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ダンス評.com

スターダンサーズ・バレエ団「Dance Speaks:『ウェスタン・シンフォニー』『緑のテーブル』」東京芸術劇場プレイハウス

2019.03.30 13:36

「ダンスは何を語るのか」と題した、2019都民芸術フェスティバル参加公演。

昨年(2018年)の9月に岡登志子 振付「緑のテーブル2017」を見ていたため、その創作の基となったクルト・ヨース振付「緑のテーブル」(1932年初演)を見られるというので、ぜひこの機会にと足を運んだ。

同時上演の「ウェスタン・シンフォニー」は著名なジョージ・バランシン振付だが、聞いたことのない作品だった。20世紀のアメリカとドイツのバレエが見られる貴重な公演だ。


■第1部「ウェスタン・シンフォニー」

アメリカのフォークソングに乗って、西部劇のようにカウボーイたちと女性たちが軽妙なやりとりをする。馬に乗っているような動きがあり、男性が女性4人を馬に見立てているように見える場面もあり、少し衝撃的だった。動きとしては、手綱を引くようなしぐさをした男性に応じて女性たちが軽く飛び跳ねて駆け出しただけなのだが。

音楽は陽気で、女性ダンサーたちの衣装はカラフルな花のような飾りのチュチュに黒タイツ。

ロシア出身のバランシンが、アメリカの観客に楽しんでもらえるバレエをと振り付けた作品なのだろうか、と勝手に想像した。バレエの基本的なテクニックを分かりやすく見せているようだ。

バランシンらしく、図形のようにダンサーたちが舞台上に並び、動く。馬(またはカモシカ?)のように「走る」ような動きもあり、面白い。

最後のシーンで、ダンサーたちが総出で高速ダンスを繰り広げるところは圧巻で、気分が盛り上がる。

笑えるバレエはそう多くはないが、「ウェスタン・シンフォニー」は間違いなく笑顔になってしまうバレエだ。ダンサーたちも楽しみながら踊っているように見える。


■第2部「緑のテーブル」

総監督の小山久美氏によるプレトークで、冒頭と最後で男たちがマスク(仮面)を着けているのは、クルト・ヨースのバレエ団には男性ダンサーが8人しかいなかったため、女性ダンサーも男性を演じたからだと言っていた。中世美術の「死の舞踏」に着想を得た作品で、ナチス台頭の時代に創作された「反戦バレエ」と言われる。また、ピナ・バウシュはクルト・ヨースに学んでいる。

ヨースのダンスは「表現主義」と言われるらしいが、黒い礼服の男たちが緑のテーブルに肘や手をついて静止して見せる場面は、大仰で滑稽とも見えるマスクと相まって、まさにドイツ表現主義の絵画のようだ。

不毛な会議を思わせる一連の動きが何度か繰り返される。ユーモラスでグロテスク。だが、その後、1列に並んだ男たちは一斉に上に向けて銃を撃つ。「パン!」という銃声に驚く。

次に登場するのは、戦地へ赴く兵士たちと、それを泣く泣く見送る女たち。そして、骸骨のような模様のついた緑色に輝くスパイダーマンのような衣装を着けた「死」(死神)だ。

「死」が兵士や女と踊る。踊った者たちは息絶える。

中世美術のように、戦争を描く映画のように、登場人物や展開は定型的かもしれない。しかし、だからこそ、普遍的な悲しみ、「理不尽」に訪れる死の残虐性が浮かび上がる。でも、いかにも残酷な派手な身振りではなく、あくまで静かに踊りながら死んでいく。

最後に再び緑のテーブルと礼服の男たちが登場する。先ほどの戦争と死の情景は、彼らが生み出したのだろうか?彼らは知っているのだろうか?それとも知らないのだろうか?知らない振りをしているのだろうか?

2人のピアニストによるピアノの生演奏は、そんなに複雑ではない旋律のようだが、時に繊細に時に力強くダンスを盛り立てる。上演後も、ピアノの音楽が頭の中で鳴り響いていた。


こういうレパートリーを、日本のバレエ団がどんどん上演してくれるといいと思う。定番もいいが、いろいろな作品を見たい。スターダンサーズ・バレエ団の公演はおそらく初めて見たが、この2作品をレパートリーとしている日本で唯一のバレエ団だそうだ。


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「ウェスタン・シンフォニー」

19世紀のアメリカ西部開拓時代を舞台とした、4つの楽章からなる作品。バレエの伝統的技法を駆使しているが、アメリカのフォークソングを用いてフォークダンスの要素を巧みに表現している。軽快なリズムと躍動感にあふれ、誰もが楽しめる作品です。

振付:ジョージ・バランシン

音楽:ハーシー・ケイ

振付指導:ベン・ヒューズ

※特別録音による音源を使用

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「緑のテーブル」

クルト・ヨースがナチス・ドイツのゲシュタポの迫害から逃れながら創作した作品。緑のテーブルを囲んで、マスクを着けた黒い礼服の男たちが会議をしているシーンから始まり、銃声が響くと、そこから戦争を背景にした兵士や女性たちがたどる様々なドラマが繰り広げられる。

振付:クルト・ヨース

作曲:フリッツ.A.コーヘン

美術:ハイン・ヘックロス

マスク&照明:ハーマン・マーカード

舞台指導:ジャネット・ヴォンデルサール、クラウディオ・シェリーノ

照明再構成:ベリー・クラーセン

ピアノ:小池ちとせ 山内佑太

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2019年3月30日(土) 開演 14:00/開場 13:15/終演予定 15:40

2019年3月31日(日) 開演 14:00/開場 13:15/終演予定 15:40

(13:40から総監督 小山久美によるプレトーク)

上演時間:1時間40分(休憩20分含む)

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「Western Symphony」のかなり古そうな動画があったので、貼っておく。