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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

オルレアンの少女35-ルーアン牢獄の虜囚

2019.03.29 03:02

ジャンヌの牢獄での状態については何人もの情報がある。昼は手は縛られ、足には足かせと鎖、寝るときはその上にベッドに胴を縛る鎖をいくつかかけられていたとのことだ。コーションは、それでも逃げられることを怖れ、立ったままの鉄製鳥かごをつくらせていたそうだが幸い使用されなかった、いやよくやるよ。

牢は塔の2階にあり、外に2人内に3人の見張りがつけられ、ジャンヌに罵詈雑言を投げつけた。法廷への行き帰りはもっと多くのイングランド兵が同じことをした。しかしここでもジャンヌの処女検査が行われ、これに合格したことを感動したベッドフォード候夫人が「手荒なことをしないよう」言明したので、乱暴で純潔を犯されることはなかった。

この裁判はよくわからないもので、異端裁判なら教会の牢でもっといい扱いが期待できた。ところがジャンヌの待遇は戦時捕虜でも最悪の待遇。1万リーブルの価値のある将校なら貴族待遇が約束されるはずだろう。イングランドよりもコーションとパリ大学が焦っていたといえる、何せ自分達はイングランド王を正統だとしてしまったのに、どこかの田舎娘にそれをひっくり返されたのだから、それを覆すしかない、権威がかかっていた。

予審調査が始まると、これが想像以上に簡単ではないことがわかった。ドンレミ村に行った調査員から、全く不品行が見つけられなかったのである。彼らは、尾鰭のついた噂や、イングランド兵の流す悪口を真に受けて審理を引き受けてしまった。告訴するべき条項が見つからないのであった。これほどジャンヌ伝説の正当さの確かな証拠はない。