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医王庵

2019.03.29 09:30

旧東予市に「医王庵(いおうあん)」という県外企業の為の保養所があります。普段は公開されていませんが、県外の建築家協会の見学に同行させてもらいました。


設計は石井修/美建設計事務所。関西を中心に環境共生型の建築を数多く手がけた建築家であり、筆者の好きな建築家の1人でもあります。

周辺環境や敷地内の多くの植栽などで建築が覆い隠れるので「建築に外観は必要ない」という言葉を残すほどです。

この医王庵の外観というか前面道路から見ると擁壁が立ち上がり全体を確認することはできません。

玄関のアプローチには石積み(張り)が施されています。彫刻家イサムノグチのパートナーとも知られる石工の和泉正敏氏が石積みをしたことからも庵治石が使用されていると思われます。この石積みも石井修氏設計の特徴のひとつでもあります。石積みに緑が映えます。

(玄関ポーチはガラス屋根)

(異素材の納まり)


医王庵は1982年に竣工していますが、その後一部増築された部分は続・医王庵と名付けられ1986年に竣工しています。元々の医王庵と続・医王庵では少しテイストが違っているのでその部分もご紹介できればと思います。

まずは前半部分の医王庵です。入口から靴を脱いで上がるとコンクリート打ち放しの壁にスリットがあいています。

覗き込むと中庭があり滝のような水路があります。その後には円形の水車のような装飾がシンボルになっています。紫色に見えるコンクリートの円柱状の柱はカシュー塗りという漆塗りが施されています。昔ながらの豪華な装飾の1つです。

この中庭をぐるっと囲むように面する宿泊室が約3部屋。水の音が常に聞こえます。畳に障子、イサムノグチの照明AKARIと和の装いです。

中庭に面する廊下。太陽の光が緑を反射させ室内の石積みが緑色を帯びていました。綺麗だな~

(異素材の納まり)


この廊下から階段を上がると和組みの化粧梁が表しとなった会議室(元食堂)。梁を重ねる四国の伝統的な民家の形式をとっているようです。開口の位置も特徴的。

階段を上がった高さにあるこの会議室から外に出ることができます。

水車と水路の装飾を見下ろしています。そうです。写真を見ればおわかりになると思いますが、実は宿泊室の屋根は緑化され上を歩くことができるのです。ここから見ると中庭や宿泊室が地中に埋まっているような形になっています。前面道路から見る擁壁は建物の外壁でもありこの屋上緑化のレベル(床高さ)を持ち上げる為のものでした。(この後も屋上緑化された庭を歩いたり、階段を上ったり下りたりするので自分がどのレベル(床の高さ)にいるのかよくわからなくなりました)

(水車の内側は会議室に面する給湯室)

(設置されているエアコンの全身クーラーも年代物)

(異素材の納まり)

(工事中の写真や図面、設計者の紹介なども会議室には置かれていました)


石張りの脱室と木製のお風呂。気持ち良さそう・・・。

建物内部を奥に進むと長い洞窟のような廊下を通ります。天井についたくぼみにはハイサイドライト(頂側窓)と照明器具があり、光りがくぼみから落ちてくる演出がされています。この廊下から雰囲気が変わります。前半部分の医王庵は落ち着いた和の雰囲気でしたが、ここから先の続・医王庵は豪華なバリのリゾートがモチーフにされています。

(丸太を使用した階段)

(階段を登ったのに埋もれた渡り廊下。木々の木漏れ日も気持ち良い。)


建物が見えてきました。

二階のこけら葺き屋根の建物の屋根が宿泊室、下部は水庭付の食堂です。

こけら葺きの屋根の中はこんな感じ。屋根面を支える垂木は丸太が使用されています。小屋組みが先ほどの会議室とは違います。


蕪束を利用し登り梁が一点に集まります。そうすることで室内空間(部屋内)に水平垂直の構造躯体をなくすことのできる組み方になっています。

下の食堂。天井が高く豪華絢爛な様子です。天井の板の張り方も面白い。


水庭側


水庭のガラスの渡り廊下とステージ?

(異素材の納まり)


部屋やお風呂など他にもありましたが、一部抜粋してご紹介させていただきました。愛媛の片田舎にこのような豪華でありながら自然と調和した建築があることを知れた良き見学となりました。(常駐?しているスタッフの方は庭のメンテナンスが大変だと言っていましたが・・・)普段、保養所として利用できる会社の方がうらやましい限りです。


追記:設計した石井修氏は環境のいいところの保養所の設計と聞き楽しみにしていたが、海が見えないことを残念がったようです。しかし山並みを気に入り建築の屋根と山並みを重ねるように設計したようです。



医王庵(増改築:続・医王庵)