フラメンコのそば

愛される者よりも

愛する者の方が

愛の近くにいる。

誰が言ったか忘れたが、この言葉が好きだ。

フラメンコを始めて29年間はスペインに行くことが出来なかった。金も時間も健康も無かったので、スペインに行って研鑽を積む友人達を指をくわえて見送っていた。

帰ってくるとみんな、上手くなって来て、私よりも偉くなっているような気がした。

念願叶って、今、スペインにいる。

先日、同じクラスのスペイン人に「羨ましいわ〜。フラメンコのそばにいられて。日本にはフラメンコはもともとないから。」って言ったら「あら、貴女は私よりも練習するから、私よりもフラメンコのそばにいるわよ。」と言われた。

フラメンコをやっている以上、スペインに行かないと本当の核の部分は手に入らないと思っていた。

でも、虚しくフラメンコに憧れ続けたあの心は、おそらく何よりもフラメンコの近くにいた。

これで良かったんだと思う。

今、日本にいて、何一つうまく行かず、どんどん上手くなって行く友人達に焦りを感じ、スペインに行くライバルを情けない心で見送っている人は、焦ることなんて全くない。

フラメンコを求めてやまない心が一つあれば。もうそこに、フラメンコがある。