Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

オルレアンの少女39-追い詰められたコーション

2019.04.02 09:31

もはやこれは裁判ではない。審問者の質問は「私は人を殺したことはない」という回答を引き出し、列聖の証拠となる。第5回審問では7年以内にイングランドはオルレアン以上のものを失うと予言し、後に的中させる。もはやどうしようもない審問者達は「教会に従わないのか」と言いだした。

しかしジャンヌは「教皇様の前に出ればすべてお話しします」と答えた。実は教皇特使は、この裁判に不満を持ち、教皇に報告するとしてヴァチカンに帰ってしまったのだ。判事の何人かも、ジャンヌの啓示を悪く解釈してはいけないと言いだしてしまった。

「あの女は実に抜け目がなかった。女特有のずるさを備えていた」と復権裁判で判事は語った。幸か不幸か復権裁判までコーションは生きていなかった。イングランドは「処刑できなければこちらに引き渡せ」と言い、パリ大学は不信をもって、裁判はこちらが引き継ぐと言ってきた。

追い詰められていたのは実は裁判をしたコーションだった。もう何でもいい。自分のメンツも投げ打って、ともかく判決を下すしかない。

下は現代美術の奇才ベルナール・ビュッフェの描く「ジャンヌ裁判」