ」

今度は豚が頓狂な声をあげながら通り越していった。

「豚が追い越した」

「彼女は特別免許をお持ちです」

「とんと解しかねますな。とんでもない話だ」

「あなたは免許証をお持ちですか?」

彼はクルマのない時代に免許証とは「なんてこった」と半信半疑に思いつつもパスポートを取りだした。

「だめです」

「何がだめなのか?」

「パスポートではだめです」

「なぜ?」

「あなたが人間である証明書が必要です」

「みれば分かる。人間に決まっているじゃないか!」

「あなたと同じようにいう者は、あるいは物体も含めて沢山いらっしゃる」

「どうしたらここを通してくれるのだ」

「人間証明書を提示して下さい」

「俺がそれだ」

「無効です。通行を許可しません」

「なんてこった。人間が人間として通用しないなんて!」……